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あの果てしない空の果て  作者: kai
綾取廻編
7/13

7.英雄症候群

Tips:『呪手(のろいで)

有巣仁理が保有する神器、及びそれが保有する能力。

能力『呪手』のクラスはS。特殊な腕を召喚し操る“祈りの御手(アンブラハンズ)”や、他者の腕を紐づいた能力ごと奪う技を持つ。

俺の能力が発現したのは、5歳の頃だった。

幼稚園で友達と積み木遊びをしてる時に発現して、ちょっとしたボヤ騒ぎが起きたんだ。

その時はとにかく熱くてパニックになったのを覚えてる。そのせいでボヤでも鎮火に苦労したんだと。

結果が出たのは数日後のことだった。なんと俺の能力はSクラス!名前は『獄炎』!みんな憧れるカッコイイ炎の能力!俺はもう大人気だったんだ。

きっかけは、小学生4年生のある日のことだった。

その日は寒かった。とにかく寒くて、雪も降ってた。

「雪が降るなんて、珍しいね。」

同級生のミカちゃんが手を擦り合わせながら言ってたんだ。だから俺は、

「じゃあオレの炎で暖めてやるよ!」

って、よく炎を出して暖めてやってたんだ。その頃には炎の扱いにも慣れてたからな。

そしたら、ミカちゃんは、

「ありがと!カンちゃんがいればずっと暖かいね!」

って、可愛い笑顔で喜んでくれてたんだよ。

ずっと一緒だって、約束したんだよ。

その次の日だった。

今でもよく覚えてる。朝、母ちゃんに起こされて、眠いなーと思いながらパン食って、「やべ!遅刻する!」なんて言いながら家を飛び出て、通学路の途中にあるデカい交差点。

真っ赤な線が引かれてて、赤い塊みたいなのが落ちてんだよ。近くまで行ったら、潰れたランドセルが見えて、その先に。

信じたくなかった。約束したんだぜ、ずっと一緒ってさ。俺がいたら暖房いらずだぞ。何もその次の日に死ぬことはねぇだろ。

思えば、その時から狂ったのかもしれねぇ。その時から、俺は積極的に人助けをするようになった。

車に轢かれそうな人を助けたり、ひったくりを捕まえたり、猫を探したりもした。あの日の悲劇を埋めたくて、一生懸命に。

高校2年の夏、事件は起こった。

コンビニ強盗だ。目出し帽を被って、拳銃で店員を脅す典型的なスタイルの強盗。不謹慎だけど、正直「チャンスだ!」と思ったね。コレを捕まえればヒーローだって。

結論から言うと、捕まえられはしたんだ。ただ、強盗を買い被ってた。

強盗するからには、何かしらの能力者だと思って、強めに炎を出したんだ。けど、強盗はギフトも持ってねぇ非能力者だった。当然、そいつは火だるまになって、拳銃も暴発、暴れ回って店内に引火した。

客の中に水を操る能力者がいたお陰で俺の命は助かった。ただ、他の人は助からなかったんだ。

俺のミスで...いや、俺が余計なことをしたせいで人が死んだんだ。俺が何もしなければその水を操る能力者が何とかしてくれたかもしれねぇのに、俺が手を出したせいで人が死んだ。

その人は「気にするな」って言ってくれた。けど、俺は忘れられなかったんだ。

人を焼く感触、自分が出した炎が自分の手を離れて大きくなっていく、けどどうにもならない無力感。

高校にも行かなくなって、そのうち退学した。もう何もしたくなくなって、引きこもった。

そんな日に突然、女の人が訪ねて来たんだ。

綺麗な黒髪、デカい胸に、何考えてるか分からない表情。そのとんでもない美人は、「君を助けたい」と言った。

それが綾取廻さんだ。綾取さんは俺を肯定してくれた。人殺しでも、何も出来なくても、生きてて良いって、自信をくれたんだ。

仕事をこなしたら褒めてくれたし、俺の知らないことを何でも教えてくれた。綾取さんは俺の全てだ。


「だから、俺は綾取さんに従う。そして世界を変える。俺以外に苦しむヤツがいない世界を目指して。」

一頻(ひとしき)り話し終わった炎藤乾太が涙を流す。

一方、有巣仁理と天道穂香は顔を見合わせる。今ひとつ共感出来ていない天道に対し、ハナから共感する気が無い有巣。どちらもあっけらかんとした顔をしている。

「天道、仕方ない。俺らは人死(ひとじに)に慣れすぎてる。」

天上天下唯我独尊。自分と自分が贔屓する者以外を顧みない彼らにとって、殺人は凡庸な手段の一つでしかない。

「......あんたら、正義の味方じゃねぇのか...?」

炎藤が2人を見上げる。対する有巣は首を横に振る。

「いや、正義にされてるだけだ。」

「...そうか。」

再び視線を落とす炎藤。数秒ほどの沈黙の後、有巣が再び口を開く。

「...綾取は何処にいる。」

炎藤はゆっくりと息を吸い、吐く。

「......言えねぇ。」

沈黙。有巣が溜め息をつき、頭の後ろを掻く。

(らち)が明かんな。」

「綾取さんの能力があれば楽なんですけどね。」

「そんな『ゼウス降臨の適正攻略キャラはゼウスです!』みたいな...」

策を弄しても仕方がない、と踏んだ有巣は、再度炎藤を見る。

「どうしたい?」

しかし、炎藤は反抗の姿勢を崩さない。

「どうもこうも、言わねぇよ。何も。」

「そうじゃない。俺が聞いてんのは、生きたいか死にたいかだ。」

「殺せ。シッポ巻いて逃げて綾取さんに絶望されるよかマシだ。」

即答する炎藤。

「そうか。お疲れ。」

「...あぁ。」

炎藤の言葉を聞き、躊躇なく有巣は右手を振り上げた。すると、両腕が消失した後、炎藤の身体は砂のように崩れ落ちた。一筋の涙と共に。

「...良かったんですか。」

天道の問いかけに、有巣は項垂れる。

「今更だろ。」

まだ夜は長い。

Tips:『模倣』の限界

無堂瑞希の能力『模倣』は、『恵体』や『超速再生』などの常在能力も模倣することが出来る。しかし、発動条件を満たすことが出来ない場合はその限りではない。

『模倣』の発動条件は「対象とする能力の性質を分析し理解すること」。つまり、大まかな能力効果を知り発動を見ることで模倣は完遂され、複製された能力がストックされる。しかし、生来の肉体が異形となる能力や『恵体』などは、常時発動型であるが故に「発動」という概念が存在せず、この条件を満たせないため無堂瑞希は模倣出来ないのである。

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― 新着の感想 ―
能力と能力者で“クラス”が分かれてる整理が分かりやすくて、世界観が一気に掴めました。 めっちゃ能力が多彩でかっこいいです。 こういう導入の組み方は勉強になりました。続き追います。
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