ルルと主
「か、かわいい!あぁでもこっちの方が似合うかしら。んー、悩むわねぇ。。」
「お嬢様がお選びになったものでしたら、みなさんとても喜ばれると思いますよ。」
可愛い小物が並ぶ店内で、真剣に悩むエルザを微笑ましそうにルルが見ている。
今日は旅行に備えて必要なものを買いにルルと城下町にやって来たのだ。
ルルは私より4つ上でとても綺麗な顔立ちをしている。しかし、さすがは侯爵令嬢の専属侍女、こう見えてかなり強い。
昔ナンパ男に絡まれた時、目の前で自分よりも大柄な男を瞬殺で地面に組み伏せていて驚きのあまり声が出なかった。
だから、ルルとなら外出しても良いことになっている。でも一応お忍びとして来ているから、ルルにはお嬢様と呼んでもらっているんだ。
楽しそうに店内を見て回るエルザを見てルルは思った。
こんなに楽しそうなエルザ様を見るのはいつぶりだろうかと考えて胸が熱くなる。
ルルは、エルザが学院に通い始めてから、時折見せるようになった、疲れた顔にひどく不安を感じていたのだ。
何も言わない優しい主に理由を尋ねるわけにもいかず、毎日その日の体調に合わせて心を込めてお茶を淹れることしか自分には出来なかった。
そんなことしか出来ない自分に、私の淹れるお茶が一番美味しいと言って笑ってくれるエルザ様。わたしの主は、なんて尊いお方なのだろう。
「ルル!じゃあ、これはどうかしら??」
エルザの言葉で、ルルはふと我に返る。
見せてくれたのは、白のレースとシルク地を丁寧に編み込んだリボンだ。色違いのものがいくつか並んでいるのが見える。
「ええ、とても素敵だと思いますよ。」
そう言ってルルは控えめに微笑む。
こんなにも心優しいエルザ様に想われて、学友の皆様もさぞ嬉しく思っていることだろう。本音を言うならば、彼女達が少し羨ましい。
私も学友の方々のように接せられたら、あるいは姉妹のように支え合えたら、、
そんなことを考えても仕方ないのに。
だけども、そう考えずにはいられないほど、エルザ様は私にとって特別で、なくてはならない存在なのだ。
「ルル、お待たせ!」
そう言って、エルザ様が私の元に戻ってくる。
「はい、これルルのね。」
そう言って手渡されたのは、先ほどのリボンだ。やや明るい茶色の布が織り込まれている。そう、エルザ様の髪と同じような綺麗な色。
「これを、私に、ですか、、??」
「ええ。みてみて!私のはね、紫にしたの。へへ、お揃いよ。いつもありがとう、ルル。これからもよろしくね。」
紫はルルの瞳の色だ。
あぁ、もう。
エルザ様、貴女という方は、、
涙で視界が滲む。
こんな素晴らしい方に仕えることが出来るなんて、、友人でも家族でも無いけど、信頼し合える特別な関係。
私を選んでくれて、
側にいさせてくれて、
「ありがとう、ございます。エルザ様。」
私の主は、貴女だけです。
一生付いていきます。