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ガラス玉


冬季休暇明けの新学期は期間が短く、気付いたら終了し、季節が冬から春へと変わっていた。あっという間に学院2年生になったエルザ。


今日は新学年初日。

新たな始まりに相応しく、空は青く晴れ渡り、雲一つ見当たらない。穏やかな風に乗って、花の香りが運ばれてくる。


誰もが春を感じる麗らかなこの日、校舎へと向かう道を歩きながら、エルザは1人微妙な顔をしていた。


「なんだか、申し訳ない気持ちになるわね…」


彼女の視線の先には、見覚えのある、あのガラス玉のキーホルダーをカバンに付けている生徒たちがいた。


『それぞれが選んだガラス玉のキーホルダーを、好きな相手と交換して互いに持つと、永遠に結ばれる』


そんな話がエルザの学年を中心にまことしやかに囁かれ、今では、皆が知るまでとなっている。


事の発端は、メンシスが身に付けていたガラス玉だった。彼らしからぬ見た目のそれに、愛しい人からの贈り物に違いないと、周り(メンシスの熱狂的なファンの女子生徒たち)が勝手に嗅ぎ回った。その結果、エルザがメンシスの瞳と同じ色のそれを持っていたことから、2人の仲が憶測で語られ、ついには前述の逸話にまで発展したらしい。




「おはよう、エミリア。」

「おはようございます、エルザ様。」


学院には元々2クラスしかないため、クラス替えという概念はない。なので、卒業までエミリアとずっと一緒だ。嬉しい。



「ねぇ、それって、もしかして…」

「あ!こ、これは違うんです…。その偶然頂いて、特別な意味とかはないですわ…」


ワタワタと焦るエミリアのカバンには例のガラス玉が付いていた。しかも、見えないように内側に。


これ、、完全にマルクス色だわ…

良好な関係なのか、彼の押しが強過ぎるだけか、ちょっと心配になるわね…


とりあえず、今の彼女に余裕が無さそうだっため、エルザは問い詰めるのはまた今度にしようと決めた。




チャイムとともに、ローラ先生が教室に入ってきた。ちなみに、先生とも3年間一緒だ。


先生は後ろを振り返り、どうぞと誰かに入室を促した。



ん…?

このタイミングで転入生?

新学期だから有り得なくもないけど、、。


何だろう、この既視感。。



入ってきた人は、学院の制服を着た男性だった。長く綺麗な黒髪を後ろで一つに束ね、ダークグレーの瞳の端正な顔立ちの青年。

彼は、エルザが知る人物であった。



「皆さん、ルシア皇女のことは覚えているわよね。こちらは彼女の兄君にあたる、トマス皇子よ。短期間だけど、前回と同じようにうちのクラスに入ることになったわ。皆さん、仲良くしてね。」


「皇国から参りました、第一皇子のトマスです。妹から楽しそうな話を聞いて、僕も留学を決めました。改めてどうぞよろしくね。」



は…???彼がどうしてここにいる?

って、兄だから学年は上でしょうが…

え…ほんとにこの人一体ここで何やってるんだろう…



「先生、僕エルザの隣の席がいいのだけど、変えても良いかな?」

「席はもう決まっているので、ここで我慢してくれるかしら?」

「ふふ、冗談ですよ。あ、エルザ、冗談なのは席を変えて欲しいという要望のことで、君の隣が良かったのは本当だよ?」



は、、、い、、、???



いたっ… 久しぶりに突き刺さる皆の視線…

めちゃくちゃ見られてるー泣


でもそれはそうだよね、イケメン皇子がいきなり現れて、私のこと呼び捨てにして…

どういう関係かって思うよね…



ほんと、何してくれてんのかな!!!



そんな私の心の叫びをよそに、彼はウインクなど飛ばしやがっ…飛ばしてくださいまして、女子生徒の悲鳴がすごかったですわ。


思わず遠い目をしたエルザ。


それを見たトマスは、楽しそうに声に出して笑っていた。




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