ちゃんと避けたつもりだったのに。
今日の夕飯は、チキンの香草焼き、バターたっぷりのマッシュポテト、きのこのホワイトスープ、それにいつもの白いパンとサラダ、最後にデザートのプリンが運ばれてくる。
上位貴族にしては質素なメニューだが、ひとつひとつ最高級の食材を使い、丁寧に下処理をした上で、調理されている。そのおかげが、見た目よりも食べた後の満足度が高い。
あぁ、美味しいものってなんて幸せなんだろう。今日は一段と美味しく感じるわ。ニコニコしながら大好きなプリンを口に運ぶ。
「エルザ、今日は何か良いことでもあったのかい?」
向かいの席に座る兄が、見惚れるほど優雅な所作で食後の紅茶を飲みながら尋ねてくる。
兄の食器だけプラスチックで出来るているんじゃないかと疑いたくなるほど音がしない。
今日は珍しく兄と2人だけの夕飯だ。
「ええ、お兄様!そうなんです、私今日メっ、、、」
メンシス様とお話したの。
学院で初めて人と会話したんだと思ったら、嬉しくって!!またお話出来たら嬉しいわ!
と、勢いよく今日のことを話そうとしてすぐさま口を閉じる。
いや、これ兄には言っちゃいけないやつだ。
自分の生存本能が激しく反応する。
「め、、??」
「め、め…、、目元が素敵だねって褒められたの!そ、そうなのよ。お化粧してたからなんだか嬉しくって。明日からもおめかしして行こうかな、なんて、ね。」
「さすが僕のエルザだ。そのままでも十分魅力的な君を周りは放ってはおかないだろう。益々綺麗になって、花の妖精に連れ去られてしまわないか僕は時々不安になるよ。」
うん、後半はいつもの如く何言ってるかよく分からなかったけど、たぶん上手く誤魔化せた、はず。心の中でガッツポーズをする。
「で?誰にそんな粗雑な褒め言葉を言われたんだい?」
し、しまったああああああああ!!!
あらぬ方向に勘違いされた。
完全に地雷踏んだ。
それはもう見事に踏み抜いた。。
やっちまった。
「ち、義父上に言われたの。」
「ごふっ」
目の前で兄が盛大に咽せた。
兄よ、そして義父も、ごめんよ。