表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの果てしない空の果て  作者: kai
綾取廻編
2/20

2.虚構

Tips:「非能力者」と「無能力者」

「非能力者」は文字通り“能力者ではない者”を指すが、「無能力者」は違う。

「無能力者」とは、脳の中心部付近にある“松果体”が能力を司っていないものの、能力者と同等のポテンシャルを持つ者を指す。なお、作中では天道舞香と斑目詩織が該当する。

また、無堂瑞希は通常の能力に加え「無能力者」が持つポテンシャルも模倣することが可能である。

「はぁ〜...やっと午前が終わった...」

そう言い、今日も机に倒れ込む無堂瑞希。その様子を見る天道穂香は、どこか物憂げな表情をしている。

「...何ですか。」

無堂の視界を塞ぐように立つ女。ポニーテールにした綺麗な黒髪と皺ひとつないシャツは、彼女の几帳面さを表している。

無堂の記憶の中にこの女は居ない。しかし、無堂はこの女を知っている。

(...何故?)

存在しない点同士が線で繋がる。

「無堂さん。」

「...あぁ、綾取(あやとり)さんですか。」

無堂の中で、何かが切れる音がした。

刻まれた文字が消えることは無い。



「ふぅ、食った食った。」

カレーを平らげた有巣仁理と天道穂香。

食器を洗う有巣は、天道にある質問を投げかける。

「無堂と仲良いんだっけ。」

「はい。」

「ふぅん。普段どんな話するの。」

「...髪の話?」

「へぇ。女子高生っぽいな。」

そこで会話が途切れた。コミュ障の哀しき(さが)である。

数分間の沈黙。それを破るかのようにインターホンが鳴る。

「...予知能力があれば楽なんだけどな。」

ドアを開けると、そこには白髪の男。

「良かった。まだ人が居た。」

ガサついた声。しかし表情は明るい。

「白々しいな。」

有巣が男の腹を力いっぱい蹴ると、男は柵を破って道路まで飛ばされる。

「酷いなぁ!有巣!」

「俺の名前知ってんのか。んじゃテメェも名乗れよ。フェアじゃない。」

有巣の言葉を聞き、男は気味の悪い笑みを浮かべる。

柳壊龍樹(やなえたつき)!Aクラスの能力者だ。」

柵の破片を投げる柳壊。有巣が躱しながら地面に着地する一方、破片は天道の額にクリーンヒットした。

「あびゃっ」

攻めの姿勢を崩さないよう、体勢を整える有巣に殴り掛かる柳壊。対する有巣は柳壊の手首を掴み、大きく引っ張る。

「それ言う必要あんのか?」

有巣の右拳が柳壊の顔面にぶつかる。衝撃をもろに受けた柳壊はバク宙で体勢を立て直し、鼻血を拭う。

「あるよ!テメェは何クラスだ!」

近くに落ちていた石を拾い投げる柳壊。有巣は頭を傾けて躱す。真っ直ぐ飛んでいく石は、有巣の後方にちょうど着地した天道の顔面を捉えた。

「ぐぇっ」

「聞かされてねぇのか。」

有巣は左手を横に伸ばす。真っ赤な切り傷が付いている手首から大量の血液が吹き出し、細長い棒の形をとる。

「それがお前の能力か?」

「違う。」

『吸血鬼症候群』。主に赤血球と血漿(けっしょう)に作用する疾患群の総称で、症状が西洋の伝承にある『吸血鬼』の特徴と酷似しているためにこの名が付けられている。血液の摂取により感染し、症状は①『太陽光下における活動及び能力行使の阻害』、②『銀製品に対する著しいアレルギー反応及び火傷・皮膚炎の誘発』、③『血液操作能力の獲得』、④『人間の血液摂取時の興奮状態・身体強化』、⑤『身体再生能力の獲得』などが主である。なお、有巣は鍛錬による免疫獲得により、①と②及び④のデメリットを克服している。

「さっき俺のクラスを訊いていたな。教えてやる。」

棒の形をとった血液が凝結し、刀の形になる。

「Sクラスだ。ついでにそこのトンチキジャージもな。」

自身のジャージの胸元にプリントされた『日陰者』の文字を見る天道。

一方柳壊は、目を見開き有巣を凝視する。

「...は?」

刹那、寒空に紅の花が咲いた。



強くなる雨足に追い立てられるように早歩きを続ける無堂。隣の綾取も、何食わぬ顔で随行している。

「随分と呑気ですね。綾取さん。」

有巣のアジトの前に居座っているのは、青い瞳と青メッシュの男、舵原良也である。

(うっわぁ...イケメンかぁ...)

「『呑気』とは何のことですか?」

舵原が立ち上がる。雨音はかなり強いが、舵原は一切濡れていない。

「とぼけないでください。」

舵原が右手をかざすと、雨水が集まり大きな球になる。

(水を操る能力でしょうか...?)

瞬間、無堂は腹部に熱を感じる。

傘を取り落とす。流れた血は拡散せず血溜まりを作る。どうやら舵原が操った水によって無堂の腹が貫かれたらしい。

「なん...で...!」

「すみません。貴女に恨みはありませんが、一度死んでもらいます。」

(『超速再生』...!)

無堂が天道舞香の能力を起動する。するとたちまち腹部を貫通した穴が消える。

「...なるほど。」

無堂が空中から刀を出現させ構える。

「再生するとはいえ痛いものは痛いんですよ...!」

ここで舵原はいつの間にか綾取が姿を消していることに気付いた。しかし時すでに遅し、無堂が臨戦態勢に入っている。

「...すみません、助けられなくて。」

舵原は無堂に勝てないと判断した。理由は、無堂が綾取の支配下にあり話が通じない可能性がある点と、無堂の能力を前に舵原は為す術が無い可能性がある点である。

回る視界の中、舵原の瞳は驚愕する無堂を捉えていた。



「...何日経った?」

「3日です。」

「3日かぁ...ヤバいな...」

人が飲まず食わずで生きられるのは最高でも5日程度である。『超速再生』やその写しを持っている天道舞香や無堂瑞希はともかく、舵原良也と斑目詩織(まだらめしおり)はいよいよ危険になってくる。

(まぁ、病葉(わくらば)は病葉だし大丈夫か。)

その時、有巣のスマホが鳴る。

「はい。」

『舵原良也さんと天道舞香さんが見つかりました。』

「生きてるか?」

『それが...2人ともまだ意識が戻らず...』

「...そうか。引き続きよろしく。」

『承知しました。』

電話を切る。不安げな顔をする天道穂香に、有巣は微笑みかける。

「お姉さん、無事だってさ。」

今はそう言うしかない、と心の中で言い訳する有巣であった。

Tips:舵原良也のプロフィール

・170cm60kg。

・青い瞳と青メッシュがサラサラな黒髪に入っており、左目尻には泣き黒子がある。

・有巣と同じく大学生。

・能力は『水操作』。一定範囲内の水を操作する能力であり、運用にはかなりの集中力を要する。

・好物は羊羹。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ