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僕は、君の人生という物語を彩ることができましたか?
君は、僕と過ごしてきたこれまでをいい思い出として残せましたか?
あぁ、もし願わくばもう一度、今日のような綺麗な満月だったあの日の夜に、僕達が幸せだったあの日々に戻りたい。
いや、過去には戻れない。この世界はそんなに都合のいい造りなんてしていないのだから。
ならばせめて、次もまた君のそばへ……
私は、貴方という存在に彩られて、とても鮮やかな物語を過ごせました。
私は、貴方と過ごしてきたこれまでの日々は楽しい、いい宝物になりました。
あぁ、もし叶うならもう一度始めから、今日の儚い三日月が照らしていたあの日から楽しい日々を送りたい。
けれど、人は過去には戻れない。世界は私達に都合良くはできていないのだから。
ならばせめて、次もまた貴方とともに……
不思議な夢を見た。
それはあまりにも鮮明で、誰かの記憶を覗き見しているかのような、そんな夢を見た。
そんな荒唐無稽な話だけど、不思議と僕には、これがただの夢だとは思えなくて。
この体験を誰かに共有したくて。
僕は支度もほどほどに家を飛び出した。
目的地もなく、ただただ走り続けた。共有できる相手もいないから。
どれだけ走ってたんだろう。気がつけば見覚えのない風景が広がっていた。
僕が住んでる街にこんなところがあったなんて。
それよりもまずは切れた息を整えよう。と、深呼吸をする。
「気持ちいいな、ここの空気は」
そう1人呟いた。
1人だと思っていたから呟いた。だけど、ここにいるのは僕だけじゃなかったみたいだ。
「……あっ」
小さく声を上げたのは、僕と同じくらいの年齢に見える女の子。
可愛らしい女の子がいつの間にか後ろにいた。
普段なら僕は声なんてかけることはしないけど、今日は夜に見た夢の話を誰でもいいからしたくって。話しかけてみることにした。
「あの!」
「は、はい」
「突然話しかけてごめんなさい。でも、どうしても今日見た夢の話を誰かに話したくて。嫌じゃなければ聞いてもらえませんか?」
ヘタレな自分が全面に出た。恥ずかしい。そんな中、女の子はというと
「……私でよければ?」
当たり前だけど少し疑いの目を向けてきていた。とはいえ、聞いてもらえるとなれば今さらそんなことは関係ない。
気を取り直して、今日見た不思議な夢の話をする。
「……と、いうわけなんだ。これが全く知らない誰かの記憶なのか、僕の将来を見ているのかはわからないけれど、少なくともただの夢だって切り捨てるには鮮明な物語だったんだ」
柄にもなく熱く語ってしまったことに後から恥ずかしさを覚えたけど、さっきまで疑いの目を向けていた女の子は、なぜだろう、真剣に僕の話に向き合ってくれた。
「もしかすると」
「もしかすると?」
「それは貴方の前世の記憶、なのかもしれませんね?」
「……なるほど!僕は平行した別の誰かか未来の話だと思っていたけど、よく考えてみれば僕の前世の記憶だとする方が無難だ」
「そうですね。そうだとするなら、また巡り逢えるといいですね」
「だね!どんな人なんだろう」
そんな話をしているうちに、周りも暗くなり始めてきた。
女の子はこの辺りの子だというので、ここでお別れになる。
連絡先を聞きたかったのに、そんな勇気のない僕は、帰っていく女の子を見送ることしかできなかった。
だけど、なぜだかあの女の子にはまた会える気がしていた。
同じ夢を見ていた。
同じ夢を見た相手と出会った。
彼は、記憶があやふやだったみたいだけど、私にはわかった。
彼があの人だと。
彼がどこの誰かすらも今はまだわからないけれど、また貴方と出会う気がしている。
そしてまた、新しい物語を紡いでいきたい。
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