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私の味方


あの後、一緒に停車場に向かう道すがらメンシスに言われた。


『心当たりはあるのか?』


私は無言で首を横に振る。


エミリア以外とは挨拶すら交わしたことはない。もはや全員敵に思える。


『言わなくて良いのか?』


メンシスは、誰に、とは言わなかった。

今回のことを公にしなくて良いのか、それに加え、加害者は当然罰せられるべきだという意味合いも含まれていたように思う。


私だって、なんのお咎めもなしに相手を赦すことは優しさではないってちゃんと分かってるつもり。


でも、兄に今回のことを言えば、関わった者全て徹底的に粛清されるだろう。それはさすがに気が引ける、、比喩ではなく血の海を見そうだ。。


これは、私の問題だから、自分で解決したいよね。出来るなら、もう二度とやるなって犯人に言ってなぜそんなことをしたのかと問い詰めてやりたい。



あ、、、



メンシスの言う通り、「言う」のもありかも。




***********




翌朝、いつもより少し早く家を出た。

担任のローラ先生に話をするためだ。



無事に先生と話が出来た私は、ホッとした気持ちで予鈴とともに座席に付く。その後すぐ先生が来たので、他の人も前を向いて姿勢を正す。


「おはようございます。今日は、授業の前に少しだけ良いかしら?アストルムさんからクラスのみんなにお話があるそうよ。」


その瞬間、クラス全員の視線が私に突き刺さる。


うん、想定通りの反応だ。

私は余裕の笑みを口元に浮かべて、その場に起立する。姿勢を正し、ぐっとお腹に力を入れる。


「昨日私のカバンが盗まれ、学院の敷地内に捨てられていたの。」


一瞬にして空気が固まり、緊張が走る。


私は敢えてゆっくりと周囲を見渡す。

私から目を逸らして下を向いたのは3人。

たぶん彼女たちね。


「それはもういいの。犯人の詮索はしない。代わりに皆さんにお願いがあるの。ねぇ、私になにか不満があるなら直接言って下さらない?話したら理解し合えると思うの。私は皆さんと仲良くなれるってそう信じてるわ。改めて、これからどうぞよろしくね?」


最後は先生にお礼を言って優雅に着席する。


ああああああ怖かったぁ!!!!

あぁもう泣きそう。。心臓に悪い目立ち方をしたわ。


でも、ちゃんと言えて良かった。

うん、スッキリした。


さてと、さっきの3人は、、、

見事に青ざめてる。。

うんうん、牽制は上手くいったかな。

これでしばらく平和に過ごせると良いのだけど。


でもちょっとやり過ぎた、、かも。。


こりゃもう誰も私に近寄らないよね。

そう仕向けたのは自分だけどさ、少し複雑。



ぱち、ぱち、ぱち、ぱち、、、



え???


控えめに手を叩く音が聞こえて斜め後ろを振り向くと、泣きそうな顔のエミリアが拍手をしていた。


「わ、わたしも、エルザ様ともっともっと仲良くなりたいです。これからもどうぞよろしくお願いします。」


いつもの控えめな彼女の声なのに、教室中に響き渡る。


あぁもうっ!

我慢してたのに、、


堪えていた涙腺が崩壊する。


こんな私の友達でいてくれて、

こんな私の味方でいてくれて、

こんな私の側にいてくれて、


心の底から感謝してる。



「ありがとう、エミリア。」



みっともない泣き笑いの表情で震えながらお礼を言った。

涙はしばらく止まらなかった。


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