02 戦士ふたり
『地球人のみなさん。ついにこのときがやってきました。ポテトニアンと地球人による運命のP・Dです。この日のために我々は適性者を集め、備えてきました。最強のポテトデュエリスト、ヤマト・ナガイ。彼こそが地球最後の希望なのです! 地球側の実況は私、湖池と、解説の菊水教授でお送りいたします』
古代のコロッセオによく似た闘技場に、大きな藁かごを背負った少年が立っている。
長井ヤマト。埼玉は川越にあるイモ農家の一人息子である。十五歳。彼女なし。
研究チームは、P・Dには適性が存在し、それは単純に強さへと直結することを発見する。その適性とは、「イモへの愛と信頼」。ヤマトは地球一イモを愛し、信頼していた少年だった。
『親愛なる地球の諸君。ポテトニアンの実況マックである。それでは我々の戦士を紹介しよう。アキラ・キタ!!』
ヤマトの対面から一人の少年が歩いてくる。歳の頃は同じくらいか。黄金色の髪と瞳。端正な顔を隠すように、野球帽のようなキャップを目深に被っている。
「やあ、はじめまして地球の人」
アキラは両手を広げ、慇懃に頭を下げた。
「ボクはアキラ。ポテトニアン最強の戦士さ」
「ヤマトだ」
ヤマトは緊張がにじむ表情と声で相対した。アキラはヤマトへ歩み寄り、大仰に右手を差し出した。農作業で鍛えられたゴツゴツとしたヤマトとは違う、繊細な一回り小さな手。
「よろしく」
ヤマトは躊躇いながらも握手を受ける。帽子の奥から鋭い眼光がヤマトを射抜いた。アキラはニヤリと笑い、小さく囁くように言った。
「すぐに終わらせてやるよ」
冷たい声だった。
ヤマトが言い返すよりも先にアキラは踵を返す。
戦いの幕があがる。