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赤王の残り香  作者: やう
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 ノックの後、ウエイターが入ってきて、軽い食事を提供する。

 子羊の赤ワイン煮込みだ。バゲットもついている。

「おお〜」

 ヒオウが緊張感なく歓声を上げた。

 ウエイターが去ったのを見届けて、今度はリュエーヌが口を開いた。

「その、ヒオウが怪しまれる理由、というのは一体何なのでしょう」

 バートンは柔らかく煮込まれた子羊を口に入れて噛み締める。すぐに崩れた肉を飲み込む。

「髪と瞳の色、ですか」

 それまで黙って成り行きを見守っていたゼアンが口を開いた。バートンはゼアンに、微かに労わるような眼差しを向ける。それにゼアンが緩く微笑んで、首を振った。

 ヒオウの髪は煮出しすぎて渋くなった茶のような色で、瞳は陽に照らされて輝く麦畑のような黄金色だ。

 バートンはゼアンの言葉を引き継いだ。

「茶髪に金眼というのが、この国での王族の象徴のようなものだ。それは「シュ王国」であった時から唯一続く、慣習だな」

 つまり、リュウホウも茶髪に金眼であったのだろう。

「へえ。偶然ですね」

 ヒオウの言葉は素っ気ない。温度をまるで含まない声音だった。

「つまり、あの騎士は勘違いでヒオウを連れて行こうとしたわけですね」

 リュエーヌが簡単にまとめると、ゼアンとバートンは申し訳なさそうな顔をして項垂れた。

「すまない……」

「リュエーヌ、私はもういいよ。理由も知れたし」

 ヒオウがそう言うと、リュエーヌは頷いた。

「こうして謝罪も受け取りましたし、あなた方の言葉と行動は過分なほど誠実でした。ヒオウもこう言っておりますし、もう結構ですわ」

 その言葉に全員がホッと息を吐いた。

 それからは運ばれてくる料理を食べ、短い時間で会食は終了した。

「それでは、ご実家まで送って行こう」

 建物の外に出た際に、バートンが申し出た。

「ありがたいことですが、私とヒオウは家の方向が違いますので、お二方のご迷惑になるのでは…」

「私は庶民ですし、一人で帰れます。リュエーヌを送ってあげてください」

 リュエーヌが遠慮すると、ヒオウもそうした。しかし騎士としては送らないことなどできない。

「それでは、私はリュエーヌ嬢をお送りしましょう。オクスネルはヒオウ嬢を」

「心得ました」

 そうして再び断るヒオウを押し切って、二手に分かれて帰路へついた。



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