最後の最後まで大波乱
「僕はもう国に帰ってしまうからね。その前に最後エルザに会おうと思って待っていたのだよ。会えて良かった、ありがとう。あ、ルシア、また手紙で色々教えてね?」
「ええ、お兄様。道中お気を付けて。」
はい??
え!!もしかして、殿下とのことやメンシスこととか、私のプライバシーをダダ漏れさせていたのは、ルシア様、犯人はあなただったの!?
はっと、彼女の方を見るエルザ。
ルシアは思い切り顔を晒した。
はい、黒!
うん、今後はきちんと口止めしておこう。
「トマスよ、エルザ嬢に対して少し慣れ慣れすぎるのではないか?」
は??何この人、いきなりぶっ込んできたー!!
今の流れ絶対に、ではまたって起こり得ないことを社交辞令で告げて、ハイさよならーって解散の展開だったのに、、、、。
どうしてこのタイミングで引き留めるのよ…
「それ、クレメンスが余所余所しいだけじゃない?それ、彼女と距離を取りたくてわざとやっているのかな。」
ふふっと笑って言った。明らかな挑発だ。
どうしたら良いのよこの空気…。
こうなったら、とエルザは救世主を見つめて、この状況どうにかして下さい!と念を送りまくった。
はぁーとため息を吐いたメンシスが、仕方ないなと呟いて、殿下達に声を掛けた。
「では、俺たちは迎えを待たせているので
ここで失礼しますね。後はお二方でゆっくりとお話をお楽しみください。ああ、クレメンス殿下、あちらで側近の方がお待ちのようですから、ほどほどにしてあげて下さいね。」
彼は、何気なく殿下のために援護射撃をし、ではまたと優雅に一礼をした。エルザ達にも、行くぞと声を掛けて皆で無事に窮地を抜け出したのだった。
「予想外の出来事も多かったけれど、とても楽しかったわ。メンシスのおかげね。」
お互いの迎えを待つ間、2人は外で話していた。エミリアは、マルクスが彼女を送っていくと言って譲らなかったため、先に来ていた彼の馬車に同乗して帰っていった。
「俺のほうこそ、エルザと一緒だったから楽しかった。ありがとな。」
「そう言えば、どっちも笑わなかったわね。」
「そうだな。」
「そうだけど、罰ゲームが無いのはちょっと面白く無いわね。」
「お前な…」
「ふふ、冗談よ。そうね、、じゃあ代わりにお疲れ様会なんてどうかしら?お互い、学院からの役割を全うしたんだし、一緒に労いくらいしましょ。」
「いいな、それ。」
「決まりね!」
話がまとまったところで、エルザの迎えが先にやって来た。
いいのにと一度断ったけど、今日はお前のパートナーだからと言って馬車までエスコートしてくれると言う。
ほんとに真面目ね、、。
結局、申し出をありがたく受け、メンシスのエスコートで馬車に乗り込んだエルザ。
「今日は本当にありがとう。おやすみなさい。」
「ああ。またな。」
馬車のドアを閉める前、エルザを自分の背中で人目から隠すようにして近付き、彼女の髪を一房掬い上げ、そこにキスを落とした。それは、トマスの行動を上書きするかのようであった。
そのまま耳元でおやすみと言い、彼はドアを閉めた。
発車した馬車の中、ひとり身悶えているエルザ。
!!!!!!!!!!!!
わあああああああああ!!
な、なな、なんなのよ!!
今のなに!?なんであんなことした!?
でもなんだろう、、トマス皇子にされた時と何かが違う気がする。
嫌ではなかった。ん?むしろ嬉しかった??
・・・。
今日は刺激が多すぎたから、今はやめておこう、うん。早く部屋に戻ってドレスを脱いで湯浴みして、ルルのお茶で一息つきたいわ。。お腹も空いたから、軽食を用意してもらおう。疲れたから甘いものもお願いしようかな。いつもは遅い時間に食べないけど、今日は特別よ!
せっかくメンシスが爪の先ほどわずかにエルザに入り込んだのに、それは食欲によってすぐにかき消されてしまった。
ちなみに、同じ頃彼は、今日の自分は少し調子に乗ったかも。羽目を外しすぎて、色々とやり過ぎてしまったかもしれない。嫌われたらどうしよう…と大反省会中であった。




