恋する乙女
学院のカフェテリアにはいくつか個室の席も用意されている。予約さえ取ればだれでも使って良いシステムだ。
アイザックが予約をとっておいてくれた庭園の見える個室に、殿下とルシアが隣り合わせ、その向かいにメンシスとエルザが座っていた。
「ルシア皇女は久しいな。此度はトマス皇子が来られなかったこと、残念だったな。」
そう言って最初に口を開いたのはクレメンス殿下だった。
「お久しぶりですわ、クレメンス殿下。ええ、兄もとても残念がっていましたわ。もしかしたら、収穫祭の当日に行けるかもしれないと行ってましたが。あの人のことですから、当てになりませんね。」
ため息を吐くルシア。
テネブラエ皇国と王都は、馬車で1週間の距離だ。この世界では、気軽に行き来できるとされる距離である。
「あぁそうだな。トマス皇子は我が道を行くからな。今回のことも、他に面白いことでも見つけたのであろう。」
さすがは我が国の王位継承権第一位のクレメンス殿下だ。隣国の皇子達とも交流があるのね。
と、感心しながらエルザは話を聞いていた。
この時までは。
「そういえば、ルシア皇女の婚約はもう決まっているのか?皇国も15歳から婚約出来るのだろう?」
は!?何この人。
いきなり恋バナ、というか、
大変失礼な話をレディにぶっ込んできたわ!!
「いいえ、まだですわ。」
寂しそうに首を横に振るルシア。
その表情に思わず抱きしめに行きたくなるエルザ。
うぅ、こんな表情をさせるなんて、、
許すまじ、殿下!!
「そうだったか。それは野暮なことを聞いてしまったな。あ、ここにいるルードはどうだ?見た目も悪くないし、公爵家の人間だ、身分も釣り合うではないか。」
そう言って、にこにこ、いや、ニヤニヤしながら、ルシアとメンシスを交互に見る殿下。
「く、クレメンス殿下!そのようなこと勝手に言っては、ルードに迷惑ですわ。あの、でも、そうですわね、、ルードさえ良かったら、そのまずはお友達に、、どうかしら?」
上目遣いでうるうるメンシスを見つめるルシア。
どうやら、殿下のアシストは彼女にとって、渡に船だったらしい。
「俺は、自分のことは自分で決めるので、そういったお気遣いは不要です。」
だが、メンシスの答えはかなり冷たく、場がしんと静まり返った。
それを聞いてルシアは目を見開く。
それは、彼女が今まで経験したことのない明らかな拒絶だった。
その空気に耐えきれなくなったエルザが慌てて言う。
「だったら、またみんなでランチしましょう!そこでお話しして仲良くできたらいいと思うの。」
その後は、この学院のことやお互いの国の話をしてランチタイムは終了となった。
メンシス達と別れ、教室へ入ろうとした手前でルシアから話しかけられた。
「エルザ、もしよかったら、あの、相談に乗ってくれないかしら??」
ちらちらとこちらを見ながら、控えめに尋ねてくるルシア。
直感で絶対に面倒な話だと思ったエルザだったが、皇女であるルシアからのお願いを断れるわけもなく、渋々了承するのだった。
その相談というのは案の定、メンシスのことであった。彼について、些細なことでもいいから話を聞かせてほしいとお願いされ、どうやったら仲良く出来るか一緒に考えて欲しいと言われたのだった。
連日、ルシアに誘われてランチを共にするエルザ。もちろん話題はメンシス一択である。
最初は、少しでも役に立つのならと話をしていたエルザだったが、さすがに疲れてきた。恋する乙女のパワーは絶大だった。
そこで今日は誘いを断り、久しぶりにテイクアウトしたランチを外で食べることにした。
「はぁ。ひとりって落ち着くわ。」
あまりの心地良さに思わず声に出すエルザ。
「ここにいたのか。」
自分しかいないと思い込んでいたところに声が聞こえて驚き、喉にパンを詰まらせそうになる。ワタワタしてると、水を差し出された。
「急に声をかけて悪かったな。」
目の前にはメンシスがいた。




