湖
雲ひとつない青空。湖面は太陽に照らされて光り輝いている。湖を囲うように木々が生い茂り、その間には色とりどりの花々が植えられている。
大きな湖の周りには、簡易的な東屋のようなものがいくつも立てられており、その中で休んだり食事をしたり、観光客の憩いの場となっている。
目的地に着いた5人は、昼食を取るため、他の観光客らと同様、東家の中で涼んでいた。
昼食は、公爵邸の別邸から到着に合わせて運ばれて来たお弁当だ。
お弁当とはいえ、さすがは公爵家、中身は、仔羊のソテーに特製ソースを別添えしたもの、マスの燻製、蒸し蟹の和え物、サラダ、白パンなど、この地の特産物をメインにした中々豪華な物だった。
青い空、目の前には湖、心地よい風、そして豪華なお弁当、この最高のロケーションに思わず皆の顔が綻ぶ。
ただ1人を除いて。
「本当にごめんなさい!せっかく道中みんなとお話して楽しもうと思ってたのに、その、、すぐに寝てしまって、、。あぁもう、、淑女として恥だわ。。情けない。」
エルザは頭を抱えながらひたすら謝っていた。
周りはなんとも思っていなかったが、エルザが自分自身を許せず、謝罪したがったため、一応聞いているという状態だ。
「エルザ様、もう大丈夫ですから。せっかく美味しいお弁当を用意してもらったんですし、食べましょう。ね?」
エミリアが優しく微笑む。
「そうそう、エミリア嬢の言う通り、気にしなくていいよ。むしろ、お礼を言うのはこっちの方だし。なぁ?」
と、マルクスはニヤニヤしながらメンシスを見る。
「なぜこっちを見る。」
もちろん、マルクスの言わんとしてることは分かっているが、こんなの本人の目の前で話す内容ではないので、気付かないフリをする。
「は?お前だって見てたじゃん。ねがっ、、ぎゃ!」
メンシスに足を強く踏まれたマルクスは、最後まで言えなかった。
ちなみに、届かない距離にいたエミリアとアリスは、キツく睨み、お前、余計なこと言うなよ?と言わんばかりの凍てつく視線を送り付けていた。
マルクスは堪らず、両手を軽く上に上げ、降参のポーズをする。
「はいはい、僕が言い過ぎましたよ。さっ、次の予定もあるし、そろそろ食べようか。」
ん??
なんだろう?今ダイヤモンドダストが見えた気がする、、
なんか一気に冷えた??
状況が分からず、ひとりキョトンとするエルザ。
「エルザ様はそのままでいてくださいね。」
うんうん、とこちらを見て微笑むアリス。
ん??なんだろう??
…。まぁいいか。
お腹が空いていたエルザは、思考を放棄し、お弁当を食べることに専念したのだった。
昼食を取り終えた5人は、公爵家の使用人たちにお礼を言って、ボート乗り場へと向かった。
「せっかく湖に来たんだから、ボート乗りで遊ばないとね!」
ニコニコとご機嫌のマルクスが言う。
「でも残念なことに、最大で3人までしか一つのボートに乗れないから、二手に分かれないといけないんだよね。んー、どうしようかな。困ったなぁ。」
そして、彼は、全く困ってない口調で困ったと言い出すマルクス。
「それ、男女で分ければちょうど良いんじゃない?2人と3人だし。うん、決まりね。」
問題解決!とばかりに手を合わせて微笑むエルザ。
そんな嬉しそうな彼女とは正反対に、
「…。」
男2人は微妙な顔で黙り込んだのだった。