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クセが強い



「私は誰のものでもございませんわ。女性は所有物ではありませんの。そう言った物言いは控えて下さいませ。」

言い終えた瞬間、トマスではなく、エルザの表情が凍りついた。



はっ、、、、またやってしまった。。。

めちゃくちゃイラついてつい言い返してしまったわ。

それも皇族様に。。


すぐに我に返り、顔を青くするエルザ。



「悪かったよ。不愉快にさせてごめんね。それにしても、自分で啖呵切ったクセに、そうやって真っ青になっちゃって…気が強いんだか弱いんだか…ふふっ、君面白いね。一層興味が湧いたよ。」

先ほどの笑みは消え、スッと目を細め、狙いを定めた目でエルザを見つめてくる。



な、何これ、めちゃくちゃ怖いんですけどー!!

美形に見つめられる恐怖って半端ないわ、、。



「ふふ、そんなに怖がらないでよ。好きな子にはちゃんと優しくするから安心して?」


「は!?畏れ多いので、結構ですわ。他のもっと素敵な女性に目を向けてくださいまし!」


「ははっ!この僕に言い寄られてそんなこと言う女性は君くらいだよ。逃げられると追いたくなるというのは本当だったんだねぇ。」


なんなんだこの人。。。

メンタル強すぎでしょ。。。

はぁー。


エルザがため息を吐いている間に曲が終わった。


「続けてもう一曲…って思ったけど、残念だ。」

名残惜しそうにトマスが大袈裟な動きでエルザの手を離した。


「俺のパートナー、そろそろ返して頂けますか?」

曲が終わると同時に、メンシスがフロアに上がり、エルザを迎えに来ていたのだった。


「はいはい。余裕のない男は嫌われるよ?エルザ、とても楽しい時間だった。またね。」

トマスはエルザの髪を一房掬い上げ、そこにキスを落として去って行った。


「な、何よ、これ…」

放心状態でその場に固まるエルザ。

「大丈夫か?」

気遣わし気にエルザの顔を覗き込むメンシス。

「だ、大丈夫じゃないわよ!いきなり色んなこと言ってきて、勝手に人のこと面白がって、、腹立つわね。」

「…。」

メンシスは、髪を触れられたことに対して、嫌な思いをしているのだと感じ取り心配をしていたのだが、返ってきた言葉は、トマスへの怒りに満ちたものだった。予想外のことに思わず無言になった。

「ええと、思ったより元気そうで良かった。」


そんなことないわよ!とまだ怒りが収まらない彼女をまあまあと宥めながら、一度フロアから降り、そのままフロアに沿って端の方へ誘導していく。




「あれ見て!」

先ほどの怒りはどこへやら、エルザは一気に華やぐような笑顔になった。


彼女の視線の先にいたのは、フロアで踊るマルクスとエミリアだった。

2人が踊っていることを知っていたメンシスが、エルザなら見たいだろうと思って気分転換を兼ねて連れて来たのだった。

もちろん、彼はそんな野暮なことは言わず、エルザが自分で見つけたことにしておく。




マルクスとエミリアの2人のダンスは、息のあったものだった。つい控えめになるエミリアを、マルクスが大胆にターンさせ、会場を沸かせる。次は、つい調子に乗るマルクスを、エミリアが上手く誘導して通常のステップに戻していく。


時に大胆に、時に補正して、互いに補完し合いながら踊る様は、とても仲良く見えた。


「意外に仲良さそうじゃないの。あの2人。」

「ああ、そう見えるな。」

「いいわね、青春だわ。」

「お前もだいぶ青春を謳歌してると思うが?」

「はぁ。私の周りはちょっとクセが強いのよ。」

「どんな奴なら良いんだ?」

「うーん、、強いて言うなら、お兄様みたいな人かしら?」

「…。」


だって、顔がカッコよくて強くて職に困らなくて、それでいて私の強がりを見抜いて、適切なタイミングでフォローしてくれる、私の味方。そう考えると本当に素敵な人よね。

ただやっぱり、時々物騒になったり訳の分からないこと言い出したり、クセが強いのよね…


「さすがにお前の兄上のようになるのは無理だな…」

「なんでメンシスがお兄様みたくなるのよ。あれが2人はさすがにちょっとキツイわね、、」

「なんでそうなる…」




曲が終わり、エルザ達に気づいたマルクスとエミリアがこちらにやってきた。


「エミリア!とっても素敵だったわよ!思わず見惚れたわ。マルクスもね。いつもの顔より自然で良かったわよ?」


「エルザ様、ありがとうございます。照れますが、エルザ様にそう言って頂けてとても嬉しいですわ。」


「ありがとう、エルザ嬢。最後の一言は余計だけどね。」


「エルザ様たちのダンスもとても素晴らしかったてすわ!妖精のように飛び回り、時折ふたりで見つめ合って囁いて、、もう思い返すだけで胸がときめきますわ!!」

胸を押さえながら惚けた顔でエミリアが言った。心ここに在らずといった状態だ。


「ねぇ、メンシス、あの時の私たちって、いつものようにたわいも無い話をしていただけよね?」

「ああ、そうだな。」

「それがなにかおかしな方向に誤解されてない?」

「夢を壊すのは悪いから、黙っておこう。」

「確かに、それもそうね。」

小声でやりとりをする2人。メンシスは、自分たちが仲睦まじいと噂された方が色々と都合が良いので、黙る方向に仕向けたのだった。




ダンスの曲目は全て終了した。

帰るタイミングはいつでも良いとされているため、すでにいないものも多く、人が少なくなってきた。


エルザ達もそろそろ帰ろうと出口に向かって移動していると、やんごとなき身分の集団に出会してしまった。そう、クレメンス殿下にトマス皇子にルシア皇女の3人だ。


「やぁ、エルザ。また会えるなんて奇遇だね。」

1番に声を掛けてきたのはやはりトマスだった。



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