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あの果てしない空の果て  作者: kai
妖魔黎明編
29/39

29.祈りの御手

「瑞希ちゃんって有巣さんの弟子なの!?」

前のめりになる徒空未来。

「声が大きいですよ...」

「ねぇ馴れ初めは!?馴れ初めは!?」

ミルクコーヒーのボトルを置き溜め息をつく無堂瑞希。

(攫われそうになった所を偶然で助けられた、とか言ったら面倒なことになるんでしょうか...)

徒空の目は爛々(らんらん)と輝いている。

「電車で偶々(たまたま)隣の席に座ったんですよ。」

「へぇ!運命じゃん!!」

(悪手でしたか...)

「徒空...あんま迷惑かけんなよ。」

と、通路を挟んだ先の影山忍。それに覗魅慎也は、

「まぁまぁ、あんま乙女の恋バナに首突っ込まんときや。気ぃ使われへん男は嫌われんで〜。」

その言葉に沈黙する一同。

「え、何か言うてや。」

「え、地の文も無いなったけど。」

「なぁ、おーい!」



「...ん?」

道端に青年が落ちているのを発見した有巣仁理。

「大丈夫かー。」

「だ...大丈夫じゃ...ない...です...」

「わぁお。」


一心不乱に炒飯をかき込む青年。

「ありがとうございます!餓死するかと思いました。」

「今日日道端で行き倒れるヤツなんてそうそう居ねぇけどな。」

「なぜ倒れていたんです?」

舵原良也が訊くと、青年は神妙な面持ちをする。

「それが、ちょっと困ったことになって。」

有巣と舵原は顔を見合わせる。


「...これ?」

「...あぁ。」

アパートの扉を塞いでいる大きな綿。

「大家に言った?」

「それが...」

その時、

「君たち、ここで何をしているのかな。」

「あ、大家さん...」

3人の後ろに立つのは、いかにも厳格そうな老齢の女性。

「...2人は俺の友達です。」

「...へぇ。それで、その後ろのは。」

「...えと」

「コレが邪魔で家に入れねぇからコイツが空腹で行き倒れてたんだよ。」

割って入った有巣の言葉を聞き、大家は顔を顰める。

「私は井桁(いげた)君に訊いたのだけど?」

「井桁に答えて欲しけりゃその高圧的な態度を改めるんだな。」

貴女(・・)の方がよほど高圧的だとおもうけれど?」

「初対面でその態度されて高圧的にならねぇ方が難しいな。」

「貴女」

「待ってください。」

話が堂々巡りになることを察し、舵原が割って入る。

「すみません。この綿だけ退かしたら帰るので。」

そう言いながら、舵原は身分証の裏面にある「A」の文字を見せる。

「大家さんもこのままでは困るでしょう?」

大きく溜め息をつく大家。

「...これだから能力者は。」

大家は、悪態をつきながら踵を返す。

「...災難ですね。」

「いや、こんなもんだろ。」

「...2人とも、ごめん。俺が自分で何とかすれば良かったんだ。」

「んな事ねぇよ。」

「そうですよ。1人ではどうにもならないことはありますから。」

2人の言葉に少し照れる井桁。

「...そういえば、名前がまだだったな。俺は井桁蒼太(いげたそうた)。」

「有巣仁理ー。」

「舵原良也です。よろしくお願いします。」

「あぁ、よろしく。」

その時、


「いってぇ...何が起きたんだ?」

砂を払いながら立ち上がる井桁と舵原。

有巣は、衝撃を伴って膨張した綿を見ている。

「えぇ...デカくなってる...」

「何でだろうな。」

その時、男が綿を突き破って飛び出てくる。

「あ。」

男の様子を見て有巣は逡巡する。

(変な軌道...そういう能力だな。)

「なんか出て来た...?」

「これ以上登場人物増やしてどうする気なんでしょうね...」

その時、空中の影が消える。

「速!?」

瞬間、

(左か...!)

有巣のすぐ左で静止する男。

「あ。」

「えっ?」

「あー...」

有巣の能力に引っ掛かり速度が0になったのだ。

「なん...だ!これは...!」

なんとか男はもがこうとするが、身体は微動だにしない。

「珍しいね。有巣が反応出来ないなんて。」

「あぁ...」

有巣が左眼を外して見せる。

「えっ!?」

「それは...?」

「無堂に貸してんだよ。」

義眼を戻し、3人は男に視線を戻す。

「まぁ、話を聞く必要はありそうだな。」

「ですね。」



「やっぱ普通列車は揺れますね...」

左眼を擦りながら、無堂は身体を伸ばす。

「なんで島根に新幹線通ってないんでしょうね...」

と詩柄唯織。

一同が改札を出たその先、駅の出口に人影。

「遅い。1分遅刻だ。」

そう言うのは黒いマスクを着け髪を短く揃えたスーツの男。

「1分ぐらいええやん...堪忍したってや。」

「まずは謝れ。」

「ごめんちゃい♡」

(あの人が病葉煉次(わくらばれんじ)さんですかね。)

無堂が凝視していると、病葉と目が合う。

「俺に何かあるのか。」

「い、いえ...何も。」

慌てて目を逸らす無堂。続いて、病葉は出口の方を向く。

「行くぞ。時間が惜しい。」


「今回の任務は出雲に収容されている御神体の護衛だ。特殊なルートで京都にある陰陽省本部まで運ぶ。その道中、御神体を守る為に宗主がお前らを派遣した。」

地下に続く階段の前で立ち止まり、病葉は振り返る。

「ここまでで何か質問はあるか。」

宮本が勢いよく手を挙げる。

「御神体って何ですか!!」

「見た方が早い。」


木造の部屋に無数の蝋燭の火が灯る。

その中央、台座の上には、両手に抱えられるサイズの木箱が安置されている。

「これは...?」

「開けてみるか?」

病葉に促され、詩柄が箱を開ける。

「これは...!」

中に入っていたのはおよそ人間のものと思われる腕。それも、手を組んだ2本の腕が干からびた状態で入れられていた。

「呪物...?」

「いや、神器だ。触るなよ。瘴気に呑まれる。」

箱の蓋を閉め、病葉は脇に抱える。

一同が部屋を後にする。無堂は、背後の蝋燭が消えていることに気付いた。

「これ、何なんですか?」

と白井が質問する。

「『願いの手』...別名を『祈りの御手(アンブラハンズ)』と云う。」

「アンブラハンズ...!?」

聞き覚えのある響きに、無堂は目を丸くする。

(いの)りの御手(おんて)と書いて『祈りの御手(アンブラハンズ)』...有巣仁理のもう一対の腕だ。」

Tips:井桁蒼太のプロフィール

・171cm65kg

・ツンツンと外に跳ねた髪形。細身だが筋肉はしっかりある。

・非能力者

・好物はハンバーグ

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