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あの果てしない空の果て  作者: kai
妖魔黎明編
30/40

30.双力戦

Tips:魔力と霊力

生物が生命を維持するために必須の生命エネルギー。それが変異したものが魔力と霊力である。

魔力と霊力は真逆の性質を持つ。例えば、魔力を用いることで怪我が治癒し、霊力を用いることで怪我が悪化したりする。これは、生命エネルギーと比べて魔力が陽極に、霊力が陰極に歪んでいることが由縁である。

また、大半の生物は陽極である魔力しか使用出来ないが、一部は霊力を練ることが出来る。しかし、その場合は逆に魔力が使用出来ないことが殆どである。

加えて、魔力と霊力はその様相によって属性を推定出来る。一般的に魔力は白、霊力は黒の様相を示し、更に赤白い魔力、青黒い霊力など、各個人により細かく色が異なることがわかっている。

ガサッと音を立て草むらから顔を出す有巣仁理。

「ここがアイツの言ってた研究所...」

続いて顔を出す舵原良也。

「人里離れた山奥で能力の研究をしているとのことだよね。」

最後に顔を出す井桁蒼太。

「詳しいことは知らないけど、こんなとこでコソコソやってるならロクなヤツらじゃなさそうだな...」

3人の視線の先には、左右に長く延びる高い塀がある。

草むらから出る有巣。

「有巣。気を付けた方が良い。」

舵原の言葉に、有巣は首を横に振る。

「この場合推奨されるのは、覚悟を決めることだろうな。」

「そうだ。腹をくくれ。」

いきなり有巣に話し掛けたのは金髪の女。

声が聞こえると同時に舵原と井桁は身を隠す。幸い、気付かれたのは有巣だけだったようだ。

「厄介だな。」

「此方のセリフだ。どうやって此処を突き止めた?」

唇を舐める有巣。

「内緒。」

閃光。女の拳を受け止める有巣。

「速いな。」

舌打ちする女。

「バースト。」

光が有巣の左肩を弾き飛ばす。

一瞬、女の顔が緩んだように見えた有巣は、すぐさま左肩を治して見せる。

「残念。」

「なっ...!?」

左手に霊力を込め女を殴る有巣。

大きく後ろに飛んだ女。着地と同時に頭部がバラバラに崩れてしまった。

「やべ。」

「あーあ。可哀想に。」

舵原と井桁が草むらから出てくる。

「証拠隠滅!」

能力で死体をバラバラに分解する有巣。

「ひでぇ...」

「しゃーない。切り替えていこう。」

「まぁ、あの速さだと俺たちじゃ手も足も出なそうだったしね。仕方ない。」

「お前ら人の心とか無いのか...?」


「外からぶった斬るんじゃダメだったの...?」

「ダメだよ。柊に繋がる手がかりがあるかもしれないからね。」

溜め息をつく有巣。そして、聞き慣れない言葉に疑問符を浮かべる井桁。

「柊?って何?」

「国際指名手配中のSクラス能力者。」

「またSクラスか...強いの?」

黙る有巣の意図を察し、舵原が口を開く。

「絶対評価なら強い。曲がりなりにもSクラスだしね。ただ、相対評価だと弱い。」

「相対評価?」

「柊の能力は、他人の能力を奪って自分の物にする能力なんだ。」

「え!?そんなヤツが相対評価で“弱い”扱いされてんのか!?」

「能力がたくさん使えるってことは、能力頼りの戦闘スタイルになりやすいってことだからね。」

有巣に視線を向ける舵原。

「能力を消せる俺なら小指の先で勝てる。残念ながら。」

「残念ながら...」

その時、3人の前に女が立ち塞がる。

「貴様らか。」

首を傾げる3人。

「貴様らが!!わた」

言い切るより遥かに速く、水の刃が女を縦に両断する。

「えー...」

「最後まで言わせてやりゃ良いのに。」

「悪いけど、有巣と違って俺には遊ぶ余裕が無いんでね。」

「そ、そうか...?」

ドン引きする井桁。有巣と舵原は、血溜まりを飛び越えて先に進む。

「お、おーい!置いてくなよ!」


警報が鳴っている。

折り重なった死体を背に、少し大きな扉を開ける3人。

「お。」

カレーの匂いが鼻に届く。どうやら、食堂に辿り着いたようだ。

「メシ食ってく?」

「俺は遠慮するよ。」

「俺も...人殺した後に飯食えねぇよ...」

「何を今更。」

勝手に鍋からカレーを掬い皿に注ぐ有巣。

「えぇ食べるの...?」

一口、カレーを口に入れる。

「毒は無いな...」

「そりゃそうだろ...」

「まぁ、仲間が間違って食べたら大変だろうしね。」

「警戒して損した。」

辺りを見回す有巣。

「お!ポテトサラダだ。」

「好きなのか?」

「だぁいすき♡」

席につき優雅に食事を摂り始める有巣。

「よくこの状況で食えるな...」

「美味い。」

舵原は2つある扉に目を向ける。

「そういえば、井桁って非能力者だよね。」

「あぁ。検査してねぇけど。」

「検査してないの?なら無能力者の可能性もあるかもね。」

「無能力者?」

何枚か皿を投げ監視カメラを破壊する井桁。舵原も飲用水で反対側のカメラを破壊する。

「能力は無いけど身体に特殊な機能を持った人のことだよ。」

「でも、俺に特殊な機能なんてないぜ?」

「いや、身体能力が異常だろ。」

あぁ、と自分の掌を見る井桁。

「なんで“無能力者”って呼ぶんだ?」

「正確には、「無能力能力者」...トゲナシトゲトゲみたいな感じだね。能力者と同じぐらい強いけど能力は持ってないから。」

「へぇ。だからロクに怪我とかしたことないんだな。」

その時、両方の扉が開いた。

「貴様らが侵入者だな。」

先頭に立つのは、短い赤髪の女。

「不味いカレーだったぜ。ありがとな。」

ちょうどカレーを食べ終わった有巣が口元を拭きながら立ち上がる。

「ただ、ポテトサラダは美味かったな。」

女が顔を(しか)める。

(...強いな。3人とも。)

「何をしに来た。」

「さぁ?何だろ。調査?」

「調査だね。」

「何の調査だ。」

有巣、舵原、井桁の3人は順に顔を見合わせる。

「能力?」

「柊関連。」

「いや、ポテトサラダだ。」

「それはない。」

「無いね。」

このやり取りの間、無言で3人を見つめていた女に井桁が気付いた。

「...なぁ、その...」

数秒間ほどの沈黙。

「なんで黙るんだよぉ!」

刹那、食堂に数発の銃声が響いた。

有巣の周囲で止まる銃弾、舵原の操る水によって止められた銃弾、そして井桁は素手で銃弾をキャッチしていた。

「あっつ!!」

「水かけるよ。」

舵原が井桁の手に水を掛ける。

「ふぅ...助かった...」

女は驚愕していた。まさか、機動部隊の改造銃が通用しないとは思っていなかったのだ。

「貴様らは...何者だ...?」

「それさっき聞いたぞ。」

「いや、聞いてないんじゃないかな。」

「あれ、そうだっけ?」

再度、数秒間の沈黙。全員が様子を窺っている。

「...もういい?」

耐え切れず有巣が口を開いた。

「いいよ。」

舵原の言葉と同時に、3人を取り囲む全員の頭が弾け飛ぶ。

「うわぁ...」

「さ、次行こう。」


地下へと続く広い階段に足音が響く。

視界の悪さに目を細めながら、舵原は先のことを思案していた。

「...結構、殺したね。」

舵原の口調が重い。心中を察し、有巣は溜め息をつく。

(つら)いか?」

「...いや、水が足りるかなって。」

「えぇ...」

確かに、舵原の水は既にバケツ一杯分ほどの量まで減っている。

「まぁ、トイレか何処かで足そう。」

「だね。便器の中から取れば感染症も狙えるし。」

「意味あるか?それ...」

その時、井桁が立ち止まった。

「どうした?」

「...音がする。」

「...音?」

瞬間、

爆音と共に周囲が抉れる。

「......やられた...!」

「痛ぇ...」

建物は跡形もなく吹き飛ばされ、大きなクレーターが出来ている。舵原は瓦礫の上に着地し、井桁はすぐそばの瓦礫を押しのけて起き上がった。

一方、微動だにせず浮遊している有巣。彼の見つめる先には、全身真っ黒の何かが居る。

“何か”は枯れ木のような四肢と胴体に、髪はあるが顔の無い頭部が乗っている。黒煙を上げながら立ち尽くしている真っ黒なソレは、猫背の姿勢で静止していた。

「あれは...?」

井桁の視線の先には、巨大な花がある。およそ広葉樹と同じサイズのソレは、太陽光を受け白い花弁を燦然と輝かせている。

しかし、明らかに大きい。何故なら、階段を降りる途中の位置で静止している有巣よりも高い位置に花弁があるからだ。その異様さに3人とも気付き、緊張が高まる。

舵原に随行していた水はもう無い。つまり彼は既に戦力外である。

「有巣!もう水が無い!俺は撤退するよ!」

「井桁も一緒に撤退しろ。一人にするのは危ない。」

「了解!」

井桁が舵原を抱えてクレーターの外に飛び出る。

2人の撤退を確認した後、有巣は黒いモノに視線を戻す。ソレは微動だにしていない。

(多分、躊躇しちゃダメだろうな...)

高まる魔力に触発されたのか、黒いソレが身動ぐ。

「二層解放」

掌印より僅かに速く、結界が展開される。

そして合掌。右手の指を2本立てながら捻じる。

「『無影廻廊』」

同時に、有巣の背後に無数の白い手が生え、枯れ木の形を成し始める。

しかし、

「アアアアアアアアアアアア!!!!」

強烈な蹴りにより手の枯れ木が粉砕される。

舌打ちする有巣。

(ヤバいか...!)

能力結界が崩壊する。

(ヤツのあのエネルギー...初めは能力によるものかと思っていたが、違うな。俺の能力結界内で動けたことから確信出来た。)

黒いソレが着地する。しかし、そこから動かない。

(神格実体!それも霊力を根源とする非受肉型!!存在の格がデカいからエネルギー量が多いのか...!)

神格実体とは、莫大な量のエネルギーと一つ以上の(にえ)により、ひとつ上の次元へと昇華した魂とその肉体を指す。

神格実体の肉体の組成はその殆どが魔力もしくは霊力である。故に、魔力を基礎とする実体は霊力による攻撃に弱く、霊力を基礎とする実体は魔力による攻撃に弱い。これは、魔力と霊力が真逆の性質を持ち、同量のそれらが混ざることで中和されニュートラルな生命エネルギーに戻るためである。

また、魔力は白く、白い煙を放ち、霊力は黒く、黒い煙を放つ。故にソレの組成は霊力が主である、と有巣は判断した。

(ならば手段は...)

その時、

「...あれ?」

辺りを見回す有巣。巨大な花と黒いモノは跡形もなく消えている。

「...マズいか。」


「あああああああ嗚呼アアアああ」

アパートの前で白い綿が膨らんでいる。

「ヤちん、ヤチン、やちん」

気泡が破裂し、魔力が漏出する。

「おハラいくダダダダダあああああ」

Tips:有巣一行が襲撃した施設

前回、有巣たちが捕らえた男を拷問し得られた情報によると、件の施設は「2つ以上の能力を持った能力者」に関する研究を行っていたらしい。この男は研究により得られた、2つの能力を持つ能力者である。

彼らに能力を与える手段として「柊黒彦の助力」「肉体の改造」の2つのアプローチを使ったが、前者は能力適合障害により失敗、後者は遺伝子に直接働きかけることにより成功した。

有巣達は話を細かく聞いていなかったため「柊黒彦の助力」があったことと既に彼が手を引いていることを聞き逃していた。それにより、このようなややこしい事態に発展してしまった。

また、地下の研究は秘密裏に行われていたことであり、男は把握していなかった。

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