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春の混乱


「うわ、やられた、、、」


思わず素で悪態をつく。


カフェテリアと図書館のちょうど間に位置する、よく手入れされた芝の上、エルザは呆然と立ち尽くす。


もうだいぶ日が傾き、時折頬を撫ぜる風にもう暖かさはない。そろそろ正門が閉まる時間帯だ。周りに人の気配はない。

昼間と違い、しんと静まり返る広場にひとり立っていると、どうしようもなく心細い気持ちにさせられる。


そんな彼女の目の前には、泥に塗れたカバンが投げ捨てられている。


前世でもこんな分かりやすい仕打ちを受けたことはなかった。でも残念ながらいじめを受けている人を見たことはある。


その時は、巻き込まれたくなくて、見て見ぬふりをしてしまった。そもそもなんて声を掛けるべきか見当もつかなかった。

何かあったら親なり先生なり信頼出来る大人に相談するだろうから、下手に外野である自分が騒ぎ立てるべきではないのだ、なんて都合よく考えたこともあった。


でも、された側になって初めて分かる。


いじめる側が絶対的に悪なのに、どこか自分自身を責めたくなる気持ち。人に知られたくないという羞恥にも似た気持ち。自分が何かしたのかもしれない。。そんなことまで無意識に考えてしまう。


いじめられたなんて、恥ずかしくて誰にも言えない。私は悪くないのにそんな思考になる。実際、クラスのみんなから避けられていることを家族に話していない。


心配を掛けたくない気持ちが一番だが、純粋に知られたくない。友達も作れないやつって思われたくない、失望されたくない。


でもそんな思いとは裏腹に、誰かに気付いてほしい、大丈夫だよ、何も悪くないよってそう無条件に言って欲しいという気持ちもある。




「何か、あったのか?」




え??


いきなり聞こえた声に驚き、ぱっと顔を上げると、夕闇に煌めく銀髪と気遣わし気に戸惑いを見せる瞳が目に入った。


ど、どうして、メンシスがここに??


突然のことに混乱する私を差し置き、彼は、泥だらけのカバンとエルザの表情を見て瞬時に状況を理解する。


「少しここで待ってろ。」


ぶっきらぼうだけどやや焦った声色。

すぐに来た道を引き返し、どこかに行ってしまう。


え、、、??

なにこれ現実?

いや、私の妄想かも。。。


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