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三題噺もどき2

朝の予感

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくさんじゅう。

 


「……ふぁ…」

 漏れるあくびをかみしめようとして、失敗する。

 まぁ、別に聞いている人が居るわけでもないし。何が悪いと言うわけでもないので、気にすること自体がおかしいのだが。

「……」

 それはもう、癖というかなんといか……。

 物心ついたころから、周りを気にして動くことが当たり前になっていた弊害というか…。

 いないと気持ちでは分かっていても、気にはしてしまうんだよなぁ。

 自意識過剰と言われたら何も言えないが。

「……」

 まぁ、いいや。

 変な脳内反省と自己嫌悪は今はする必要はない。

 とりあえず、起きたのだから動くことにしよう。

 アラームとかはかけていない。時間は特に気にしなくてもいい仕事をしているので。

 モノを作るタイプの作家というやつだ。

 ……いや、作家は何かしらモノを作っているだろう。造形するほうといえばいいか?

「んーー」

 ベッドの上で脱力していた体を起こし、伸びをする。

 全身が痛いような気がするんだが……。

 昨日はそんなに長時間机に向かっていたわけでもないと思うんだけどなぁ。

 肩こりと腰痛がしている気がする。

 後これは常なのでいまさらと諦めているが、背骨のあたりも痛い。

「……っあ〝~」

 おじさんみたいな声が漏れる。

 我ながらなんというか……周りと気にしているとか言っていたくせに、これかとなるな。

 まぁ、今は忘れていたということで。都合のいいようにしておこう。

 全部自分のことだし。

「んしょ……」

 それから少し、ストレッチもどきをして、ベッドから降りる。

 つま先から足をつくついでに、軽く足裏を伸ばす。

 最近、常に足の裏が突っ張っている感じがして気になるのだが。

 誰かに、運動不足じゃないのとか、水分不足じゃないのとか言われたが。

 運動不足は分かるにしても、水分不足……。

 でもあの人、何かにつけて水分不足だと私に行ってきた人なので、あまりあてにはできない。

 というかしたくない。

「……ぉ」

 両足を床につき、手をベッドにつきながら立ち上がる。

 さて、と。

 一度キッチンに向かうため、寝室から出ようと扉に手をかけたところで。

 1つの音が、こちらに近づいてくるのが聞こえた。

 元々数センチ程開けていた扉を、ゆっくりと押し開くと。

 音の主そこにいた。

「おはよ~」

 美しい真黒の毛並みを持った彼女は、私のただ一人の同居人だ。

 昨日は、寝る場所は別が良いとのご要望だったので、彼女はリビングにいたはずだ。

 首には小さな鈴をつけている。

 こういうのは嫌がる猫が多いと聞くが、彼女はむしろ気に入ってくれたようで。

 外そうとすると、若干嫌がるそぶりを見せる。

「ごはんたべる~?」

 鈴の音を鳴らしながら、こちらへとやってきた彼女を軽くなでながら問うてみる。

 すると。

 そのために来たのよと言わんばかりの、視線と返事が返ってきた。

「いこか~」

 撫でる手を放すと、スタスタと前を進んでいく。

 美しく長い尾がを、ゆらりとなるのに合わせて。

 小さな鈴の音の、軽やかな音が鳴る。

 それだけで幸せだと感じてしまう私は、親バカか猫バカか。

 ―彼女バカというやつもあるかもな。

「ちょっとまってね~」

 キッチンにたどり着き、用意をしつつ、自分の用意もしていく。

 とは言え、私はお湯を沸かすだけなんだが。

 とりあえず白湯だけ飲みたい。起きてすぐ固形物は入れられない。

「ん~まって~…」

 かなり空腹なのか、いつもより催促がすごい。

 これも可愛いと思うから、別に何とも思っちゃいないのだが。

 鳴き声も動き一つも、全てが可愛いし、愛おしいし、美しいと思う。

「はい、どうぞ~」

 定位置に彼女の食事を置いたところで、丁度お湯も沸いた。

 適当にとったマグカップに、少なめにお湯を注ぐ。

 それに、1,2個だけ氷を入れる。

 健康とか美容のために白湯を飲むなら、辞めた方がいいかもしれないが、別にそういうわけではないので。

 ただ、寝起きで冷たい水は嫌なので、こうしてぬるいモノを入れると言うだけだ。

「……あつ」

 猫舌の癖に、溶け切るのも待たずに飲むもんじゃない。

 一口一口、ゆっくりと飲み進めていく。

 ぼうっと、彼女を眺めながら。

 ……かわいなぁ。

「……」

 そうこうして、何とか飲み終える。

 さて、

 とりあえず、一階部屋に戻って。

 スマホを救出して、ペンとノート……今日はこっちに持ってくるか。

 作業も今日はリビングかなぁ。

「んー……」

 とは言え、なぜか今日は、若干の空腹に襲われている。

 いつもは朝、やることを終えてからのタイミングで腹が鳴くのだが。

 ……かといって、何もな。

「あ……」

 いいところに。

 と、目に入ったそれを手に取る。

 数日程前に、大袋で買っておいたのを、出しっぱなしにしていた。

 ……大袋っていうか、こういうのは大抵大きな袋に数種類のものが個包装されてい入ってるよな。

「……」

 大量に入っている果物の味のする飴の中から、レモン味を取り出し、口に放り込む。

 コロン、と口内で遊ばせながら、部屋へと一度戻る。

 食事を終えた彼女は、身だしなみを整えていた。

「……」

 さて、今日は何をしようか。

 始まったばかりの一日に。

 ほんの少し期待が芽生えた。

 ……なんでだろうな?





 お題:猫・作家・飴

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