プロローグ
「君と生涯を共にしたい。私と婚約して欲しい」
目の前の、金髪碧眼の見た目麗しい彼から発せられた言葉。
広場とした庭園。色とりどりの薔薇が咲き誇る。あぁなんて素敵な景色なのだろう。空は晴れ渡り、花々の香りを含んだ柔らかな春の風が心地よい。ここに紅茶とお菓子があったら、いつも以上に美味しく頂けることだろう。今手元に何もないのが悔しい。
って、現実逃避している場合ではなく、
えっと、、今なんて言われた??婚約??誰と誰が?というか、目の前の男の人は誰だろう、、年齢は自分と同じくらい。まるで王子様のような高貴な雰囲気。
まぁ王子様なんて日本にいないけどね。
え、ニホン??にほんってなんだっけ??
その瞬間前世の記憶が勢いよく流れ込んでくる。
満員電車、コンビニ、スマホ、テレビ、、
なになになになに!
情報量の多さに理解が追いつかない。
唖然とした表情で棒立ちの私。
それを見た相手も困惑の表情を浮かべる。
とりあえず、ここを去ろう。一旦落ち着いて状況を整理しよう。
「エルザ!こんなところにいたのか。ほら帰るよ。」
そう思った瞬間、ちょうどよく助け舟が。
駆け寄ってきた金髪にスカイブルーの瞳を持つ整った顔の男性。
自分が求婚されていたことなどすっかり頭から抜け落ちていた私。相手に一言も声を掛けず、差し出された手を掴んで足早にその場を立ち去った。
「え。。。。」
困惑したままの彼を残して。