表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの果てしない空の果て  作者: kai
吟遊と安寧編
37/39

37.絶対強者(下)

Tips:有巣仁理と天道穂香

有巣仁理と天道穂香は過去に一度だけ本気で戦ったことがある。

場所は別の世界線にある宇宙空間。戦闘開始から決着までの時間は人間の感覚で約13分に及んだ。時間が異様に短いのは有巣が作った数多のブラックホールによるものである。

結果は引き分け。破壊規模が宇宙6個と銀河270個に及んだ段階で両者が神格実体と化したが、それ以上の被害を出せば基底世界(現在有巣らが存在している世界)に影響を及ぼす可能性があると判断したため、やむを得ず戦闘を中断した。

引き分けになった要因は有巣の舐めプである。最初の段階で天道の能力を封じなかったことで天道のエネルギー量が太陽のそれを大幅に超え、自身のエネルギー量以外での対応が困難になったのだ。

なお、有巣も天道も戦闘終了時点では無傷であった。これ以上続けたとしてどちらかが致命傷を負うことがあるかどうかは定かではない。

炬燵でプリンを堪能しながら有巣を見送った無堂と酢漿(かたばみ)

「有巣さん、意気揚々と出て行きましたね。」

「...あ!」

「どうしました?」

「分身消すの忘れてた...まいっか。再接続できないし。」

「あんまり良くないのでは...?」



有巣が振り下ろした杖を受け止めた道師は、その手応えにしたり顔。

「魔法使いは近接が弱い傾向にある。道術師を相手に杖で殴りに来たのは悪手だったな。」

当然、有巣は近接が弱い(当人比)。そのため、なるべく相手と距離を取れるように杖は長めのものを採用している。

「遅いな。」

傍から見れば、道師と有巣は互角に見える。

(攻め辛い...!?いや、速いだけだろう。)

徒手がメインであるため両手で攻撃出来る道師に対し、長い杖一本で戦いに臨む有巣。その2人が互角であるということはつまり、単純に有巣の手数が2倍あるということである。

「なっ...!?」

瞬間、道師の頬を有巣の杖が捉えた。

ゴシャ、と骨の砕ける音。壁に叩きつけられた道師は、血を流しながら立ち上がる。

(クッソ...気が練れない......!壊れちゃダメな所が壊された......!!)

「終わりか?」

冷淡に言い放つ有巣。

「ま...だ......!」

一歩前へ踏み出そうとする道師だが、バランスが取れず膝をつく。

(力加減ミスったな。)

残念ながら、有巣の目算は合っていた。道師の身体強化術と回復力を考慮すれば、強化魔法を掛けた全力の殴打でも大したダメージにはならない。しかし、この時の道師は有巣の火力(パワー)を舐めていたためロクな防御をしていなかったのである。

再度何とか立ち上がろうとする道師は、自分に向けられている杖に気付く。

「......詰み、か。」

「“祈りの(アンブラ)......」

そこまで言って、有巣は首に『呪手』を装備していないことに気付いた。

「......あ。」

無防備にポケットをまさぐる有巣。その隙を道師は逃さなかった。

(好機!)

しかし、掌底は有巣の眼前で止まる。

「おぉ。ちゃんと顔面を狙うとは。」

杖で道師を殴って地面に叩きつける有巣。

「能力の核は脳の中心付近...顔のパーツで言えば眉間の真下にある“松果体”だ。加えて、魔力や気を練るために使う部位は前頭葉にある。素直に顔面を狙ってそれらを破壊しようとするのは正解の反応だ。俺の能力が即死技しか持たない、という一点を除けばな。」

寒空に紅が舞う。

有巣の能力『 』の仕様上、『呪手』はある意味、反撃の余地を残す慈悲でもあるのだ。

「さて、いよいよボス戦かな。」


現在、有巣は新城が撤退したことを知らない。故に、建物ごと破壊するほどの高火力を出せない状態にある。ままならない感覚を億劫に感じながら、有巣は歩を進めていた。

「よぉ、ヒーロー。」

有巣の前に現れたのは、荒れた頬と汚れた白い髪の男。有巣は、彼が1ヶ月前に死亡したはずの柳壊龍樹(やなえたつき)であることに気付いた。

「生きてたのか。」

「意外だな。殺したヤツの名前なんか覚えてねぇと思ったんだがな。」

「つい昨日天道の母親を蘇生させたんだ。禁忌に触れている以上こういうこともあると信じざるを得ないだろう。」

天道姉妹の母親である天道香織は、常在能力『超速再生』を持っていたため肉体が完美な状態に戻り、魂との接続を取り戻すだけで蘇生が可能となった。一度死亡したのは、佐藤タカシの持つ現実改変能力により『超速再生』の発動が阻害されていたためである。

「有巣。対能力者戦の定石を知ってるか。」

出方が気になるため沈黙する有巣。

「知らねぇよな。お前はいつも初手脳死ブッパだもんなぁ。」

パン、と手を合わせる柳壊。

「能力者同士の戦闘ではまず相手の出方を窺うのが定石。故に俺たちは口上から入るんだ。不思議に思わないか?なんでみんな最初から不意打ちで必殺技を使わねぇんだろうかと。」

周囲の壁面と地面にヒビが入る。

同時に、有巣が杖を仕舞う。

「最初から必殺技を使わねぇのは、自分の能力に自身が無ぇと言ってるようなもんだよな。」

建物が砕ける。続いて、瓦礫が組み合わさって柳壊の元に集まる。

「異能解放!!」

組み合わさった瓦礫は大きな人の形になり、柳壊を完全に覆った。

能力の第二層。柳壊の最終手段である。

「お前もやってみろよ!!案外気持ちいいぞ!!」

大きく振られた手は有巣を掴み損ねて地面に激突する。大きく抉られた地面からヒビが伝播し、周囲の森林を巻き込んで陥没する。

(物質を介した能力効果の拡張...そういうのもあるのか......)

「死ねぇ!!」

柳壊の横薙ぎを躱す。

「どうした!!反撃しねぇのか?!」

意気揚々と拳を振りかぶる柳壊。

しかし、

「なっ...!?」

瞬間、瓦礫の巨人が崩壊し、内部の柳壊が露になる。

「何をした...!?」

「お前に説明する道理は無い。」

巨人が完全に崩壊し柳壊が落下する。

かなりの高さがあったからか、落下した柳壊は原型を留めていない。そこに、有巣は容赦なく炎で追い討ちをかける。

しかし......


「それで、粉塵爆発が起きた、と。」

「いやぁ、柳壊の能力効果が“分解”だとは思わなくて。」

にこやかに頭を搔く有巣に、呆れた表情の霧島。

一方で、無堂は釈然としない様子。

「これ、どうやって倒したんです?発動条件満たしてませんよね...?」

「そもそも発動条件を教えた覚えは無いぞ。」

「じゃあ何なんです?」

「対象に触れる。もしくは5m以内に近付く。」

そこで、無堂はあることを思い出す。

「え、でも私と戦った時にそれはブラフって言いませんでした...?」

同席している酢漿と新城も怪訝な顔。

「馬鹿正直にブラフだと教えるかよ。」

「じゃあ柳壊龍樹にはどうやって?」

「空間圧縮だな。」

有巣が指を立てると、酢漿の胸が凹む。

「こんな風に。」

「いやん♡えっち♡」

「え、キモ。」

「ひどい!自分で触ったくせに!」

「......。」

冷ややかな視線を送る無堂。

そんな中、話は盗賊団の件に戻る。

「そういえば、盗賊団はどうなったんだ?」

「そうか。有巣は知らねぇのか。」

霧島と新城が目を合わせる。

「三星会本部のメンバーだと名乗る奴らの話によれば、既に討伐されていたんだと。」

「その人たちが倒したんじゃなくて?」

そう言い、首を傾げる酢漿。一方、有巣は納得したような表情。

「まぁ、柳壊とその仲間が倒したんだろうな。」

「派手に爆発したせいで確認のしようが無いがな。」

「いやー...なんでなんスかねぇ......」

「しらばっくれるな。報酬から天引きだ。」

「すんません......」

Tips:柳壊龍樹の予後

事件後、現場では柳壊龍樹のDNAを含んだ焼死体が確認された。戦闘中の有巣仁理による処理により、松果体を含む脳幹部分が跡形もなく粉砕されており、どんな能力を用いたとしても再起は不可能な状態と判断された上で再度火葬された。この有巣仁理による処理は、前回戦った後に放置したために取り逃したということを踏まえた適切な処理であったとし、残虐性はあるものの有巣にとって不利に働くことは無い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ