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あの果てしない空の果て  作者: kai
陽杯教編
17/40

17.二度散る逢魔、二度咲く鏖魔

Tips:『氷の剣士』のプロフィール

・日本、1022~?(1052年に失踪後、記録無し)

・168cm45kg

・白髪をポニーテールに纏めている。記録によれば、「雪のような透き通った白い肌」とのこと。雪女伝説の元ネタという説もある。

・能力:『絶対零度』

現代の基準でAクラスの温度操作能力。温度を下げる方の操作が特に得意で、もし現存していれば氷雪系最強だったのではないかとのいわれもある。

なお、現在は有巣仁理が保有している。

・神器『紫陽花(アジサイ)

氷で出来た刀身を持つ直剣型の神器。

保有する能力は『雨乞(あまごい)』。文字通り、雨を降らす能力である。その強制力は絶大で、乱発すれば砂漠を熱帯雨林に変えることも出来るという説もある。

なお、現在は有巣仁理が保有している。

・好物はポテトサラダ。

切り落とされた右腕を見て、男はある違和感を抱いていた。

(腕が消えない...『呪手』の効果対象じゃ無いのか?それともさっきの推定の通り...)

男の推定が確信に変わり、薄く笑う。

(何かしらの要因で、ヒトリ・アリスは『呪手』を使えない状態にある!!)

一方、有巣仁理はというと。

(『呪手』、綾取に貸したままだったな。勿体無い。)

男が魔力を凝集させ、右腕を再生する。その時、有巣の脳裏をよぎるのは...


「伝説の魔道士?」

グラスを置く音が閑散としたバーに響く。

「魔道士だけではありません。剣士、僧侶、戦士に大泥棒など、世界中にある伝承の中の“理論値”です。」

「...へぇ。」

有巣は何か意味ありげな表情。

「特に、魔道士は今でも存命中とのことです。寿命が長いのか、はたまた彼の能力にそういった効果があるのかは定かではありませんが、彼は全盛期の姿のままこの世に存在しています。」

有巣は再度グラスを傾ける。酒は好きではないため、グラスの中に入っているのは市販のものと同じ炭酸飲料である。

「魔道士の名前は『アスモデウス』。ラストネームは不明。現在はイギリスに籍を置いていて、何かしら良からぬことを企んでいるとか。」


有用な記憶。フラッシュバックとしては最適解に近い。

「『アスモデウス』...」

男の右眉が僅かに動く。

「七つの大罪、色欲を冠する悪魔の名前だ。まるでお前の生き様を表しているかのようだな。」

アスモデウスは舌打ちし、苛立ちを表情に滲み出させる。

「お前は...初めて会った時も同じことを言っていた。」

アスモデウスは、目の前の仇敵を、別の仇敵と重ねていた。

「...お前に言ってんだよ。“氷の剣士”」

有巣が笑う。斑目詩織は弾かれたように有巣の顔を見る。その時突然、有巣は刀を捨てた。

「神器召喚『紫陽花(アジサイ)』」

能力を持った道具の中で、特に神器に指定される基準は「能力の強さ」でも「耐久力の高さ」でもなく、「召喚出来ること」である。

詠唱は“神器召喚”と神器名の組み合わせ。無論、『呪手』もこの効果を持っているが、有巣と綾取の口約束により一時的に所有権が移っているため有巣は召喚不可能な状態にある。

神器『紫陽花』は氷の能力を持った直剣である。別段、有巣の能力と相性が良い訳ではない。

しかし、

「それは...氷の剣士の!!」

アスモデウスの顔が歪む。有巣はアスモデウスに切先を向け、口を開く。

「『氷の剣士』。ローマ帝国と平安の日本にある最強の女剣士の伝承だったか。」

『紫陽花』が天高く振り上げられる。

「名も無き最強の剣士が、何も為す術が無い時、最後に選んだ戦法は何だったと思う。」

魔力が高まる。その威圧感に、アスモデウスは思わず後ずさりする。

「お前が舐めちゃいけない相手だということはわかった。故に俺は、お前を此処で殺す。」

魔力が切先に凝集する。それと呼応するように、空中には尖った氷の塊が出現する。

「異論は無いな?」

「やめろ...やめろ!やめてくれ!!死にたくない!!」

剣が振り下ろされる。氷の塊は、無慈悲にもアスモデウスの身体を蜂の巣にした。

少し遅れて、アスモデウスの頭が砕かれる。

数秒後、アスモデウスの肉体が黒い煙となって霧散した。その様子を見て、有巣はある可能性に思い至る。

「...悪魔か。」

「悪魔?」

すっかり気の緩んだ宮本双葉が首を傾げる。

「契約印をリス地にでもしてんだろ。一旦死んで復活出来るように。」

「なるほど。」



「首尾は。」

「思わしくありません。もう撤退指示を出した方が良いかと。」

銃声。白装束に赤いシミが広がる。撃ったのは、黒い金属の仮面の2人組。

「もうちょいやると思ったんだけどなぁ。」

「こんな腑抜けだらけの宗教団体なんだから無理に決まってんだろ。」

「もうフヌケ超えてマヌケだな。」

2人が扉を開けると、その先には大柄な男が立っている。

「柊さーん。終わりましたー?」

「あぁ。ありがとう2人とも。お陰で手間が省けたよ。」

その時、正面のステンドグラスに印刷された紋様が光り始めた。

「おっと。」

魔力が高まる。紋様から飛び出したのは、白髪に白いローブの男。アスモデウスだ。

「クッソ...!!」

アスモデウスは床に這いつくばったまま舌打ちする。

「おやおや。誰かと思えばアスモデウスくんだね。有巣くんにやられたのかな?」

アスモデウスは顔を顰めて柊の顔を見上げる。

金属製の口元は、不気味な笑みを浮かべていた。



『昨日家宅捜索された宗教施設は既に襲撃を受けており...』

「わぁ、ひっでぇ。」

「どうせ柊でしょう。」

アジトでテレビを観る一同。陽杯教の構成員が内乱罪で一斉検挙されたというニュースが報道されている。

『なお、本部の一室には謎のシンボルが描かれており、警察は事件との関連性を調査中とのことです。』

「あ。」

「アレって確か悪魔の召喚印だよね?」

綾取の問いかけに、有巣は頷く。

「アスモデウス殺されたのかぁ。可哀想に。」

「これも柊?」

「どうせ柊でしょう。」

「瑞希ちゃんがどうせ柊botになってる...」

天道穂香がポテチの袋を開ける。力を入れすぎて中身が飛び散ってしまったようだ。

「舵原くんと舞香ちゃんはどれくらいで復帰するの?」

斑目が質問するが、有巣は苦そうな顔。

「舵原はすぐだろうが、天道姉はわからないな。」

天道舞香は現在、実家で療養中である。症状は、重度の鬱と軽度の統合失調症。幻覚により身内以外を認識出来ない状態にあるらしい。

一方で、天道穂香は口いっぱいにポテチを頬張っている。

「...呑気だね......」

「ふぇ?」



黒い塊が蠢いている。

部屋の隅から、窓の外から、そして、人の顔から、黒いモヤが漏れ出している。

「オカァさああアアアあぁぁん」

「アそぼ、あそぼ、」

「ギーがががががガガ」

およそ人のものではない声。誰も信用出来ない、誰も信用してくれない。

「ハハハ。ボクと一緒になろう。舞香ちゃん。」

「...嫌。」

「ハハハ。」

角の痛みに顔を顰める。どれだけ耐えれば終わるのだろうか、と絶望する天道舞香。

その時、扉がノックされる。

「...誰。」

扉の向こうから物音はしない。

音もなく、扉が開かれる。

「おやおや、ここに居ましたか。」

セーラー服を着たショートボブの少女。顔に黒いモヤはかかっていない。しかし、その真っ黒な瞳と薄ら笑いは、彼女が人間でない可能性を示唆している。

「...誰?」

一瞬、部屋の中に沈黙が流れる。

考えた後、少女は口を開く。

「有巣仁理。貴女が良く知ってる有巣仁理です。」

少女の顔から薄ら笑いは消えている。

「...え?」

瞬間、部屋から黒いモヤが消える。同時に、少女の姿も無くなっていた。

目を丸くしたまま、天道舞香は状況が飲み込めずにいた。

有巣から電話がかかって来たのは、それから数秒後のことだった。

Tips:陽杯教の計画

目的は「偽物の太陽の排除」。つまり、天道穂香の謀殺。

佐藤ヒロシの能力『夢見る者』で有巣仁理を足止めし、その隙に“空亡”もとい「Sクラス霊体型神格基盤」を使用して神格実体を生成し、天道穂香を殺害するつもりだった。しかし、神格実体の素体となるアスモデウスの到着より早く有巣仁理が佐藤ヒロシを攻略し、あろうことか神化したため基盤が破壊され計画は頓挫。本部を柊黒彦の一派に襲撃され、残った非能力者の構成員が全員検挙されたため解体を余儀なくされた。

・魔法省からの通達

この一件を受け、悪魔の契約印に関する禁止事項を追加しました。

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