キスの代償
「はぁー。自室でお茶とお菓子をのんびり頂くなんて、この上ない幸せね。」
パーティーの翌日である今日は休みだ。昨日の数時間の出来事のせいで心身ともに疲れまくったエルザは、ここぞとばかりに自分を甘やかしていた。
「エルザ様、オルド様がお見えですよ。」
ルルは兄の紅茶を用意するついでに私の紅茶もサッと入れ直してくれた。さすがは出来る女。
ルルと入れ違いに、笑顔の兄がやってきた。
なんだろう。
ものすごく良い笑顔をしてるから、良くない話らしい。
「エルザ、昨日のパーティーは楽しめたかい?」
「ええ、とっても!」
「うんうん、それは良かった。」
「で、昨日はルード公爵家の息子がお前のパートナーを務めたんだって?」
「え、ええ。学院側からお願いされたことなのよ。」
なんだろう、この浮気を問い詰められているような焦る気持ち!いや、浮気じゃないし、そんな関係じゃないし。って私別に兄の恋人でもなんでもないわ!よし、強気で行くのよ。
「ふぅん、、お願いねぇ。」
「そうなのよ、先生にお願いされて仕方なくね。」
兄からのプレッシャーが半端なく、思わず私は悪くない、って言い回しになってしまった。。
「そうかそうか、仕方なく、だったか。それなら、あいつには相応の責任を取ってもらわないとだね。仕方なくペアになったエルザに対して、不埒なマネを働いたわけだから。」
「ふ、不埒だなんて。やましいことなんて何もないですわ!」
「瞼にキスしたり、手の甲にキスしたり、これは恋人でもない相手にすることなのかい?お前はいつの間にそんなに大人になったんだ。」
きゃああああああああああ!!
なぜか分からないけど完全に把握されてる!!!
えええええ、どうしよう!!!
「その顔を見て安心したよ。あいつが勝手にやったことなんだね?」
なぜそう解釈した!?
「えっと、その無理矢理とかそういうわけではなくて!」
「じゃあ事前に同意を得たかい?」
それは、、なかったな。
「だろう?じゃあ、お前は被害者で、あいつが悪い。大丈夫。公爵家相手でもお前のためなら負けることはないよ。義父上も力になってくれるだろうしね。」
これ絶対ダメなヤツーーーー!!!
侯爵家が公爵家を潰しに行くなんて前代未聞だわ。
下手したら内戦になるわよ、、。
「お、お兄様ちょっと落ち着いてくださいませ!」
「ん?僕はいつだって冷静だよ?」
「その、どうかお考え直しを!」
「いくらエルザの頼みでもね…世の中には秩序というものが存在して、それを乱す者は後世のために罰せられないといけないのだよ。」
な、なぜそんな大袈裟な話になるのー!!
その後私は必死に何度も頼み込んだ。お願いだから手荒なことをしないでと。
母の口添えもあり、なんとか、メンシスだけをうちに呼び出し、そこで話を聞くということで落ち着いた。
兄はさっそくルード公爵家に手紙を出すと言い出したが、果たし状を送られたらたまったもんじゃないので、私から直接本人に言ってくるから!と言ってなんとかやめさせた。
って、、え?これ私がメンシスに直接の言うの?あなたが私にキスした理由を兄たちが聞きたいって言ってるのでうちに来てねって??
果たし状の方がまだマシだったかもーーー!!!




