髪飾りの効果
「その髪飾り、とても素敵ですわ!エルザ様の髪色ととても良くお似合いです。」
「ふふ、ありがとう、エミリア。お兄様から頂いたのよ。」
兄とお出掛けしたあの日、出迎えてくれた義父は、目ざとく私の髪飾りに気付いた、だけじゃなく、兄の色の石が輝いていることもちゃんと視認して、その後大騒ぎしてた。。。
私の色もそこに当て込みたいだの、オルドばかりズルイだのなんだの、、
結局、後日、義父の色であるスカイブルーの小さな石のついたアンクレットをプレゼントされて、その場でそれを速攻身に付けたことによって、なんとか落ち着いた。
いつもだったら、娘のこと溺愛し過ぎでしょう!って思うけど、きっと義父も私のことを心配してくれていたのよね、、そう思うと、暖かく凪いだ気持ちになった。
あ、でも、その後調子に乗った義父が、何度も、アンクレットを見せておくれと騒ぐものだから、兄に物理的に静かにさせられていた。。兄の、義父の扱いが日に日に雑になって来ているような気が、、しないでもない。。
「まぁ!お兄様からの贈り物だったのですね。てっきり、素敵な殿方からの贈り物かと思って見てましたのよ。」
そう言いながら、どこか揶揄うように笑っているのは、アリス・ジュード子爵令嬢だ。エミリアの遠縁のようで、学院に入る前から付き合いがあったらしい。
アリスは隣のクラスだが、エミリアのおかげで最近仲良くなったのだ。彼女は、丁寧な物腰だが、思っていることははっきり言うタイプで、中々に面白い。真逆な性格だからこそ、控えめなエミリアと相性が良いのだろう。
で、クラスの違う3人がなぜ今一緒にいるのかというと、今日はクラス合同で特別講義を受けているためだ。
特別講義と言っても堅苦しいものではなく、外部から講師を呼ぶ都合上、まとめて実施した方が効率良いからねというシンプルな理由によるものでしかない。
広い講堂で仲の良いもの同士が近くに座り合い、和やかな雰囲気の中、生徒たちを飽きさせないよう、時には簡単なワークショップを挟みながらテンポよく講義が進められていく。
そんな穏やかな雰囲気の中、ひとり険しい顔をした男がいた。
「あれはなんだ?」
「殿下、講師への質問は挙手の上、許可をもらってから発言なさるのがマナーですよ。」
「違う、私はお前に聞いているのだ、アルザック。あれは、なんだ?」
はぁ。そんなの私に聞いてどうする。本人に聞けば良いものを。まったく面倒な人だ。
「あぁ、とても素敵な髪飾りですね。青、、には到底見えはしないとても素敵なエメラルドグリーンの石が使われてますね。あれが気に入りました?購入先でも聞いてきましょうか?」
「違う!私はあれが欲しいのではない。誰からの贈り物なのか、それを知りたいのだ。」
でしょうね。。。
「大変失礼致しました。殿下、御無礼をお赦しください。殿下が欲しいと望まれるのは、髪飾りではなく、髪飾りを付けている方でしたね。」
少しめんどくさくなったので揶揄うと、主の顔が一気に朱色に染まる。こんなに分かりやすい王子で良いのかと、アイザックは不安になる。
時を同じくして、クレメンス殿下と同様、あの髪飾りを見て顔を曇らす銀髪頭の男がいた。
しかし、アリスの良く通る声が聞こえてきて、ホッと内心息をついたのだった。