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赤王の残り香  作者: やう
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「先日から、騎士には王命が出ている。『大罪人の血筋の者を捉えよ』と」

 それの意図するところがわからなかったのだろう。リュエーヌもヒオウも首を傾げている。

「ヒオウ、と言ったか。貴殿に不敬を働いた騎士だが、おそらくはその王命が関係している」

「……はあ」

 ヒオウが気の抜けた返事を返す。

「オクスネルにも話していなかったが、騎士団長と私には詳細が伝えられていてな。大罪人とは、前王の血筋の者を指すと」

「「前王、ですか?」」

 そこでリュエーヌとゼアンの言葉が重なり、ヒオウは息を呑んだ。

「200年ほど前まで、この国を統べていた王族のことは、知っているか?」

 バートンはヒオウに向かって訪ねた。庶民のヒオウの学の程度を慮ってのことだ。

「……少しだけなら知っています。でも、教えてもらっていいですか?」

 バートンは頷いて、コンフォーレ王国の歴史について語り始めた。

 その当時、この国は「シュ王国」と呼ばれていた。

 最後の王族、(劉峰)リュウホウ・シュは賢王だったとされているが、ある時を境に暴君に成り果て、国を乱した。荒れた国には他国に攻め込まれて滅びるか、自滅するかの二つの道しかなかったのだという。

 そんな時、「シュ王国」を救うべく立ち上がったのが、サイエン・コンフォーレという文官だったという。

 サイエン・コンフォーレは仲間と共に革命を起こしてリュウホウ・シュを討ち、新しい国として「コンフォーレ王国」を建国、優秀な文官であったため自らの力で国を建て直し、今に至る。

「シュ一族はその際、暴君であったリュウホウからその伴侶、そして親族、親戚に至るまで全員が処刑されたと聞く。その際に発した王命が『シュ一族の血筋を絶やせ』というものだ」

「…そこまで根絶やしにする必要があったのですか?」

 ヒオウから疑問の声が上がる。

「リュウホウは暴君となってからの10年間で国の人口を10/1ほど減らしてしまったそうだ。貧富の差が開き、王に逆らう者は容赦なく処刑した。だから今では彼の王はセキオウと呼ばれているな。当時の言葉で、赤の王、血の王という意味だ」

「しかし、何故今になってその前王の血筋を絶やせなんて命令が出るのですか?」

 ゼアンも不可解な顔をしてバートンに問う。

「確かなことは私にもわかっていない。件の騎士が、団長と私にしか告げられていないこの命令の仔細を何故把握していたのかも今後の調査結果を待つ形になる。全く違う要件で呼び止めたのかもしれないが。しかし、ヒオウ、貴殿が怪しまれた理由なら察せられる」

 バートンはそこで一度口を噤んだ。



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