表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの果てしない空の果て  作者: kai
陽杯教編
14/16

14.画竜戴天②

Q.『呪手』の強みは?

有巣「奪った手の能力が使えることだな。同時に2個までしか使えないし自分の腕じゃなくなったら自分の能力は使えなくなるけど。」

無堂「某仮面ライダーみたいに最強コンボとかあるんですか?」

有巣「普通に強い能力を2個重ねがけするのが強いかなぁ。そもそも2つ以上の能力を同時に使えるのが強い。」

無堂「あー、私の『摸倣』でも常在能力以外の2個同時は無理なので羨ましいです。」

有巣「『摸倣』と違う点は入手難易度かな。本体の腕を再生されると奪った手に結び付いた能力が消えるから、再生持ちは腕を奪った上で殺さなきゃいけない。上位層の再生早いヤツらは尚更。」

無堂「案外バランス取れてるんですね。」

有巣「いや取れてないぞ。そもそも外付けだしストック引き継ぎだから。」

無堂「天道さんのお姉さんに渡したら最強じゃないですか?」

有巣「ハハ、気付いたか。俺がストック集めてほぼ不死身の天道姉に使わせる最強コンボに。」

無堂「...まさか、私の腕を奪ったらストックごと使えたり...?」

有巣「...やってみる?」

周囲に遮蔽物が一切無い平原。中空に浮かんでいる白い十字架を凝視し、口元に満面の笑みを浮かべた有巣仁理は仁王立ちしている。

有巣の正面、十字架を挟んだ対角線上のかなり離れた位置では、白装束の少年が両手をかざし、こめかみに青筋を浮かべて踏ん張っている。

「有巣仁理だ!!Sクラスの有巣仁理だ!!多分能力は直接能力を無効化するものじゃない!!だから僕でも止められてるんだ!!!」

その時、少年の横を体格の良い白装束の男が走り抜けてくる。

重圧で有巣の足下が大きく凹む。直後に、有巣は十字架に両手をかざす。

「くっそ...!押し返される!!」

十字架にヒビが入る。少年の鼻から血が噴き出す。ヒビを見た男が一瞬立ち止まり、少年の方を見る。

「早くやってくれ!!このままじゃマズい!!有巣仁理を通したら計画は台無しになる!!“空亡”もろともやられる!!!」

歯ぎしりし、再び走り出した男は、ギリギリ原型を保っている十字架の前で大きく身を屈める。

「そうなる前に!!」

雑草と砂煙を上げ、男が大きく飛び上がる。

「今!!!ここで!!!」

男が能力発動の構えをとると、空中に巨大な火球が出現する。

「灼き尽くしてくれ!!!!」

十字架が割れ、少年が頭から大量の血を噴き出しながら倒れるのと同時に火球が膨張する。そして、火球ご有巣の眼前まで迫ったその時、


「二層解放。」


周囲から音が消える。

火球が押し潰されて歪み、破裂音と共に霧散する。


有巣の背後で白い手が寄り合わさり、葉のない木のようなものが出来上がる。


「『無影廻廊(むえいかいろう)』。」


空が黒塗られ、満天の星空が出現する。


能力結界に曝露し、白装束の男と少年の肉体は形を維持できず、粘性を伴った液状になって平原の地面に飛散した。

「意外と楽しめたな。」

結界を解くと、周囲は昼間に戻る。

原型を失った白装束が再び動き出さないことを確認し、有巣は太陽光の心許ない寒空に消えた。

空を覆う黒い太陽は、地上を嘲笑うかのように、不気味に蠢いていた。



綾取廻は苦戦を強いられていた。

首には黒いチョーカー、神器『呪手』を装着している。しかし、能力を使わず『草薙剣』である薙刀を振り回している。

理由は、相手が“炎藤乾太”であるためである。彼の能力『獄炎』の第二層効果である「能力発動の無効化」が彼の炎に近付く度に機能するため、綾取の能力が発動せず苦戦を強いられているのである。

(困ったな。炎でまともに近付けないから『草薙剣』の無効化が届かない上に、私の『支配』も効かないとは。)

綾取は、“炎藤乾太”の腕、肘の下辺りにある縫い目を見る。

(『呪手』に収容されていた炎藤くんの腕...本体は跡形も無いのに、何故今になって自律行動を...?)

綾取のコートの裾に引火したため、すぐさま薙刀で該当部を切り落とす。暑さのせいか焦りのせいか、綾取は初めて冷や汗をかいている。

(圧倒的な実力差は無い...こんな相手は初めてだね。)

幾度となく繰り返される激しい攻防。次第に、綾取の笑みは質感を伴っていく。

(今、私は戦いが楽しいと感じている!)

炎が頬を掠める。火傷は無いが、綾取は『支配』が完全に焼き切れるのを感じた。

能力者の能力発動が何かしらの理由によって阻害される際、どれだけ実力差があっても一瞬だけ能力の“押し合い”が発生する。基本的には、相手と自分の能力発動が天秤に掛かり、より強度の低い方が強度の高い方に塗り潰される際、僅かながら抵抗の余地があるのだ。

裏を返せば、抵抗の際に能力が脳のリソースを持っていくことになる。故に、一瞬、一刹那だけ、思考に空白が生まれる。

熟達したSクラス同士の戦闘。片方は本人の脳ではないが、度重なる能力発動と第二層突入により、“炎藤乾太”のボルテージは最高潮に達している。

綾取の顔面を青い炎が捉える刹那。

「“穿水(せんすい)”!!」

高密度の水の槍が“炎藤乾太”の手を砕く。

発射したのは無堂瑞希。彼女の周囲には、小さな水の球が浮遊している。

「無堂ちゃん。来てくれてありがとう。」

「い、いえ...大丈夫ですか...?」

「うん。お陰様で。」

目を細め微笑みかける綾取。一方で無堂は恥ずかしげに頬をかく。

煙を発しながら立ち上がる“炎藤乾太”。しかし、砕かれた右手は再生していない。

「水の能力...我らが主の敵...」

“炎藤乾太”が発した声が本人とは違うものであることに綾取は気付く。

「『貴方、誰?』」

一応、『支配』を発動させる綾取だが、返答は無い。

「ダメか。」

「アレ、誰なんです?」

事情を知らない無堂は綾取に尋ねる。

「つい3日前ぐらいに有巣くんが殺した炎藤乾太の偽物だよ。」

「へぇ。随分と悠長な方が偽物をしていらっしゃるんですね。」

会話中に襲ってこないことを無堂が毒突く。しかし、“炎藤乾太”の頭が震え始めたのを見て、2人は身動ぐ。

「来る...!」

「我らがある...ある、ある、アルアルアるアルアルあるあるアル」

その時、“炎藤乾太”の雰囲気は先程までとはうってかわり、頭に手を当てて僅かに笑う。

「...させねぇよ。」

綾取と目が合う。炎藤の目は、彼の意思の硬さを物語っている。一方、瞬時に状況を理解出来た2人は、臨戦態勢を解除する。

「...ふふ。強いね、君は。」

「...流石ですね。」

瞬間、“炎藤乾太”の頭が燃え上がる。

腕を含めた全身が燃え尽きるまでのたうち回る“炎藤乾太”だったが、左腕だけはずっと彼の首を抑え続けていた。



鋭い音を立てながら白い煙を吐く天道穂香。今回は周囲の建物への被害が無い。

その時、天道の右側の建物が大きく歪む。

ドッ、という鈍い音と共に現れたのは有巣仁理。

「無事か。」

「はい、何とか... 」

勝つこと自体は余裕である。ただ、有巣が心配したのは天道であり、天道が懸念したのは周囲の建物である。

直後、無堂と綾取が左側の建物の屋上から飛び降りてくる。

「...まぁ、みんな余裕ですよね。」

その時、

「あ!!!!!」

「声でっか...」

「リボルバーが落ちてる...」

「はぁ!?」

有巣が拾い上げたのは、警察官がよく携帯しているリボルバー銃。

「何でこんな所に...?」

首を傾げる無堂。有巣は慣れた手つきで弾倉を開くが、中に銃弾は無い。

「暴発したか、或いは弾が元々入ってなかったか...何にせよ、銃本体を持ち歩くようなヤツがそばに居たってことだろうな。」

有巣の言葉に、無堂が再度首を傾げる。

「...つまり?」

沈黙する有巣。

「分からないんですね。」

「...うん。」

沈黙。4人の間に何とも言えない空気が流れる。

数秒経過。しかし、何も喋らない4人。

「...これさ。」

「...はい。」

「“4人が完全に沈黙したその時!”のパターンじゃねぇの。」

「知りませんよ。ねぇ、綾取さん。」

急に話を振られた綾取。しかし、彼女は先程から一点を凝視している。

「...何か...来たみたいだね。」

俺はさすらいのガンマン、佐藤ヒロシ。

無堂「何か始まりましたね。」

有巣「地の文が俺らに聞こえるパターンってあるんだ。」

無堂「メタいですよ。」

綾取「鉤括弧の隣に名前も出てるね。」

無堂「いや...だから...」

さっきからうるさいぞ!!

無堂「あぁ...ほら...」

俺はAクラス能力者だ。能力が何なのかは分からないが...Aクラスってことはそれなりに強いんだろう。

無堂「何を根拠に。」

有巣「ぶっちゃけAクラスは舵原ですら微妙なんだよな。」

無堂「Sクラスが規格外なだけですよ〜。」

それにしても何なんだこの4人...いやうるさいのは2人か。

有巣「そんなご無体な。」

無堂「貴方がうるさいのはいつものことでしょう。」

何にせよ、俺の重で全員ぶち抜いてくれる!!

無堂「誤字ってますよ〜。」

有巣「...ん?銃無くね?」

...あれ、銃が無い...ドコだ?

無堂「あんま片仮名で“ドコ”って書く人居ませんけどね。」

さっきまであったはず!!アレがあれば俺は...

「うるせーーーーーっ!!!!!」

「へぶしっ!!!」

「殴ったあああああ!?!?!?」

とんでもない距離を弾き飛ばされる佐藤。

「お、元に戻ったみたいだね。」

綾取は薙刀を振り、無堂は刀を握り直し、天道は指の関節を鳴らし、有巣は首を鳴らす。

「やっぱ“でんじー”式のツッコミは無理矢理やれるから強いな。」

「あんま“でんじゃらすじーさん”を“でんじー”って略す人居ないんですよ。」

その時、佐藤が立ち上がり、帽子を被り直す。

「お前ら!何をした!!」

唾を撒き散らしながら叫ぶ佐藤。

「何って...ツッコミだよ。」

「ボケにはツッコミ。お笑いの常識だよね。」

前へ出る有巣と綾取。2人の気迫に、佐藤はたじろぐ。

「あーあ、完全にその気にしましたね。」

「南無南無...」

完全に他人事な無堂と天道。対照的に、有巣と綾取は満面の笑みを浮かべている。

「面白そうな能力だなぁ...!」

「現実改変かな?人の脳内に直接語りかけるなんて便利だね。」

「いや...いやだ!!やめてくれ!!来ないでくれ!!!」

寒空に響いた汚い叫び声は、大通りに虚しく吸われていくのであった。

Tips:第二層

松果体に本体を置く能力には“第二層”が存在する。

第二層に至る方法は3つ。1つ目は、有巣仁理のように順当に能力を成長させ第二層に至る方法。2つ目は、無堂瑞希のように能力を司る部位に規定量以上のエネルギーを流す「能力過運転状態(オーバードライブ)」を利用して無理矢理第二層に至る方法。そして3つ目は「神化(しんか)」である。

第二層の効果は能力に依存する。大抵は、能力対象の拡張や条件の撤廃、出力の増加など、能力効果の強化が主である。

なお、第二層に至った能力者の数は正確に把握されていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ