晴れのち雨
あの騒動からしばらく経って、クラスの雰囲気が少し変わった。全体的に明るく穏やかな空気になったように思う。
ひとり、ふたりと私に挨拶をしてくれるようになり、今ではクラスのほぼ全員と挨拶を交わす仲になったのだ。
挨拶っていいよね。
些細なことだけど、自分の存在をちゃんと認識してもらってるって思えるから、めちゃくちゃ嬉しい。居心地も良くなるよね。
このまま穏やかな学園ライフを過ごせるかも。
ふふふ。
休み時間、自席でそんなことを考えていた私は、自然と笑みが溢れた。
しかし、穏やかな感情は一瞬で消え去る。
「エルザ嬢はいるか?」
は???
声がした方を見やると、金髪碧眼の奴がいた。
な に し に き た !!
思わず親の仇の如く睨みつけ、、そうになるのをグッと堪える。それはもうグッと。
私は侯爵令嬢、私は侯爵令嬢、私は侯爵令嬢。
大事なことなので3回言いました。
荒ぶった精神を整える。
「殿下、何かございましたか??」
私は立ち上がり、殿下との距離は保ったまま、完璧なアルカイックスマイルで言葉を返した。
「あぁ、エルザ嬢。久しいな、息災であったか?」
「ええ、お陰様で(あなた様が今ここに現れるまでは)心穏やかに過ごしておりましたわ。」
他意を込めずにはいられない。
「それはなによりだ。で、話なんだが、夏季休暇中に王宮でガーデンパーティーを開こうと思ってな、学院の皆に声を掛けているのだ。」
へ、お誘い、、、??
え、どうしよう、、、
なるべく殿下には関わりたくない。。
勅命でしょうか、なんて聞いたらさすがに不敬で捕まるよね。
さぁ、どうしたものかと逡巡する私に天の声が聞こえた。
「まぁ!王宮でガーデンパーティーだなんて、素敵ですわね。ぜひ、クラスのみんなで参加させて頂きますわ。」
さすがうちのエミリア!!
なんて気が利くの!!
個人で返答がしにくいことを察して、クラスの代表者として彼女がまとめて答えてくれた。
色々あったしね。さすがにもう変な噂を立てられたくはない。
「あ、あぁ。では皆に招待状を送るから、気軽に参加してくれ。」
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「殿下、」
「何も言うな。」
教室の外に控えていたアイザックは、言いかけた言葉を飲み込む。
全くこの人は、、エルザ嬢には招待状を手渡しするんだって息巻いていたクセに、なんで手に持ったまま戻ってきたんだ。。
主の手からさっと招待状を抜き取り、自分の胸ポケットに仕舞う。
これ忘れずにアストルム侯爵家に届けないとな。。
王宮に戻ったら手配しよう。
はぁ。