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あの果てしない空の果て  作者: kai
妖魔黎明編
28/40

28.霊術師

Tips:Sクラス

現在、日本で登録されているSクラスの人間は5名。

ちなみに、現在が過去最多である。

年始の雰囲気もすっかり感じられなくなった日曜日。舵原良也は白い息をたなびかせながらゆっくりと街を歩いていた。

一週間ほど前までは魔獣や霊獣の被害で壊滅状態だったのが、能力や魔法を駆使してあっという間に復興し、今では人が溢れかえる元の景色に戻っている。

ふと、道端のベンチを見る。そこには、黒い金属の仮面の男が一人。

「舵原良也くんだね。」

舵原は口を開かない。眉ひとつ動かさず佇んでいる。

「奇遇だね。会いたいと思ってたんだ。」

目の前の男は柊黒彦だ。その事実に舵原は気付いている。しかし、今の自分が応戦できる相手でないことは想像に難くない。

風が止んだためだろうか、舵原の耳に高音が響く。

「君に渡したい物がある。」

柊が手を差し出す。しかし、舵原は応じようとしない。

「...遠慮しておきます。」

「遠慮するなよ。」

舵原は、空気が張り詰めるのを感じた。

(この男、何を考えているのかわからないな。理解出来ない、というより、判別出来ない。)

顔の中央、鉛の義眼が一つ。いや、義眼ではないのだろうか、と舵原は感じた。

「君には期待しているんだ。」

柊の姿勢はリラックスした人のそれである。その様子から、おそらくここで自分を仕留める気が無いのだろう、と舵原は結論付けた。

「貴方が渡したい物というのは、能力ですか。」

「あぁ、そうだよ。」

「...基本的に、能力には反動が伴います。先天性の能力なら身体適格で無視できますが、後天的に獲得した能力はそうではない。」

何も言わない柊。

「...貴方の目的は何ですか。」

「逆に、何だと思う。」

今度は舵原が沈黙する。

「質問を変えよう。」

柊が舵原の前に立つ。

「君に、私の事を訊く覚悟はあるのかな。」

数秒の沈黙。舵原は鉛の義眼を見上げる。

義眼は、何も語らない。

再び風の音が聞こえたのは、数秒後のことだった。



「時間停止能力は、概念系能力だという説がある。」

生徒の前に立ち、眼鏡を掛けた有巣仁理が授業をしている。

「単に時間を止めるだけなら、止まった時間の中で活動は出来ない。何故なら、大気はおろか、光まで停止するからだ。単に時間を止めるだけではそれらを供給出来ず、時間停止の意味が無いだろう。」

その時、一人の生徒が挙手する。

「その前に、自転の慣性で投げ出されませんか。」

「投げ出されない。何故なら、エネルギーの発露は時間の経過に依存するからだ。」

有巣は、ホワイトボードに地面と棒人間を描く。

「例えば、歩いている人がいる。」

次に、棒人間の前に矢印を描く。

「進行方向はこれだ。慣性が働く場合、」

棒人間を消し、地面に倒れた棒人間を描き直す。

「時間が止まれば、彼らは自身の歩行速度に抵抗出来ず倒れてしまう。」

また、一人の生徒が挙手する。

「なぜ、そうではないと断言出来るのでしょうか。」

有巣は眼鏡を外し、質問主のスーツの女と目を合わせる。

「試したことがあるからだ。」


「本日は、ありがとうございました。」

スーツの男は、向かいに座る有巣に礼を述べる。

「ですが、なぜ柊が時間停止能力を使用していると?」

有巣はコップに満たされたコーラを一口飲み、すぐテーブルに置く。

「ゼロコーラはある?」

コップを突き返す有巣。

「すみません...用意が無くて。代わりの物を用意しましょうか?」

「良い。すぐ出るだろ。」

コップを自身の方に寄せる男。有巣は唇を舐め、再度口を開く。

「最近、何度か時が止まるタイミングがあった。」

「判るんですか!?」

男は前のめりになる。

「落ち着け。...止められた時間の中で俺に何かされちゃたまったもんじゃないからな。俺だけ止まらないよう最適化してある。」

「...で、その時間停止が柊の仕業だと?」

有巣は静かに頷く。

「5回だ。うち3回は綾取廻の件の後、1回は陽杯教の件、アスモデウスとの交戦後そしてあと1回は、」

有巣はトン、と机の上に指を置く。

「先刻の会議の最中だ。」


警視庁の敷地にある駐車場で、綾取廻の車に乗る有巣。

「どうだった?」

「緊張するな。いつ来ても。」

「そうじゃなくて、挙動不審な人とか。」

「あぁ、そうか。」

有巣は懐からメモ帳を取り出す。

谷屋大輔(たにやだいすけ)角田秀次(すみたしゅうじ)。同僚の証言では、2人とも警察学校をトップの成績で卒業した同期で、人一倍正義感が強く優秀な刑事であると。挙動に不審な点は見られなかったし、先刻の時間停止の際も一緒に停止していた。しかし、」

有巣は、2枚の写真を綾取に見せる。

「...成程。」

どちらの写真も、金属製のマスクを映したものだ。

「どうするの。」

「んー、そうだな。」

スマホを置き、綾取からペットボトルを受け取る有巣。

「こいつらは泳がせる。んで、情報はマフィアかダークウェブにでも流そうかな。その方が面白い。」

「裏社会の人間が柊に対してアクティブになるのかな。」

「ならない。絶対に。」

ペットボトルの蓋を閉め、綾取に返す有巣。綾取はそのキャップを開け、一口飲む。

「ならないから都合が良いんだ。表を動かせば柊は強硬手段に出るからな。裏を掻き乱すぐらいが丁度いい。」

「勝てるの?」

キャップを閉める綾取。

「知らんな。柊に訊け。」



「はるばる来たぜぇーーーぃ!島根ぇーーーぃ!!」

「兵庫ですよ。」

「島根に新幹線通ってませんからね...」

「えぇ!?そうなの!?」

新幹線を降り駅でたむろするのは宮本双葉、無堂瑞希、白井響香の3人。

「じゃあ乗り継ぎかぁ...」

「そもそも有巣さんに頼めばワープできるのでは?」

白井の疑問に、無堂は苦い顔。

「そもそもワープなら私も出来ますが...私も有巣さんも初見の場所は無理なんですよ。」

(どうせ島根なんて行ったこと無いでしょうし...)

偏見である。

「で、此処で術師の方々と落ち合う予定なんですが。」

「術師?」

「はい。陰陽省直属の霊術師の方々です。」

聞き慣れない単語に首を傾げる白井と宮本。

「“陰陽省”は、霊力が凝集して生まれる「(あやかし)」やそれが受肉した「霊獣」を専門に討伐する機関です。なので管轄は霊力ですね。」

「へぇサンガツ!」

「今は1月ですよ。」

その時、

「なんや、エラい景気えぇ姉ちゃんおるやん。」

3人に話しかけたのは、金髪をオカッパにした細身の男。上下黒の服を着た3人を連れている。

「無堂瑞希さん、ですね。」

「あ、はい。」

無堂の名を呼んだのは眼鏡の女性。

(ベリーショート...顎のラインによほど自信がなければ出来ない髪型ですね...)

「僕は」

「ねぇ!なんでこんな陰キャと仕事しなきゃいけないわけ!?」

眼鏡を遮りそう言うのは、隣のツインテール。

(うっわ失礼ですねー...)

「なんやみーちゃん今日機嫌悪いやん。生理?」

「死ね!」

「げふっ!!」

「飛び蹴り!?」

そして、残る根暗そうな男が口を開く。

「今蹴られた金髪が覗魅慎也(うつせみしんや)、ツインテールが徒空未来(あだそらみらい)、眼鏡が詩柄唯織(しがらいおり)、俺が影山忍(かげやましのぶ)。覗魅先生が担任で、俺たちは京都にある霊戈(れいか)高校の2年だ。」

(影山...神子さんの親戚ですかね。)

「私は無堂瑞希です。それと、」

「宮本双葉!」

「白井響香です。」

「話は姉さんから聞いてます。」

そこで、覗魅がようやく立ち上がる

「ほらぁ!覗魅先生がちゃんとしないから!」

「ダボコラ!お前が蹴ったからやろボケナス!」

「口が悪いなぁ...」

トンチキな4人組に迎えられ、幸先が不安になる無堂であった。

Tips:霊術師のプロフィール

覗魅慎也(うつせみしんや)

霊戈高校2年生の担任。金髪オカッパの髪型と大量のピアスが特徴的。自他ともに認めるクズだが、徒空曰く「黙っていればイケメン」らしい。

詩柄唯織(しがらいおり)

霊戈高校2年生。学生ながらにAクラスに認定されている天才だが、温厚な性格から戦闘は好まない。

徒空未来(あだそらみらい)

霊戈高校2年生。一言で言うなら短気で馬鹿。しかし本人曰く「元ヤンではない」らしいが真相は定かではない。

影山忍(かげやましのぶ)

霊戈高校2年生。名門「影山家」の出身であり、影山神子の弟。根っからの陰キャで、中学時代はクラスで孤立していた。本人曰く「人間強度が下がるから友達は作らない」らしい。

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