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あの果てしない空の果て  作者: kai
陽杯教編
12/13

12.付和雷同

内閣より通達された内容(一部抜粋)

・先の事件を受け、綾取廻および彼女の能力である『支配』をSクラスに指定する。

・炎藤乾太の死亡に関与した有巣仁理、天道穂香両名への聴取の結果、周辺の建造物の破壊および大規模な火災に悪質性は無いことが確認されたため、有巣仁理の提案である「三星会の助力による復興」を承諾。当該の地区住民への今後の対応については、三星会から追って連絡される。

・事件関係者の証言により、Sクラス能力者であり国際指名手配されている柊黒彦の戦力が増強されている可能性が高いことが判明したため、主要七カ国を含む複数国家へ通達。また、この件を受け、本格的な捜査と逮捕の協力を要請。加えて、現在日本に在住しているSクラス能力者4名にも協力を要請する。捕縛の際の生死は問わない。なお、2025年12月22日現在、柊黒彦の最新の目撃証言は2021年2月6日に有巣仁理が接敵した際のものである。


内閣総理大臣のインタビューより抜粋

「現在、柊黒彦を除いた4人のSクラス能力者全員が我々に友好的なのは正に奇跡のような状態です。彼らの好意を無下にしないよう、より良い国を目指し、働いて働いて働いてまいります。」

天道穂香は苦悶していた。

「こう...何だろう...こう...そうだな...温かい...液体?みたいな...」

有巣仁理の教え方が絶望的に下手なのである。

「...ね。」

ね。と言われても...と天道は苦笑する。

「...そもそも、『核融合』のエネルギーで攻撃も防御も回復も強化も出来るし必要ないのでは?」

数秒の沈黙。

「...確かに。」


ここは有巣仁理が持っているアジト。

そして、無堂瑞希と天道穂香が通う学校は今日から冬休み。ウキウキの天道に対し、無堂はというと...

「はぁ〜〜〜〜〜〜...」

ドン、と机に伏す無堂。

「何ですか。何なんですか。みんな浮かれて。」

そう、何を隠そう今日はクリスマスイブ。街には浮かれ散らかしたカップルが溢れ散らかしてイチャつき散らかしているのだ。

「そりゃあ?私だって?本気を出せば?彼氏の一人や二人くらい?」

その時、無堂は地下室から上がってきた有巣と天道を見付けた。

「いいですよね〜有巣さんは。」

「何が?」

景気の良い音を響かせて開くコーラのペットボトル。有巣は専らカロリーゼロのものを好む。

「そういう欲とか無さそうで。」

首を傾げる有巣に、綾取がソファに座るよう促す。

その後、綾取はテーブルに山盛りの唐揚げを置いた。

「おぉ〜凄い量。」

感心する有巣。天道は箸を構え、待ちきれない様子である。

「召し上がれ〜。」

白米を持った茶碗を配り終えた綾取が言うと、凄まじい速度で天道が唐揚げを食べ進め始めた。

市販されているレモン果汁をかけながら、無堂は質問を投げかける。

「皆さんはレモンかける派ですか?」

米を咀嚼し飲み込む綾取。

「私はかけないかな。」

並んでいるソース類を何もかけずそのまま唐揚げを口にする有巣。

「日による。というか正味(しょうみ)、唐揚げは何でもいい。」

そして、ノータイムで唐揚げを頬張りながら首を横に振る天道。

「三者三様ですね。かけない派にも微妙に理由が違って面白いです。」

そう言い、無堂も唐揚げを頬張る。サクッ、と景気の良い音がして、口の中に広がるサラサラな油に、無堂は舌鼓をうつ。

「多分、今する話じゃないんだけどね。」

次に口を開いたのは綾取。

「みんな、腕が切れても戦闘を続行できる?」

「よりによって肉を食べてる時に訊きますか、それ。」

ドン引きする無堂。

「私の場合は刀主体で戦うので、両腕が切られたら無理ですね。片方ならバランスは悪いですが何とか。」

と無堂。

「できまふよ。」

と唐揚げを頬張ったままの天道。

そして有巣は、

「遠隔主体だから対して変わんねぇな。」

「遠隔主体!?」

思わず無堂が大声を出す。流石の綾取も驚きを隠せず、勢いよく有巣の方を向く。

有巣はこれ以上何も言わない。いつものことなので他3人も特に気に留めず、再び唐揚げに向き直った。

「......痛みで止まる人は居ないんだね。」

「まぁ、Sクラスは大抵頭おかしいので...」

その後、唐揚げを食べ終えた4人は後片付けを始める。

「お皿は私が洗っておくよ。」

「いや、俺も手伝おう。」

キッチンに向かう綾取と有巣。一方で、無堂はスマホを開く。

「...あ。ちょっと出掛けますね。」

「何処に行くの?」

綾取の声掛けに、無堂は「あー...」と歯切れの悪い様子。

「えーと...ゲーセンに......」

袖を捲りながら怪訝そうな顔をする綾取を尻目に、無堂は財布とスマホだけを持ってアジトを後にした。

その様子を見て、有巣は呆れ顔。

「...ありゃパチだな。」

「......無堂ちゃんって未成年だよね...?」

親友の犯罪行為を意に介さず棚から大きな棒付きキャンディを引きずり出した天道。有巣も平然と皿洗いに戻る。

「...え、私がおかしい...?」

その時、インターホンが鳴った。

「はーい。」

「いや、待て。俺が行く」

綾取を制止し玄関に向かう有巣。

無警戒に扉を開けると、扉の先を認識するより僅かに早く、有巣は脇腹に刺すような痛みを感じた。

「...ん?」

ゆっくりと腹を見下ろす有巣。生温かい血が流れるのを感じながら...ん?流れる?

「...これは......ハハ。参ったな。」

血液操作が効かない。押し黙る有巣の様子に違和感を覚え、綾取が近寄ろうとする。

「来るな!!」

天道が臨戦態勢に入る。

有巣の推定によると、脇腹に刺さったのは、切先が銀で出来たアイスピックである。次に、有巣は目の前の人の姿を見る。

目元だけを出した白装束。指先まで白い手袋で覆っており、見ただけでは性別すら判断出来ない。

数分ほどの沈黙。何となく気まずい空気になってきたと感じ、有巣が口を開く。

「......銀の製品が吸血鬼病患者の弱点になるのは、彼らの血中に微量の硫黄が含まれるからだ。」

白装束の手首を強く掴み、有巣は続ける。

「要は、銀が硫黄と反応することで血中成分が変化し、生命維持が困難になるわけだ。しかし、ただの銀ではそうはならない。吸血鬼病患者の弱点になるのは特殊な銀。」

白装束は身動ぎもしない。割と余裕そうに話す有巣の声を聞き、天道と綾取が警戒を解く。

「“祈りを受けた銀”とも称されるな。要は、エネルギー...性質的に“魔力”と呼ばれるソレを含蓄させ反応を加速させるんだ。...ちょうど、」

有巣は、白装束の手首を掴む手に魔力を込める。

「こんな風に。」

バキッ、と重い音。

「ぐゥ...ッ...!?」

白装束は思わずアイスピックを離してしまう。それもそのはずで、白装束の右手首は握り潰され、先程の3分の1程度の太さになっている。

アイスピックを引き抜く有巣。

「能力が使えねぇな。どういう小細工だ?」

「...クッソ。」

低い声で悪態をつく白装束は、すぐさま向きを変え逃げようとする。

「『止まれ』。」

綾取の『支配』が発動するが、白装束には通用せず走り出してしまった。

すぐに表に出る3人。有巣の脇腹の流血が痛々しい。

「有巣くん。中に入って。」

「片腕失って戦闘続行出来るヤツがこの程度で止まるわけないだろ。」

クラウチングスタートの姿勢をとる有巣。直後、軽快な破裂音と共に、白装束を抱えた有巣が戻ってきた。

「クッソ...バケモンかよ...!」

Sクラス能力者3人を前に、悪態をつくことしか出来ない白装束の男であった。

Tips:みんなが食べた唐揚げの個数は?

有巣仁理:7個

無堂瑞希:4個

天道穂香:24個

綾取廻:5個

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