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リボン


お昼を食べた後、女性陣が着替えをしたいとのことでしばし自由時間となった。


それからしばらく経った後、なんとなくサロンに集まった私たちはお茶を飲みながらゆっくりしていた。



「私、みんなに渡したいものがあったのよ。」


そう言ってエルザがごそごそと何か取り出す。テーブルに並べられたのは、出発前にルルと出掛けた時に買ったリボンだった。


本当は行きの馬車の中で渡すつもりだったが、エルザが爆睡してしまったために機会を逃し、ずっとタイミングを伺っていたのだ。



「あの、これ色違いなのだけど、みんなで付けたらなんか良いかなって、その思いまして、、、別に、強制ってことではなくてね、もし気に入ったもらえたら、その、嬉しいなと思いまして。。」



話しているうちに、みんなでお揃いで付けたいだなんて、凄まじく恥ずかしいお願いだったと気付いたエルザは、後半から声が小さくなり、赤くなった顔を隠すように俯いた。


しかし、リボンのことを話してしまった以上、もう渡さないわけにはいかない。


そのまま恐る恐る、まずはエミリアに、リボンを差し出す。



「あ、ありがとうございます!エルザ様からこんな素敵なものを頂けるなんて、、これは私の一生の宝物ですわ。何に代えても生涯大切にします!」


受け取った金色のリボンを胸の前で握りしめながら、涙目でお礼を言うエミリア。


プロポーズのようなエミリアのお礼に、大袈裟よと思いつつもも、思わず笑みがこぼれる。


「ふふ。良かったわ。喜んでもらえて嬉しい。」



次は赤茶のリボンをアリスに渡す。彼女の髪と同じ、明度が高い綺麗な色だ。


「エルザ様!ありがとうございます!私の色を選んでくれてとても嬉しいですわ。毎日身に付けますわね。」


さっそく自分の髪のリボンを付け替えながら、嬉しそうにお礼を言うアリス。



次はメンシスに銀色のリボンを差し出す。


「男性にリボンっておかしいと思ったのだけど、せっかくだからと思ってつい出来心で用意してしまったの、、。もしどこかに付けてくれたらそれは嬉しいけど、この旅行の間持っていてくれたらそれでもう十分よ。」



控え目に言うエルザ。

差し出されたリボンを見て固まるメンシス。


メンシスは、生まれて初めて自分のために差し出された贈り物に、嬉しさを通り越して驚愕するあまりリアクションを取れずにいた。

しかし、それはエルザには伝わらない。



やっぱり、変よね、、

と手を引っ込めようとした瞬間、やや慌てた動きでメンシスの手がぱっとリボンを掴む。


そのまま流れるような動作で、腰にあった剣の鞘にリボンを結び付ける。それをしばらく眺めた後、ようやく言葉を発した。




「ありがとう、大切にする。」

そう言って柔らかい笑顔を向けるメンシス。


「ふふ。さっそくありがとう。私も嬉しいわ。」

エルザも少し照れた笑顔で言う。


そう言い合いながら、微笑み合う2人。




あまりの甘い雰囲気に、2人から花が飛ぶ。

それに加えて、周囲にはキラキラエフェクトまでかかっている、ように見える。


「はっ、、これは、なんて尊いのでしょう。。」


「ええ、あれはもう女神よ。地上のものではないわ。これは画家が必要ね。今すぐ絵にしたいわ。」


照れたように微笑み合う2人を見て、エミリアとアリスは目を輝かせて興奮気味に、だけど2人に気付かれないようにそっと小声で言葉を交わす。




「えっと、エルザ嬢?これは、、僕のかな?」


甘い雰囲気を無視して話し掛けるマルクス。

彼が指差す先には残り一つとなったリボンが置かれていた。


「あ、えぇそうよ!マルクスの雰囲気にとてもよく似合うと思ったのだけど、さすがにちょっと可愛すぎたかしら、、??」


マルクスの声で戻って来たエルザが早口で伝える。


それはピンクのリボンだった。ベースはすべて白レースなので、それはもう、ピンク×白レースの可愛すぎる一品だった。


「は、、これが僕のイメージね。。ははは。」


やや自嘲気味に笑うマルクス。

心なしか元気のない声でエルザにお礼を言ったのだった。


それを見たメンシスの肩は震えていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 読んだ人を楽しませる文章を書ける才能? 他の作家さん達も含めてなんだけど 本当に毎回楽しませてもらって ありがとう! と言う定型なお礼しか書けないけど 毎回楽しませてくれてありがとうござ…
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