表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/153

欲しかった言葉


体感にして5分ほど、本当にメンシスは戻ってきた。


「これを使え。」


相変わらず素っ気ない言葉遣いだが、こんなほぼ初対面の私に気を遣ってくれるなんて、とてつもなく良い人だ。あまりの優しさに泣けてくる。


目に涙を浮かべながら丁重にお礼を言って、差し出してくれたタオルを手に取ろうとして驚愕する。


「はぁっ!?」


涙は引っ込んだ。そして素が出た。


「こ、これ、、、なんで!?」


目の前に差し出されたのは、タオルではなく、新品の学院指定の通学カバンだった。


男子と女子でデザインが異なり、女子用のカバンは、一回り小さく焦げ茶色の革素材で出来ている。取手部分は手に優しく、シルク地で覆われている。布地には金色の刺繍が施され、高級感が滲み出ている。


そう、見た目から分かる通り、ものすごくお高いのだ。前世で言う、ハイブランドのバッグと同じくらいの値段がする。


間違いなく、ふらっと他人に渡していい代物ではない。


「こ、こんな高いの頂けません!!!」


思わず、人様の好意を完全に無視して全力でつっ返す。


「いや、返されても使い道ないし、むしろ困る。いいから使えよ。」


うーん、、たしかに。女性用だもんね。

でもこれもらうのはさすがにちょっとな、、

気が引ける。


逡巡している私を見て、

はぁ、とため息を吐き、メンシスは言う。


「お前は何も悪くないんだから、もう黙って受け取れ。別にバチなんて当たらない。」


あ…


私が欲しかった言葉。

あぁダメだ涙腺が崩壊する。


「あ、ありがとうございます、メンシス様。」


涙を堪えて今度は素直にお礼を言う。

私のために彼が差し出してくれたカバンを改めて手に取る。


ありがとう。ありがとう。ありがとう。

心の中で何度もお礼を言った。




にしてもこれ金貨何十枚という値段よね、、

お金のことを思い出し、一瞬で現実に戻る。


そんな大金いつも持ち歩いてるのかしら。

さすがは筆頭公爵家、、、ちょっと怖い。


あれ?でも今は手ぶらだよね?

胸ポケットとかに金貨入れて歩いてるのかしら。

じゃらじゃらとものすごい音がしそうだ。



「ちょっと、ジャンプとかして欲しいかも。」



「お前、何言ってるんだ?」



はっ!!!!

また声に出てたーーーー!!!


流石に言えません。


なのに、何度も真剣な顔で問い詰めてくるので、結局正直に白状しました。

うん、助けてくれた恩人だしね、ハイ。


それを聞いたメンシスは、後ろを向いて更には顔を手で隠し、肩を震わせていた。


あれ絶対笑ってたよね??


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ