8.災い転じて
Tips:五十嵐伊織のプロフィール
・174cm65kg
・職業は無し。強盗やスリ、賭博で生計を立てている。なお、能力を使ってズルしているため無敗。
・能力:『引き寄せの法則』
因果律を操作し、所有者にとって都合の良い未来を作る能力。世界に干渉する能力であり負荷が大きいため出力は安定しないが、条件さえ整えば隕石を落とすことも出来る。なお、容量が大きいため、無堂瑞希が模倣してもストックは出来ない。
・好物はサンドイッチ。理由は片手で食べられるから。
・神器:『破滅のメダル』
能力『クレイジー・スロット』を持ち、発動するために必要となるコイン。右手に持って掌印を結ぶことにより結界を生成し、結界内でゲームに勝った者にバフを、負けた者にデバフを与えることが出来る。なお、『クレイジー・スロット』を持つ人、及び物品ならこのコインと同じ効果を得られる。コインなのにメダルと呼ばれる理由は不明。
「おいおいおいおい...」
五十嵐伊織の視線の先では、黒のビショップが片方倒れるのと同時に、白のビショップが盤内に入っていた。
「どうなってるんスか!炎藤は大丈夫なんじゃないんスか!?無堂瑞希は眠らせたって言いましたよね!?」
もう片方の黒のビショップが倒れる。
「...目算を誤ったみたいだね。」
黒のルークが倒れる。
「『誤った』じゃ済まないでしょう!!有巣仁理も説得しないとなのに......!」
黒のナイトが2つ同時に倒れた。残るは黒のクイーンとキング、そして白のビショップ、クイーン、キングである。
「...行ってきます。」
「...病院は病院でしたが......」
外壁は蔦で覆われている。正しく廃墟といった見た目は、その建物が既に正規の手段で運営されていないことを表している。
大きく息を吐き、無堂瑞希は手に持っていた生首を投げ捨てる。
「かーわいそー。」
声のした方を見ると、門にもたれ掛かる仮面の男が居る。無堂の『解析』は、彼がAランクの能力者であることを告げていた。
「無堂瑞希。Sランクの能力者で能力は『模倣』。そして、『第二層』に至った能力者。」
仮面の男は体勢を変えない。無堂を警戒していないのか、はたまたあえて警戒していないフリをしているのか。
「五十嵐伊織。Aランクの能力者で能力は...『引き寄せの法則』...?」
五十嵐が両腕を広げる。
「フフ...カッコイイっしょ...」
対する無堂は、拳を握り締める。
「良いですねー。中学二年生みたいで。」
仮面越しにも判るほど五十嵐は不機嫌になる。
「良いと思ったんだけどなぁ。」
その時、遥か頭上を一筋の光が裂く。
「えっ...?」
段々大きくなる光。無堂はそれが隕石であることに気付いた。
「『引き寄せの法則』!!効果は「因果律の操作」!!純然たる“欲”をあらゆる形で実現する最強の能力だ!!お前はあの隕石に押し潰されて、院内のお仲間諸共死ぬんだよ!!」
調子付いて能力効果の説明をする五十嵐。一方、無堂の口角が上がる。
「今...効果を説明しましたね...?」
「...は?」
その時、
「『天照』!!!」
巨大な白い炎の矢が空を穿ち、轟音と共に隕石が破裂する。破片は病院を避け、周囲に四散した。
「何が...!?」
無堂の横に着地したのは、『貧乳はステータス』のTシャツを着た天道穂香。
「天道穂香!!やってくれたな!!」
初めて見る、覚えのない仮面に天道は戸惑う。天道は何故彼に名前を知られているのかが分かっていない。
「“勝って兜の緒を締めよ”...貴方の敗因は能力効果を説明したことですよ!」
言わずもがな、『引き寄せの法則』は常時発動型の能力である。しかし、同じく常時発動型の『恵体』と大きく違う点は、『引き寄せの法則』が世界そのものに作用する能力であるという点である。
『引き寄せの法則』の効果は、「因果律の操作」ひいては「自身にとって都合の良い未来の生成」である。五十嵐伊織の誤算は、この効果が「無堂瑞希による能力の模倣」を阻止出来ると踏んだ点にある。
無堂瑞希の能力『模倣』による能力複製の条件は、「能力効果を知ること」と「能力発動を自らの五感いずれかで確認すること」である。また、『引き寄せの法則』の効果対象は「世界」であり「能力者自身」ではない。この2点から、五十嵐伊織による能力効果の説明は阻止されず、無堂瑞希による模倣を許してしまった。
「まだ負けてねぇよ!!」
その時、五十嵐はポケットからコインを取り出し、掌印を組む。
(弁財天印!?)
刹那、エネルギーが高まる。
「異能解放!!『クレイジー・スロット』!!」
周囲が明るくなり、ジャズ調の音楽が流れ始める。
「結界...!?」
戸惑いつつも反射で能力発動の構えをとる天道。
「待って!」
無堂が天道を制止したその時、突如脳内に情報が流れ始める。
「...!?」
『クレイジー・スロット』ルール説明
①生成された結界を物理的な衝撃により破壊することは不可能。
②能力者:五十嵐伊織はゲームを選び、それぞれのルールに則ってプレイする。
③ゲームの勝敗により、能力者:五十嵐伊織には各種効果が与えられる。
(能力情報の開示...!)
即座に無堂は『クレイジー・スロット』を模倣する。
《能力者:無堂瑞希の参加が承認されました。》
「何だと!?」
流れたアナウンスに驚く五十嵐。
(大方、ゲームの難易度だとか、当たりやすさだとかによって得られる効果が変わる能力でしょう。なら...!)
無堂は刀を召喚し、構える。
「私は、実装当初の『水着アンシャピックアップガチャ』を選びます!」
『水着アンシャピックアップガチャ』とは、無堂瑞希がプレイするスマホゲーム、『スペクターノイン』にかつて実装されたガチャである。このガチャは当時、一定回数を引けば確実にピックアップキャラが貰えるシステムである“天井”が不具合により実装されておらず、また本来なら0.7%であるピックアップ確率も0.3%という誤った確率で実装されてしまったため炎上した。故に、引ける回数が有限であり確率は低くても50分の1程度のトランプよりも、何度引いても確率が変わらずパチンコの様な確率変動も無い、更には天井も存在しないこのガチャが、無堂の知る中で最も当たりの確率が低く、最も強い効果を得られると踏んだ。
《抽選が行われます。》
即座に、アナウンスと共に演出が始まる。同時に五十嵐には焦りが表れる。
「俺は!!」
五十嵐がゲームを宣言しようとした瞬間、演出は虹色の人魂を映し出した。
(嘘だろ!?一発目の単発だぞ!!)
「ブラック・ジャック!!」
五十嵐がゲームを宣言する。それと同時に、五十嵐の耳にある声が届いた。
『主様!アンシャと遊ぼっ♪』
「......へ...?」
五十嵐が最期に見たのは、悪魔のように邪悪な笑みを浮かべた無堂だった。
Tips:『スペクターノイン』
架空のスマホゲーム。無堂瑞希と天道穂香、そして2人に勧められた有巣仁理がプレイしている。
今年で7周年を迎えるスマホゲーム。古今東西の妖怪と幽霊がモチーフとなった美少女キャラがターン制バトルを繰り広げるRPGであり、プレイヤーは美少女たちの「ご主人様」として彼女らを導く者としてゲームに参加する。ストーリーやイベント、エンドコンテンツまで作り込まれており、美少女と声優で売っている割にリリース7年目が間近となった今でもセルラン上位常連組である。
何度かガチャ関連で炎上しており、初めての炎上は『2周年限定ピックアップガチャ』のバナーに別のキャラを表示してしまった件、2度目が次の年の夏の『水着アンシャピックアップガチャ』の天井実装ミスと確率詐欺である。
また、『アンシャ』はモチーフ無しのオリジナルキャラであり、6周年の人気投票では3位。同じくオリジナルキャラであり4位の『ミツキ』とはダブルスコアという圧倒的な人気を誇るも、2位の『八尺様』に一歩及ばなかった。




