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お誘い


「エルザ、次の休み僕に付き合ってくれないか?ちょっと行きたいところがあるんだ。」


久しぶりの家族全員での晩餐の席で兄が私に言った。ニコニコと周りには花が飛んでいる。もちろん比喩だが。何か良いことでもあったのかな。


「もちろんですわ!ふふ、久しぶりのお兄様とのお出掛け楽しみです。」


「えっ!?」


顔面蒼白の義父が叫ぶ。

グラスの割れる音も聞こえた。おいっ、、。


「どうかしましたか、義父上?」


義父の方を見もせずに兄が平然と尋ねる。


「私その日、王宮で仕事が入っているのだけど。。。」


「それはそれは、お忙しいことですね。」


微塵もそんなことを思ってないことが伝わる兄の口調。隠すつもりはないらしい。

優雅に紅茶を飲んでいる。


「私もエルザとお出掛け、したかった。。」


しょんぼりする義父を見て呆れた母が、しっかりしなさいよと言わんばかりに彼の背中を叩く。



あっという間に兄と出掛ける日がやってきた。私はルルに身支度を整えてもらっている。


今日は城下町に向かうとのことで、華美にならないよう、シンプルな濃い緑色のワンピースを選んでもらった。良く見ると、裾の方に同じく緑色の刺繍が施されており、品の良さを伺える。それでいて歩くたびにふわりと揺れるスカートがなんとも可愛らしい。


「髪型は、、そうですね。シンプルに編み込んでまとめ上げましょうか。その方がオルド様もお喜びになりますね。」


それでどうして兄が喜ぶのか分からなかったが、まぁいいか。


準備を終えて玄関ホールに向かうと、そこにはすでに兄が待っていた。


黒のパンツに白シャツという普段よりもかなりの軽装だが、兄本人からは、とてつもなく高貴なオーラが漂っている。美しい人はどんな格好でも美しい。


私に気付いた兄がこちらに身体を向ける。すっと胸に手を当て、優美な騎士の礼を取る。


「我が愛しの姫よ、花のように可憐な貴女をエスコートする栄誉をどうか私に与えてくれないだろうか。」


蕩けるような笑みを浮かべつつも、どこか縋るような表情で手を差し出してくる兄。


思わず見惚れてしまい、私だけを映すエメラルドグリーンの瞳に吸い込まれそうになる。

一瞬時が止まる。呼吸も止まる。



はっ。魂を刈り取られるところだった。。



うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

か、顔が熱くなる!やり過ぎダメ!!!

あまりの美しさと色気に眩暈がする。。


私の反応を見て、それはもう満足そうに微笑む兄。ニコニコ上機嫌である。


反対に、私は一気に不安になる。

今日一日耐え切れるだろうか。。


兄の手を取り、馬車へと向かう。


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