突然の刺客
「エルザ、お手をどうぞ。」
そう言って、馬車の前で、ふわりと微笑んで手を差し出すオルド。
今日はいつもの仕事着とは異なり、ネイビーのシンプルなパンツに、アイボリーのジャケットを羽織っている。タイはしておらず、第一ボタンを留めていないシャツから鎖骨が垣間見える。なんとも艶かしい。
胸ポケットにはアクセントカラーとして、ミントグリーンのハンカチを覗かせている。
平たく言って、「ものすごく気合を入れて且つそれを悟られないように適度に抜いた装い」をしていた。
「はい?」
え、だれ、この美しい人。。
兄、、のはずないよね??え、なんか私のドレスと似てない??って、アクセントカラーの使い方とか全く一緒なんですけど。これが噂のリンクコーデってやつですか!!
目の前の情報量の多さに脳の処理が追いつかない。一度放電したい。
「ふふ、言葉をなくしたエルザもまたなんとも魅力的だね。思わず見惚れてしまうよ。」
クスッと笑いながら首を傾けるオルド。
ぎゃあああああああ!!あざとっ!!
目、目がやられる、、、、
この、何が何でも美辞麗句を繰り出そうとするのは、、うん、間違いなく私の兄だ。
で、なんでここに兄いるの!!
「ん?今日は王宮のガーデンパーティーに参加するのだから、エスコート役が必要だろ?」
エルザの表情から意図を読み取ったオルドが当然のように爽やかに答える。
ちょ、ちょっと待てー!!
色々とおかしいぞ。。
果たして、どこから突っ込むべきか、、、
あれ、そもそも招待制だから、勝手に入れないんじゃ、、、。まぁその時は、門までのエスコート役ってことで兄には納得頂こう。
「あぁ、招待状には、気軽に皆さんお誘い合わせの上お越しくださいってちゃんと書いてあったから、同伴者が1人くらい増えたって問題無いだろう。だから安心して良いよ。」
それ、全くもって安心出来ません!!!!!
もはや不安しかないわ。。
誰が、今年16歳になる同級生の集まりで兄弟を連れてくると思うのか、、
「ま、王宮にはツテもあるから、大丈夫だよ。」
のほほんと兄が言う。
「さぁ遅れてしまうから、もう行くよ。」
誰のせいよって叫ばなかった私、偉いと思う。
うん、誰かに褒めて欲しい。
まんまとオルドに懐柔されたエルザは、大人しく彼の手を取り馬車へと乗り込む。
納得しないまま王宮へと向かうのであった。