19.魔力と体力
Tips:能力の成長
能力の応用には、能力者本人の体験や好みなどが大きな影響を与える。例えば、綾取廻の『支配』は有巣と一緒に観たアニメの影響を大きく受けている。
「改めてまして、まじかる☆マーゴです!よろしくお願いします!」
「マジカルマーゴ...」
宮本双葉が復唱する。
「有巣くんが言うには、マーゴは精霊なんだよね。そもそも精霊って何なの?」
「簡単に言えば、魔力の塊だな。生物の生命活動から湧いた残滓の堆積物。流れの中に出来た吹き溜まり。」
「吹き溜まり?なんで?」
「時間が経てば自然消滅するからだ。生物の特性を持たない精霊は自分で魔力を生み出せないからな。」
「え!?じゃあマーゴ死んじゃうじゃん!!」
宮本の言葉を聞き、マーゴは涙目。
「そんなぁ...」
「ねぇ!かわいそうだよ!どうにか出来ないの!?」
「さぁ?受肉してるから別に大丈夫なんじゃね?」
呑気な有巣。
「消えちゃう可能性は無いの?」
「知るか。受肉した精霊なんて初めて見たし。」
「酷い!人の心とか無いの!?」
はぁ、と溜め息をつく有巣。
「...契約だな。」
「契約?さっき言ってたやつ?」
マーゴが言っていた、「マーゴと契約して魔法少女になってよ!」という言葉を思い出す宮本。
「関係ない。それは恐らく魔力と一緒に食った何かの記憶だろ。アニメかなんかの。俺が言った“契約”は式神契約のことだ。」
「式神契約?」
またしても聞きなれない単語に困惑する宮本。マーゴは終始置いてけぼり。
「式神の魔力は主に依存する。要は、自分で生み出せない分を人間に作ってもらおうってことだな。」
「なるほど!!」
マーゴの表情が明るくなる。
「じゃあ人間さんと契約します!」
宮本は期待に満ちた表情で有巣を凝視している。一方、有巣は悩んでいた。
(この場で魔力を扱えるのは俺だけだが、戦力的には宮本に持たせたい。寧ろ俺が持つと『 』との噛み合いが絶望的に悪い可能性があるな...)
「マーゴ。」
「はい!何でしょう?」
「お前、能力は?」
次の日。
「生命エネルギー...と便宜的に呼ばれるソレは、人間の生命活動に使用されるエネルギーだ。そして、」
有巣は大型の魔獣を片手で弾き飛ばす。
「能力の行使に使われるのはその残り。魔力も同じく、余剰分の生命エネルギーを練ることによって得られる。」
有巣の横に着地する宮本。
「“練る”?」
「それ以外に形容のしようがない特殊な操作だ。まずは生命エネルギーを自覚するところからだな。」
有巣の身体を包む白いモヤ。
「見えるか?」
「むむむむむ...」
眉間に皺を寄せる宮本。段々白いモヤが見えるようになってくる。
「なんか...白いような...」
「ソレだな。」
能力『会心』の効果による影響で、宮本はエネルギーを知覚しやすくなっている。加えて、
「一般的に、コレは女体の方が多く持つと言われている。」
「なんで?」
片手間で魔獣を弾き飛ばす有巣。
「妊娠の用意があるからだ。自分の身体の中で別の命を支える必要があるから、それ用のエネルギーだな。逆に、妊娠していない時は余剰分になる。」
「そ、そうなんだ...」
反射的に自分の腹を撫でる宮本。
「意識すんな。気色悪い。」
「有巣くんが先に言ったんでしょ!?」
片手間で魔獣を切り裂く有巣。
「私のエネルギー...そんなに多くないかも...」
「いや、そんなこと無いな。」
「でも有巣くんの方が多いじゃん。」
「俺は能力用のエネルギーが多めに必要だからその分だろ。」
有巣の持つエネルギーは宮本のそれと比べるまでもないほど膨大である。
「でっかぁ...」
「“多い”だろ。」
有巣の手が魔力を帯びる。
「密度を高める...だから、圧縮か。とりあえず手に集めてみればいい。」
有巣は手を銃の形にし、魔獣に向けて魔力を発射する。
「こう!」
宮本の手には何も起きない。
「えい!!!」
またしても何も起きない。
「先は長そうだな...」
メガホンを構え、大量の魔獣と相対する綾取廻。
「『死ね』」
魔獣が一斉に倒れる。
「あの量を一発で殺して反動も無し...!?あの女、何者なんだ...?」
一方、綾取はというと、
(有巣くんと一緒に戦いたかったなぁ...)
「これ、お昼ご飯。置いておくからね。」
「そういえば、今日試験なんだぁ。だから...」
「む、無理だよ!今から行かなきゃだから...」
「...それは...ダメ...だよね...わかった...」
走って来る白井響香。
「貴女がギリギリになるなんて珍しいですね。」
「あはは...ちょっとね。」
無堂は違和感を持った。真面目な白井が集合時刻ギリギリに慌てて来たこと、白井は全力で走ったのに息が切れていないこと、そして、首筋の痣。
(昨日はキスマークかと思いましたが...この大きさは流石に違いますよね...?経験が無いのでわかりませんが。)
無堂の脳裏に様々な疑問が浮かぶが、それらを口にする前に号令がかかる。
「今から2次試験を開始します。」
試験官は獣人型で、背の高い女性...
(斑目さん!?)
準備運動をする斑目詩織。
「かかっておいで。5分後に立ってた人が合格ね。」
何を言っているのか理解出来ない者がほとんどである中、奇抜な格好の男が前に出る。
「キミがボクを楽しませてくれるのかい...?」
白塗りの顔にピエロのようなメイク、カラフルな髪と不釣り合いな黒のライダージャケット。男は、日本刀を舐めている。
(あの感じで刀なんだ...)
「いつまでもつかな!!!」
刀が空を切る。次の瞬間、男は膝蹴りをもろに喰らい倒れた。
「次。」
斑目の顔から笑顔が消える。
次から次へと挑戦者が倒れていく。無堂は白井を制止し、様子を見るよう促した。
「闇雲に攻めるから負けるんです。近接で数の有利を取れるのは攻める側が雑兵のみの場合ですから。」
あっという間に受験者は無堂と白井のみになる。
「...あ。やり過ぎた...」
頭の後ろをかく斑目。
「...ま、いいか。」
振り向いた斑目の眼が白井を捉える。
ぎこちなく構える白井。しかし、次の瞬間には腹を殴られ膝をついてしまう。
斑目の顔が眼前まで迫る。ブラフだ、と読んだ無堂は身を捩り、背後からの蹴りを避ける。
「やるね!」
一度に2つ以上の能力を使用することは出来ない。それは無堂の複製能力においても同じである。しかし、常在能力であれば話は変わる。
(『恵体』がコピー出来れば楽なんですけどねぇ...)
しかし、無堂が『恵体』を模倣することは出来ない。何故なら、無堂の能力『模倣』の発動条件は「相手の能力が発動する瞬間を見る」ことであるためだ。『超速再生』のようにカウンター型で発動する能力なら可能だが、『恵体』は常に肉体にかかる能力であるため、理論上は発動の瞬間を見ることが不可能だ。よって、無堂は自身の手札で勝負するしかない。
「『止まれ』」
しかし、曲がりなりにもSクラス。
「なッ...!?」
不自然な体勢で静止した斑目が膝をつく。
「...これは...?」
「綾取さんの能力です。精度は高くありませんが、この程度なら使えます。」
「ハハ!合格!」
斑目が出した条件は“5分後に立っていること”。条件達成までの5分間、何をしていようが関係無い。
そこで、白井が立ち上がった。
「......?」
「舐めないでください...!」
咳き込む白井。一方、斑目は警戒心を剥き出しにしていた。
(私は割と本気で殴った...腹筋の抵抗感も無かったし気を失うと思ったんだけどな...)
そこで、斑目は天道と有巣のことを思い出した。2人も筋肉質な方ではないが、天道は身体適格で、有巣は異常な胆力と根性で立ち上がっていた。
(何事にも例外はある...そういう能力なのか、それとも気概があるのか...)
斑目の心中で、ある思いが首をもたげていた。
「戦うだけ、だよね。」
神器の召喚にエネルギーや特殊な操作は必要ない。故に、余剰分の生命エネルギーが無い斑目であっても神器の召喚は可能である。
「神器召...」
その時、タイマーが鳴った。
「...あ。」
「...じゃあ...2人とも合格。」
「...あぁ...」
気が緩んだ白井が再び膝をつく。
「じゃあ、明日の3次試験は違う場所だから、ちゃんとメールを確認するようにね。」
倒れている他の受験生を避けながら会場を後にする斑目。
「...大丈夫ですか?」
「......大丈夫...じゃないかも...」
おっぷ、といやな音を口から出す白井。
「...白井さん?」
Side:天道穂香
天道「魔獣の数が多いですね...」
返り血に塗れて真っ赤になった天道。
息は切れておらず汗もかいていないが、そろそろ飽きてきたようだ。
天道「......」
喋ってくれません?本編に出せないので...




