18.学級委員とロコモコ丼
Tips:『魔法少女☆キラチャマ!』
毎週日曜の朝10時から放送している女児向けアニメで、『キラチャマ』シリーズの19作目にあたる番組。2024年に放送を開始し、現在も続いている。
主人公の天宮ことりがマスコットの『ニャーすけ』と出会い契約。『キラチャマ』となって、人の負の感情から生まれる『アクダマ』を討伐し街の平和を守るという話。
タイトル通り魔法少女がモチーフであり、主人公の武器は小型のステッキ。「キラッとマジカル!チャマステラ!」という詠唱で変身する。
先述の通り『アクダマ』は人の負の感情から生まれるが、その素体は負の感情を有する人間であり、素体の感情が増幅することで周囲の魔力を吸って『アクダマ』に変身するという過程を踏む。その特性上、素体が負の感情を有するに至った経緯が存在し、作中では喧嘩や誹謗中傷、仕事や学業での失敗によるストレスなどが主な要因となっている。
最新話は、彼氏から日常的に暴力を振るわれている女性が『アクダマ』となった回。当該の回では、天宮ことりが彼氏を説得することで、女性は暴力被害に遭わなくなり解決していた。
「にしても数が多いね...。」
連戦で息も絶え絶えの宮本双葉。
「...はしゃぎ過ぎたな。」
同じく息切れ中の有巣仁理。
現在は、“空亡”の影響で高まった魔力に誘発され大量発生した魔獣の討伐作業中である。作業にはAクラス以上の能力者が選抜され、戦闘経験に乏しい者が戦闘経験豊富な者と共に戦うよう割り当てられている。
なお、有巣のチームでは有巣&宮本以外の4人は全員単独行動である。理由は単純で、連携は得意だが、能力の相性が絶望的であるためだ。
「はぁ...ちょっと休憩。」
「大丈夫?水飲む?」
「ありがとう。」
宮本からペットボトルを受け取り水を飲む有巣。
「間接キスとか気にしないんだね。」
「ん?あー。恥ずかしー。すんごい恥ずかしーなー。」
「あっはは!有巣くん面白いねぇ。」
その時有巣は、目の前に何かが落ちているのに気付いた。
「あ。レジ袋。」
「5円のやつかなぁ。」
「最近の5円タイプはデカいんだなぁ。」
巨大な魔獣が現れ、レジ袋を掴もうと近付く。
「デカい魔獣だねぇ。」
「5円タイプだな。」
その時、レジ袋が少し動く。
「おっと。」
咄嗟に有巣がレジ袋を拾って戻ってくる。標的を失った魔獣の掌はアスファルトを抉った。
拾った物を見る2人。明らかにレジ袋ではない。
「なにこれ?」
「この感じは精霊だな。受肉してるが。」
「受肉?」
宮本がレジ袋もどきを抱き上げる。レジ袋もどきは毛で覆われており、ほんのり温かい。
「魔獣と違って精霊の身体は100%が魔力から出来る上に繁殖もしない。だから普通は一般人に見えないし増えすぎることもない。」
「なるほど。レジ袋に受肉したのかな?」
「ンなわけねぇだろ...」
大型の魔獣が此方を睨んでいる。
「あの魔獣、Sクラスだな。」
「えぇ!?そんなに強いの!?」
有巣は一歩前に出る。
「いや、魔獣のSクラスの最低ラインは人間でいうAクラスぐらいだな。」
魔獣の持つクラスの認定基準は人類への危険度のみである。故に、弱くても知能が高かったり害意が強かったりすればそれだけでクラスが上がる。今回の場合、有巣は身体の大きさから推定した。
「...建物の破壊、許可出たよな。」
頷く宮本。瞬間、有巣の手から青黒い炎が上がる。
「熱式」
左指先の炎を掴み、弓を引くような姿勢で構える。
「『火威』」
大気が膨張する。放射状に広がる蒼炎が街を焼く。
「...あ。」
「...で、区ごと焼いたと。」
「いや、故意ではないから...」
「業務上過失致死ね。はぁ...毎度後始末やらされるこっちの身にもなって欲しいわ。」
「すんません...」
「はぁ...鮫島やっぱブチギレだったなぁ。」
「そりゃあそうでしょ。町1個なくなったんだもん。」
「ギリギリ一個行ってないもん。」
その時、宮本の腕の中の精霊が動いた。
「お。」
「あ。」
「み...水ぅ...」
「おいしいですぅ〜♡」
「すげぇ食うじゃん。」
「健啖だね〜。」
レジ袋サイズの精霊は既に5杯のロコモコ丼を平らげている。果たして5円タイプの何処にその容量があるのか、と有巣と宮本の2人は首を傾げていた。
「こんなに優しくしてくれるなんてもしかして...」
「...もしかして?」
「神さま...ですか?」
予想外の言葉に2人が吹き出す。
「神...神ねぇ。」
「違うよ!私たちは人間だよ!」
「いや天然か。」
「人間さんなんですか!?」
「あぁこっちも天然だった。」
「それでは、何かお礼をさせてくださいませんか?」
「お礼!?」
嬉々とした表情の宮本、しかし対照的に怪訝な表情をする有巣。
「はい!マーゴと契約して魔法少女になって欲しいんです!!」
間。目を見合わせる有巣と宮本。
「...は?」
「ココが一級能力行使免許検定試験の会場ですか。」
大理石で造られた荘厳な建物。その大きな入口の前に、無堂瑞希は立っている。
「...緊張してきましたね。」
その時、
「あれ!瑞希ちゃん!」
振り返るとそこには、ラピスラズリのように綺麗な青い髪を一つに纏めた女性。無堂と同じクラスの白井響香だ。
(あまり仲良くないのに積極的に話し掛けてくれる...陽キャという生き物は凄いですねー...)
「瑞希ちゃんも試験受けに来たの?」
「はい。持っておいた方が良いかなと。」
「へぇ!カッコイイじゃん!」
「...白井さんは?」
「彼氏が取っといた方がいいよって!」
「彼氏...」
自身には縁遠い単語を復唱する無堂。
「あ、もうそろそろ時間ですね。」
「それでは、一級能力免許検定、筆記試験を開始します。」
制限時間が100分のところ、20分ほどペンを走らせて全て解き終わった無堂が息をつく。
(白井さんって彼氏居るんですねぇ...)
右前、出入口の近くに白井の後ろ姿が見える。綺麗に整えられたその髪と服装は、白井の生活水準の高さを物語っている。
にもかかわらず、首筋に小さな痣。
(......キスマーク...なんですかね。見た事ないのでわかりませんが。)
白井は几帳面な人間だ。学級委員に立候補するし、掃除も率先して行う。しかし、決して他人に規範的な行動を強要することは無いため、無堂にとってはあくまで『快い第三者』でしかない。
言わずもがな、白井は美人である。同じ学校の誰かと付き合っているのであればその話が流れるだろうし、白井もそれを隠すようなタイプではない。しかしその話が流れて来ないということは、何か噂が流れない理由があるのだろうか。
(彼氏と一緒に街を歩いている所とか、目撃されそうなものですけどね...)
無堂の脳裏を良からぬ可能性がよぎるが、(杞憂だな)と振り払う。少なくとも、私が考えるべきことではない、と無堂は思考を畳んだ。
試験が終了し、帰路につく2人。
「瑞希ちゃん、上手くいった?」
「私は大丈夫です。勉強の成果が出せました。」
実際は一夜漬けである。
「白井さんはどうですか?」
「私は自信無いなぁ......」
「そんなことないですよ!普段のテストも真面目に頑張ってるじゃないですか!」
(...実際は知りませんけど、多分頑張ってますよね!)
しかし、白井は浮かない顔。
「...頑張ってるけど...あんま点数伸びなくて...」
「...だ、大丈夫ですよ!実技の2次試験からが本番ですし!」
「そう...だよね...」
苦しそうに笑う白井。
白井の苦悩を垣間見て、少し親近感を覚えた無堂だった。
Tips:御三家
能力は親から子へ遺伝する。歴史の長い能力はそれだけ研究されており、長い年月をかけて応用法も確立されている。
特に『御三家』と呼ばれる名門の家系では、相伝の能力の使い方や魔力・霊力の扱い方、武具の扱いに至るまで、様々な知識が受け継がれている。
御三家に属すのは犬神、天道、影山の三家。どの家もAクラス能力者が当主を務めている。




