好きな色
収穫祭パーティーまで残り1ヶ月を切り、学院内ではどこもかしこもパーティーの話題で持ちきりだ。主にパートナーに関する話である。
初めてのダンスパーティーとなるため、私は誰々から誘われただの、意外にもあの2人がペアになるそうだ等々、みな浮き足だっているのだ。
そんな中エルザは、久しぶりに、旅行に行ったメンバーでランチタイムを過ごしている。マルクスが声を掛けてくれて、みんなで集まったのだ。
「いやぁ、みんな浮かれているねぇ。」
うさぎ肉のソテーを綺麗な所作で切り分け口に運びながらマルクスが言う。
彼が食べているのは日替わりのランチプレートだ。
メインのうさぎ肉のソテー、マカロニと人参のサラダ、カボチャの和え物、揚げいもがワンプレートにぎゅうっと並び、そのほかに白パンとスープが付いている。メンシスも同じものを食べている。
エミリアとアリスはサラダプレートとシフォンケーキのセットだ。そんな2人とは対照的に、エルザは男性陣と同じ日替わりプレートを美味しそうに食べている。
「もうすぐですもんね、収穫祭。そう言えば、マルクス様のお相手はもう決まりましたの?女性陣から随分とお声がかかっていると聞いていますわ。」
ほほほほと笑いながらアリスが言った。
マルクスは可愛らしい見た目で人懐っこく愛想が良いため、かなりモテるのだ。最近はメンシスといることも多く、冷たく見える彼とは対照的なマルクスに惹かれる女性が多いとか。
そう言うアリスは、婚約者が学院外の人間のため、今回はダンスには参加せず、パーティーの雰囲気だけ楽しむつもりらしい。
「はいはい、婚約者様がいる人はいいよねぇ。そこの2人はもうペアって決まっちゃってるしなぁ。。あ!そうだ。エミリア嬢、相手は決まっているの?」
ぱっと茶色の瞳を輝かせてマルクスが言った。
期待するような目でエミリアを見つめている。
「いいえ、まだ決まっておりませんわ。」
首を横に振りながら、伏し目がちにエミリアが言った。
「それだったら、ぜひ僕と…」
「ここにいたのね、エルザ!」
ルシアがエルザを見つけて近くまでやってきた。
残念ながら、マルクスの言葉はルシアによってかき消されてしまった。
1人しょんぼりするマルクス。
そんな彼には気づかず、ルシアが話を続ける。
「えっとその、、エルザに話があってきたのだけど、お邪魔だったわね。ごめんなさいね。」
「あの、ルシア様さえ良ければ、一緒にいかがかしら?」
寂しそうなルシアを見兼ねたエルザが思わず声をかける。
「ありがとう!ぜひそうさせて頂くわ。」
寂しそうな表情が一転、華開いたような笑顔に変わった。
「エルザに聞きたくて、収穫祭のパーティーで着るドレスのことなのだけど、みんなどんなものを着るのかしら?皆さんはもう決まっていて?」
「私は婚約者が学院外のため、ひとりで参加の予定でして、だから何も気にせず、好きな色にしようと思っていますの。デザインも少し革新的なもので考えていますわ。」
ふふと楽しそうにアリスが言った。
「あ、申し遅れました、わたくし、ジュード子爵家のアリスにございます。ルシア皇女殿下、改めてよろしくお願いしますわ。」
アリスは座ったまま軽く頭を下げた。
「ありがとう、アリス。私のことはどうぞルシアと気軽に呼んでね。」
ルシアが微笑んで言った。
「好きな色のドレス、、、それは素敵ね。あの、ルードは、その、好きな色ってあるのかしら?」
上目遣いでメンシスを見つめながらルシアが言った。
「特にこれというのはありませんが…強いて言うなら、やや明るめの茶色、でしょうか。」
その言葉にエルザを除く全員が固まる。
それは紛れもなくエルザの髪色を指していたからだった。
しかし、エルザは自分の髪色など意識したことがないため、やや明るめの茶色と言われても、自分のことを言われているとは夢にも思わない。
「あなた、地味な色が好きなのね、、。」
状況が分かってないエルザは、メンシスちょっと変わってるわーくらいにしか思っていない。
「あぁ。綺麗な色だからな。」
そう言ってエルザに微笑み掛けるメンシス。
「!!!」
その様子を見たルシアがショックを受けた顔をした。
彼女は、そのまま席を立ち、カフェテリアを出て行ってしまった。
気付けば60話超えていました!
通勤途中や仕事の合間にぽちぽち文章を打つのは楽しく、とても良い気分転換になっています(´∀`)
読んでくださった方改めてありがとうございます。
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引き続きどうぞよろしくお願いします。
 




