落ち着かない感情
た、たすかった。。。
エミリアのおかげでなんとかあの空間から抜け出すことが出来た。
にしても、、大して話もしてないのに、変な緊張のせいで一気に疲れたわ。。
「これ、いるか?」
人の輪から少し離れて休んでいた私の目の前に、ジュースの入ったグラスが差し出される。
「あら、メンシスも来ていたのね。ありがとう、頂くわ。」
グラスを受け取りながらそう言うと、メンシスが一瞬固まったことに気付く。
「あ、やっぱり馴れ馴れしかったかしら??様付けに戻した方がいい?」
「いや、そんなことはない。少し驚いただけだ。そのままでいい。」
相手の感情を推し測るようにじっとメンシスの顔を見るエルザ。
若干顰めっ面をしているように見えなくもないけど、、、まぁ本人が良いって言うならいいか。変に気を使い過ぎても悪いしね。
メンシスは顔を晒しながら、エルザの隣に立つ。
「一緒に来ていたやつ、お前の兄だったんだな。」
「ええ、そうなのよ。勝手に付いて来ちゃったのよね、、。お兄様目立つわよね、、はぁ。」
思わずため息を吐くエルザ。
「そう言ってる割には、お互い似たような服装をして仲良さそうだし、お前もそれなりに目立ってると思うぞ?」
「あ、このドレスもお兄様からの贈り物だからね、それに今日の服装を合わせて来たのよ、、」
やっぱりそうか、とメンシスは心の中で答え合わせをする。
見るからに高級そうな素材が使われていて手の込んだデザインのエルザのドレス。こういったレベルのドレスはたいてい婚約者から贈られるものである。
公爵家嫡男として鍛えられた審美眼でエルザが着ているドレスのそれをメンシスは見極め、結果、婚約者がいるんじゃないかととてつもない不安に襲われていたのだ。
「そのドレス、とてもよく似合っている。」
ふわりとメンシスは微笑んで言う。
そう言った彼の顔にいつもの鋭利さはなく、あどけない少年っぽさが溢れ出ていた。
はっ!
で、でた、不意打ち!!!
なんで滅多に見せない顔をここで出すのよ。
あぁ、顔が赤くなるのが分かる、、うぅ、。
「あ、ありがとうございます。。」
「ふふ、、照れると敬語になるんだな?あぁそれと、さっきのお世辞じゃなくて本心だから。勘違いするなよ。」
ぎゃ、ぎゃあああああああ!!!!
もうやめてーーー!!!
メンシスが私を殺しにきてるーー!!
私は、悪役令嬢の死亡フラグとは関係なしに羞恥で死ぬかもしれない、、。
しばらく落ち着かなかった私は、八つ当たりのように、飲み物を取ってくるようにメンシスに言ってやった。
なのに、彼は嫌がりもせず飲み物を取りに行き、更には笑顔でケーキまで運んで来てくれた。
それを見た私は、公爵令息に何やらせているんだ、自分、、、と思い至ったことでようやく己を取り戻したのである。