髪飾り
城下町入り口の停車場に馬車を止め、兄にエスコートされて降り立つ。御者はこのまま停車場にある休憩スペースで私たちの戻りを待つそうだ。
兄がいるので護衛は連れてきていない。義父はせめて1人くらいは連れて行けとうるさかったが、足手纏いになります、の一言で兄が突っぱねた。
たしかに、その辺の騎士より兄は強い。今でも毎朝鍛錬しているし、たまに騎士団の訓練にも参加しているらしい。私には未だに兄の立ち位置が分からない。いや、、だってね、訓練に参加する文官って意味が分からな過ぎるでしょ。。
兄に手を引かれて歩きつつ、そんなことを考えていると、足が止まる。どうやら目的の場所についたようだ。
可愛らしい雰囲気のお店の前だった。
窓ガラスから店内を覗くと、そこには可愛らしい髪飾りやブローチなど、女性が好きそうなものがこれでもかというほど並んでいた。
素敵なお店だ。
って、ん??これ、どこからどうみても女の子のためのお店、よね??
兄は何しにここに来たのかな??
はっ、 こ れ は !!
好きな人への贈り物を買いに来たのね!
だから、私と来たがって、義父のことは嫌がったのか。確かに親と一緒に選ぶなんて嫌よね。気恥ずかしいわ。
うん、いつもお世話になっている兄のためだ。
相手に喜ばれるものを全力で選ぶぞ!
中に入った私たちは店内を見て回る。
「エルザ、何か気に入るものはあるかい?」
「そうね、、あ!これなんでどうかしら??」
私は、ひとつの髪飾りに手を伸ばす。
髪飾りだったらいくつあっても良いし、いきなりネックレスとかは指輪とかはハードルが高いし、何よりこの髪飾りは、、
「これは、、僕の色だね。うんこれが良いな。」
そう、兄の瞳と同じエメラルドグリーンの宝石が飾られているのだ。小さい石なので、それとなく輝くのが控えめでいい。土台にも花柄の模様が刻まれており、とても手が込んでいる。
その分お値段は可愛くないが、、侯爵令息である兄が贈るものとなれば、これくらいでちょうど良いかもしれない。
兄も気に入ってくれたようですぐ購入した。
お相手の方にも喜んでもらえると嬉しいなぁ。想像するだけで顔がニヤつく。
「エルザ、少し横を向いてくれるかい?」
「え?これで良いかしら?」
サクッ
ん?なにか頭に刺さった、、??
「あぁ、とても良く似合ってるよ。本当に素敵だ。愛しのエルザ。」
蕩けた瞳で見つめてくる兄。
とてつもなく甘い言葉。
色気のある声。
はっ、、、、。
ちょっと待て。何か間違ってる。
もうどこから突っ込んで良いかもわからない。
もう何もかも違う気がする。
さすがはシスコン大魔王。
なんだかよくわからない涙で視界が霞む。兄の将来が不安です。。でもとりあえず御礼は言っておこうね、うん。
うるうるした瞳のエルザから御礼を言われ、それはもう満足そうに微笑むオルドだった。