【番外編】兄の気持ち
僕の名前は、オルド・アストルム、侯爵家の長男として生を受けた。
侯爵家は公爵家に次ぐ爵位であり、その家を継ぐものは幼少期から厳しい教育を受ける。だが、僕の場合はそうではなかった。
実父である、ゲネシス・アストルムは僕が9歳の頃に亡くなった。死因は病死だ。
自身が短命であると知っていた父は、僕を次期当主にしないことを選んだ。父が急死した時に、幼い僕に全てを背負わせたくないからだったそうだ。それで当時は、親戚から適齢の男子を養子に取るつもりだったとか。
もちろん、その時の僕はまだ幼く、そんなことは知らなかった。
長男なのに次期当主として育ててもらえない。他の子と扱いが違う。周りの子たちは勉強と剣術で忙しくしているのに、僕の何がダメだったんだろう。期待されてないのかな。
幼いながらにそんなことを思っていたのだ。
僕が4歳の時に妹が生まれた。
とても小さくて怖いと思った。
妹が歩けるようになると、僕の後を付いて歩くことが多かった。たどたどしくも必死に追いかけてくる姿はとても可愛らしかった。
僕は妹とよく遊ぶようになった。
父が亡くなった時妹はまだ5歳だった。人が死ぬということをまだよく分かっていなかったように思う。
父の跡を継いだのは叔父だ。
その時僕は何もできなかった。何も求められなかった。
今考えれば当たり前だ。相応の教育を受けていない9歳の子どもに何が出来るというのか。
でも当時は、客観的に自分を捉えられるほど大人ではなく、疎外感を強く感じた。何のためにこの家に生まれて来たのだろうかと暇さえあれば自分の存在意義を考えていた。
僕は塞ぎ込んだ。
どんどん暗く後ろ向きになる自分に嫌気が差した。父じゃなくて自分がいなくなった方がこの家のためになったのではないかと本気でそう考えていたくらいに。
そんな中、妹は何一つ変わらなかった。
毎日遊んでと声を掛けて来た。
拒否すると、部屋の前に花を置いていった。
次の日も、その次の日も、何度でも。
僕が拒否しても慕ってくれる妹。
単純に妹がまだ幼かっただけかもしれない。でもあの時の僕には間違いなく彼女が唯一の救いだった。
何度も僕を求めてくれる唯一の存在。
彼女が僕を見て笑顔になってくれるのなら、僕はここにいてもいいのかもしれない。
それから僕は、ありとあらゆる教育を受けた。剣術も叩き込んでもらった。全ては、あの時救ってくれた妹に恥じない兄となるために。
妹は当時のことは何も覚えていない。
僕のことは度を超えたシスコンとでも思っているのだろう。まぁ否定はしないけど。
エルザ、僕の全てをかけて愛してる。
もちろん、兄としてだよ?
オルド兄はどうしてそんなに妹が好きなんだろうと不思議に思ったので掘り下げてみました!これで納得です。
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