異世界×JK×ギャル~異世界に召喚されて無垢っぽい不遇の公爵令嬢と仲良くしたらサイコパス令嬢が爆誕しましたっ?!~
短編です。楽しんでいただけると幸いです。
「あなたがミアさんですわね。まずは着替えましょう。その破廉恥な装いと珍奇な化粧は目立ちすぎます」
「わ、お嬢様じゃん! 肌しっろ! 髪もキレー! ファンデ何使ってんの? それともガチお嬢様ってもう生まれた瞬間からキレーなの!?」
「私にはヴィオレッタという名前があります。それに何を言ってるかわかりません」
「ん? 待って待って待って。メイク無し? 素でそれってマジでパないんですケド!」
その日、現代日本など知らない公爵令嬢が、ギャルを知った。
***
「魔力ゼロ、か……使えんな」
「あれだけの労力と資金を掛けた勇者召喚も失敗ですか……この娘はどうしましょう。殺しますか?」
「いや、何か使い道はあるかも知れん。適当に面倒を見ておけ。処分はいつでもできるからな」
勇者召喚の間。でっぷりと太った男たちの値踏みするような視線を受けて私はイライラしていた。原宿にいたはずが、気付けば石造りの建物に連れて来られてた。
コスプレもかくやといった服装のおっさん達がマジな顔であーでもないこーでもないと喋ってるとか、ヤバい薬でもキメてるとしか思えない。
私のことを見るねっとりした視線もマジでキモかった。
「そもそも勇者は黒髪黒目じゃないのか。本当に異世界の人間なんだろうな」
「カビが生えたような短髪は確かに伝承とは違いますな。ただ、こんな珍妙な恰好は異世界人しかあり得ないかと」
……カビが生えた?
毛先をオリーブアッシュにしたウルフカットは『美容室のホームページに載せたいから写真撮らせてくれ』って言われたし、私も気に入ってる。
この髪型と今日のコーデは最高に可愛いはずだ。
こないだもこの服で歩いてて”読モやってみないか”って言われたしダサいってことはありえない。
どう考えてもおかしいのは私じゃなくてこいつらの感性だ。
ムカつく……けどグッと我慢。
だってこいつらどう考えても普通じゃないし。私を拉致ってきて変なコスプレ会場に連れてきて真顔で演技始めてるし。
キレイメでコスプレ衣装が映える人たちにきちっと頼まれたら私だって少しは付き合っても良い。最後に撮影させてもらって投稿すれば万バズの可能性もあるしちょっと面白そうだし。
でも変なおっさん達相手はあり得ない。
通報してやりたいけどスマホ出してる間に逆上されてしまいそうで怖い。ヒール履いてきちゃったから逃げらんないし。
……ていうかココ寒くない?
オーバーサイズのニットはオフショルダ―で肩が見えるデザインだし、黒革のミニスカートの下は生足だ。沁みるような寒さが伝わってきてお尻が冷たい。
突然拉致ってきてこの扱い……こいつらがいなくなったらソッコー通報してやる。
「預けている間にまともな服が着れる程度に教育しておけ。貧相な身体で娼婦以下の服装など、冗談としても出来が悪い」
「だが、どこに預ける? 勝手に勇者召喚したことがバレたら──」
「大丈夫だ。グレイシア公爵に預ける」
「ああ、なるほどなるほど。ヴィオレッタに押し付けるわけか」
おっさん達が、意地の悪い笑みを浮かべた。
「魔道具作りしかできない出来損ないとはいえ、一応は公爵令嬢だからな」
***
ヴィオレッタ・グレイシア公爵令嬢。
この国の四大公爵家のうちの一つに生まれたものの、貴族であれば当たり前のように使えるはずの魔力が使えない”落ちこぼれ”。魔力はあるものの、それを放出するのが苦手で、今は軟禁されながら魔道具を作らされているんだとか。
私はそんなヴィオレッタのところに預けられることになるらしい。
……ハッキリ言うけど、意味不明な設定が山盛りで胃もたれしそうだった。拉致されたってだけでキャパいのにこれ以上ややこしいこと言わないでほしい。
あの後、おっさん達の命令でどっかに連れてかれそうになったんだけど、兵士コスの人に色々聞いたんだけど、出るわ出るわ。
魔法に貴族、勇者召喚。
全員で変な薬キメてるか、ヤバい宗教にハマってんのかと思ったけど、疑う私に対してホントに手からぼわって炎を出して見せた。
兵士コスじゃなくて騎士なんだとか”今晩銀貨二枚でどうだ”とか言われたけど、パパ活女子扱いとかマジキモいしフツーにそれどころじゃない。
――魔法。つまり私は異世界に来たってことらしい。
ちなみにスマホは圏外。
現実逃避で見上げた空には七つの月が浮いていた。とりあえず画像撮ったけど、プイッターにもウンスタにも投稿できないのでいまいちアガらなかった。
私と同い年くらいの騎士は聞いてないことまで教えてくれたんだけども、その中で一番気になったのがこのヴィオレッタに関してだった。
公爵令嬢ってのは騎士より偉い職業?らしいんだけど、”落ちこぼれ”とかフツーに言われちゃうってどーゆーコトって思ったし、おっさん達も”落ちこぼれ”って言ってたから。
で、会ってみたら睫毛がバッサリで肌めっちゃ白い、綺麗な女の子だったってわけだ。
どんな頑張って染めてもこうならないだろ!ってくらいキラキラの金髪に、吸い込まれそうなほどの蒼の瞳。女の私でもドキッとしてしまうほどの美人だ。
さらに言えばおっぱいも超ド級。シンプルなワンピースドレスだからこそ胸元がすンごいことになっている。日本に来たらグラビアアイドルもモデルも裸足で逃げ出すレベルだ。
後で一緒に撮らせてもらおう。
「って訳で仲良くなりたいなーって」
「左様ですか……では、夕食の時にでもまた改めて自己紹介でも──」
「えー? いま話そうよ。多分同い年くらいっしょ?」
「すみません。魔道具を作らねばならないのです」
そういや魔道具を作らされてるとかって言ってたっけ。
「それってどんなもんなの? スマホの電波死んでて暇だし見ても良い?」
「死んで……? え、ええ。見るくらいなら構いませんけれど」
ツタとかがエグい屋敷。その端っこにある広い部屋がヴィオレッタの作業部屋だった。
工具っぽいのをガチャガチャやって金属の板を加工して形を変えたり、不思議な模様をつけたりしていた。
紫色の宝石を取り付けてひと段落。豪華な模様付のまな板みたいなものが出来た。
読めない文字が綴られた紙を取り付けて、ふぅ、と息を吐くヴィオレッタ。額に汗が浮かぶ様子はどことなく蠱惑的でドキドキする。
「すご……」
白魚みたいなきれいな指であっという間に道具を作る様子はまるで魔法のようだった。手のひらから炎を出すのよりも、ずっと綺麗な魔法。
「……私は、これしかできませんから」
「これしか? 全然スゴいよ? だって私には絶対できないもん。これ、何する道具なの?」
「かまどや暖炉に火を入れたり、必要なら薪代わりに直接炎を出したりするものです」
「えっ? じゃあこの箱があれば騎士なんて要らないじゃん」
思わず呟けば、ヴィオレッタは大きな瞳が零れてしまいそうなほど驚いていた。
「騎士を相手に要らないなんて……」
「あ、ごめん! ヴィオレッタってお嬢様だし清楚っぽいしもしかしてドン引き?」
「あ、いえ。そういうのを言えちゃうのってすごいなって」
「いやー、だって誰が偉いとか知らないしー」
あと普通にパパ活騎士がキモかったからってのもあるんだけど、ヴィオレッタって本当にお嬢様っぽいしショック受けちゃいそうだから黙っとく。
「そだ。ヴィオレッタのこと、ヴィオって呼んでも良い?」
何の気なしに訊ねたけれど、ヴィオの変化は劇的だった。透明感のある肌がかぁっと赤くなり、海よりも深い蒼の瞳からはぼろぼろと涙が零れた。
「え!? ごめん、嫌だった!?」
慌てて顔を覗き込めば、彼女は泣きながらも首を横に振った。
「……違うんです。嬉しくて。今まで仲良くしてくれる人、いなかったから」
あまりにも悲しい言葉。ほっそりとした肩を抱き、背中を軽くさすってあげる。
……ちょっと待って。あの、えー……マジ?
ブラしてないのにおっぱい超でっかい。垂れないもんなの?
食べてるものとか、普段してることとかちょっと聞いてみようかな。ミートテックは多少着ているけれど、私は胸が薄い。いや、さすがにAじゃないけど! ギリだけど本当にAじゃないから!
おっぱいに想いを馳せているとは露知らず、ヴィオレッタは潤んだ瞳で私を見据えた。
「……あの、ありがとうございます」
「敬語なんて使わなくて良いよ」
「癖なんです……でも、それでしたらミアって呼び捨てにしても良いですか?」
「もちろん!」
「ありがとうございます、ミア」
なんなのこの可愛い生き物……!
こんなん性別超えるやろ!
心の中で悶えながらインチキ関西弁になる私を泣きはらした目で見つめ、蕩けるような笑みを浮かべた。
……性別どころか時空も超えるわ。
「ふふふ。なんだか恥ずかしいですね?」
にっこり笑ったヴィオはやや名残惜しそうに私から身体を離した。
「元気も出ましたし、ご飯が少しでも多くなるようにもうちょっとだけ頑張りますね」
「え?」
「ごめんなさい。公爵令嬢って言っても、本当に肩書だけなんです」
ヴィオが言うには、魔力が放出できないというのは貴族として致命的なことらしい。こんなにも美人なのにはるか格下の貴族とすら婚約もできず、実の父からは”魔道具を作らないならば放逐する”と宣言されてしまったんだとか。
このはなれに押し込まれて、週に一度食材と魔道具の注文書を渡される。熱が出ようが怪我をしようが、言い渡された魔道具が出来ていなければ来週の食材が減る。
使用人もそんな境遇を知っていてわざと扱いにくい食材にしたり、質を悪くしたりと意地悪をしてくるらしい。一応、建物の裏にちょっとした畑はあるらしいけれども今残っている食材では、おそらく週末まで私と二人分は厳しいだろうとのこと。
「たくさんつくって、ミアの分も貰えるように頼んでみます」
ヴィオは悲しそうな微笑みを浮かべ、机に向かう。
「あっ……どうしましょう」
「どうしたの?」
「指示書をめくったら『新しい魔道具を開発しろ』って」
「それって簡単なこと?」
私の問いに、ヴィオは頭を振った。
「新しい発明は特許院に申請すればすごいお金が貰えるので時々命じられるんですが、今までできたことがなくて……私だけなら、一週間、ご飯を我慢すれば良いだけなんですけど」
「頑張って魔道具作ってるヴィオを独りぼっちにしただけじゃなくて、無茶振りした挙句食べる物まで減らすって何それ!?」
「ごめんなさい。私がダメなせいで」
悲しそうに目を伏せるヴィオに何だか腹が立ってきた。
「ヴィオ、顔を上げて! 俯いちゃ駄目!」
俯くヴィオに、”あの日”の自分が重なった。
***
小学四年生の夏、両親が離婚したせいで私はママの実家に引っ越すことになった。
それまで生まれ育った土地を離れた私を待っていたのは、”片親のよそ者”を寄せ付けない空気だった。
遊びに誘っても断られる。
持っていた文房具にいたずらされる。
喋ったときのイントネーションの違いをからかわれ、くすくす笑われる。
今にして思えば大したことないけれど、当時の私はそれにとても傷ついた。離婚や引っ越し、転職でバタバタしていたママにも、持病があって病院通いだったお祖父ちゃんお祖母ちゃんにも相談できず、私はどんどん俯きがちになっていた。
離婚直前、最後にあった日に父から貰った人形だけが私の癒しだった。
「ハハッ、見ろよコイツ、変な人形持ってるぜ」
「公園まで来て一人で人形遊びかよー! ほら、木の上に引っ掛けてきてやるから木登りで遊べよ」
「ここは私たちの公園なの。アンタは使っちゃ駄目」
「もう四年生なのに人形ってイターい。そんなんだから一緒に遊びたくないのよ」
男子も女子も、他のクラスや、学年の違う子まで。
私には一人も味方がいなかった。
「か、返して……!」
勇気を振り絞り、涙を零しながら発した言葉さえも馬鹿にされて笑われる。
俯いた私の頭に、温かな何かが乗せられた。
それが手だと気付いた時には、涙を吹っ飛ばすほどの声が公園に響いていた。
「皆で寄ってたかって女の子ひとりイジめてるんのかよダッセェな」
女の人とは思えない荒々しい言葉遣い。
ビックリして見上げれば、そこにはブリーチした白髪に小麦色の肌、そして睫毛をばっさばさに盛った女の人がいた。
オフショルダ―のトップスはヒョウ柄で、黒のミニスカに革製のロングブーツを合わせた姿は、どこからどう見てもギャルだった。
「だ、誰だよババァ!」
「関係無いだろ! どっかいけよ!」
「こ、こわ……」
メイクでバッチバチになった目で文句を言い始めた子供たちを睨んだその人は、ツカツカ歩いてって人形を取り返した。
「あ、クソ!」
思わず掴みかかった主犯格の男の子だが、女の人は間髪入れず平手を振るった。
パチンっ! と威勢の良い音がして男の子が驚いて固まる。
「ツメ取れたら嫌だから手加減したけど、ダサすぎ。キショい。失せろ」
強烈な言葉に面食らった男の子は、涙目になりながら逃げ出した。加担していた他の子たちもそれにならっていなくなる。
「はい、これ。大切なモンなんでしょ?」
「あ、ありがと、ございます」
「顔上げて。泣くのもやめな、みっともない」
女の人はしゃがみ込んで、私の顔をグイってした。男の子をビンタした時は怖かったけれど、太陽みたいな笑顔と温かみのある瞳が私を射抜いた。
「泣いてメソメソしてたら女が下がるよ」
「さが、る……?」
「そう。ニッコリ笑って、自分の可愛さを全力で伝えるの」
「だって私、かわいくない……恥ずかしいし」
「女の子はね、誰だって絶対に可愛くなれるのよ……アタシを見て」
その人は私の前でクルっと回ってくれた。
「サイコーの服着て、サイキョーのメイクと髪型。芋だった頃は男と話したことなんて無かったけど、こうなってからは毎晩入れ食い」
「いれぐい?」
「いろんな人が素敵だねって褒めてくれるってこと。笑われるのも馬鹿にされるのも、全然恥ずかしくない。むしろそんなことにビビってる自分が一番カッコ悪い」
だから、と続いたその言葉は、今でも私の指針で目標だ。
「好きなことを好きなようにして、最高の笑顔で生きてくの。誰かに何か言われても、どう思われてもカンケーない。我慢を強制されたりしないし、誰にも負けない。笑う奴はぶっ飛ばす」
今思うと小学生相手に入れ食いとかすごい発言だし、意訳もヤバい。
でも、その時の私にとっては、神様だと思ったんだ。
孤独で、真暗で、すごく苦しい場所から救い出してくれた神様。
「だからギャルになろうって思ったワケ。まぁド田舎だから私以外にギャルなんていなかったけど」
何しろ、毎月一日発売の”ド悪魔クジャク”が入荷するのが4日になるような田舎である。そうなるのも致し方ない。
「……好きなことを、好きなように……」
あの人の話を聞いたヴィオも思うところがあったのか、オウム返しに呟いた。
「その言葉のお陰で私は生きて来られたの。中学校でまたいじめられた時にも跳ね返せたし、高校だってそう。ヴィオも我慢する必要なんてないよ。嫌なことされたら怒って良いし、苦しい時は助けてって言って良いんだよ」
「ミア……本当に、本当にありがとうございます」
ヴィオははにかみながら私に笑みを向け、それから腕まくりをした。
「勇気と元気をもらいました。とりあえず出来るところまでやってみようと思います」
「私も手伝うよ。できることあるかわかんないケド」
「ありがとうございます。ミアがいてくれるだけで、何でもできそうです」
***
それから、少しでも助けになれるように色んな話をした。
一番詳しいのはメイクとかファッションだけど、魔道具って要するに電気とかエンジンが必要な道具みたいなものだし採用されたのはうちわ代わりのハンディファンと、ポット型の加湿器だけだった。
ヴィオ曰く、”今までなかったので作ってみますが、認められるかは分からない”とのことだった。
私のイチオシは美顔器。どの世界も女性は美容に熱心なので絶対にバズると思ったけど作り方が分かんなかったし。
超音波? 的な? 何か? 説明してる私の方がハテナだらけになるのでパスだ。
ちなみにヴィオが食いついたのは工具とか調理器具。調理器具はともかくとして工具はまったく詳しくないからそれっぽいことしか言えなかったけども。
……知識的にはそのくらいだったけれど、意外なところで役に立つことができた。
「んー! ミアのご飯は本当に美味しいです!」
「そお? あり合わせっていうか、普通のものしか作ってないけど」
「ミアのご飯に比べたら、今まで私が食べてたのは料理じゃないですよ! もうコレ無しでは生きていけません!」
干し肉と適当な野菜で作ったリゾットを頬張りながら、幸せそうに笑うヴィオをみると私も嬉しくなってしまう。
豚肉の塩漬け的なのがあったから作ってみたんだけどドンピシャだった。
カッチカチだったから超不安だったけどよく考えたら、生ベーコンみたいなもんだもんね。良い出汁が出てくれて助かった。
「元の世界では、料理を学んでたんですか?」
「違う違う。ウチ、ママは仕事で忙しかったしお祖父ちゃんお祖母ちゃんも具合悪かったから、料理できる人がいなかったの」
片田舎でギャルというものを目指しながらも料理を頑張った。
仕事から帰って来てヘトヘトなママも、具合が悪くて床に伏せがちだった祖父母も、見栄えがよくて美味しい料理をつくると喜んでくれたから。
家族の喜ぶ顔が見たくて色々調べたり練習した結果がこれである。
「ええっと……こんなに美味しくしてもらってから言うのもアレなんですけど、おコメなんて本当は家畜用の穀物なんですよ? あとは不作でどうしても食べるものがない時用だったり」
「あー、私の世界でもそんな国があるって聞いたことある。でもまぁ、美味しければ良いっしょ?」
「ええ。”誰かに何かを言われても、どう思われてもカンケーない”んですよね」
「そうそう。むしろ他の人が食べないなら安く手に入るしラッキーじゃん」
「ですね。……生まれてから今まで、こんなに楽しい気持ちなのは初めてです」
「エッ!? 今までなんか楽しいとか嬉しいって思ったこと無かったの?」
私の問いに、ヴィオは細い指先を顎に当てた。
「ヤギさん……ですかね?」
「ヤギ?」
「ええ。使用人たちの嫌がらせで、食材として生きたヤギさんが連れて来られたことがあったんです」
「ええええ……どうしたのそれ」
ドン引きである。
「色々悩んだんですけど、〆ました」
「……すご」
生き物を〆た経験はない。いや、貝とかならワンチャンあるかも知れないけど、さすがにヤギとはレベルが違う。
見た目からは想像もできないワイルドな結果に目を剥くが、当のヴィオはそれに気付かずに言葉をつづけた。
「命を奪うってすごく怖かったし可哀想でしたけど……でも、思ったより呆気なかったですね」
干し肉や塩漬け肉と比べると食べれるお肉が桁違いに多いのが嬉しかった、と告げるヴィオに脳がバグりそうになる。ヤギを自ら解体して食べる美少女……!
いやこれもまた”どう思われてもカンケーない”ってことなのだろう。
「それに、私みたいな人間でも”奪う側になれる”って思ったらゾクゾクしちゃいまして」
…………ん?
「さて。美味しいご飯もいただきましたし、ミアから頂いたアイデアを形にするために、もう少し頑張ってきますね」
「あ、ハイ」
なんか、深い闇を感じた気がするけど、えっと……まぁ深く考えるのはやめとこう。
***
それから一ヶ月が経った。
ヴィオは寂しがりで、私の姿が見えないとおろおろし出すようになってしまった。お風呂とかトイレの時とかはちょっと困ることもあるけれど、なんか妹が出来たみたいで可愛かった。
何より今までずーーーっと独りぼっちにされてたヴィオを邪険にすることができず、ずるずると求められるがままになっている。
ヴィオは単純に寂しいから私と一緒にいたいだけってのはわかってるけれども、一緒のお布団に潜り込んできて抱き着かれたり、お風呂に突入されるのはけっこう辛いものがある。
閑話休題。
ヴィオの作った魔道具。それを受け取りにきた公爵家の使用人があからさまに嫌そうな顔をして、代金代わりの食材を置いていく。
「チッ、”おちこぼれ”のくせに……公爵閣下の温情に感謝するんだな」
ヴィオが魔道具を作るとき、食材が減らされないように毎週何かしらのアイデアを出してたんだけど、そのうちのいくつかが特許院に認められたらしい。
やや豪華に、そして量が多くなったのはそのご褒美ってことだろう。
「ミア、やりましたよ!」
「んー」
「ミア? ご飯、豪華になりますけど……嬉しくありませんか?」
豪華になったのは間違いないけれど、ゴミが混ざったような小麦が真っ白なものに変わったり、今までは存在しなかったバターやらソーセージみたいな加工品が混ざっていたりする程度だ。
「本当ならその特許院ってとこからたくさんお金を貰えてたはずなんでしょ? 頑張ったのもすごいのもヴィオなのに、意地悪してる奴等にほとんど持ってかれちゃうのが悔しい」
「ミア。私はミアがそう思ってくれるだけで充分ですよ」
ヴィオが私のことをぎゅっと抱きしめた。
この一ヶ月でヴィオはずいぶんと積極的になった。自分の感情や考えを恥ずかしがらずに言えるようになってきたし、私に笑いかけてくれることも増えた。
ちなみに見た目もずいぶんと変わった。
「ミア、今日はどうでしょうか?」
「かなり良いと思う! 目元はやっぱりピンクが似合うね!」
「ありがとうございます。ミアの指導のおかげです」
私の持っていた化粧品を使ってヴィオにメイクを施したのだ。今までの清楚な雰囲気から一転、今にも壊れてしまいそうな雰囲気をまとったヴィオは浮世離れした美しさになった。
マットな質感のファンデに、泣きはらしたように強調された目元。
そして血の色よりも濃いリップ。
──いわゆる、地雷系メイクだ。
これがばちこりハマった。
元々の美しさや本人の置かれた境遇も相まって破裂寸前の爆弾みたいな危うさがあり、どうしても目が離せなくなってしまうのだ。
さらにいえば、服装もばっちりだった。
持っている服はワンピースドレスが中心だったので、モノトーンにするだけで良かった。地雷系ファッションならピンク×黒あたりが基本なんだけれど、本人が可愛すぎるのでモノトーンの方が映えるまであった。
目減りする私の化粧品をみて、そのうちどうにか手に入れてもらわないとなぁ、と思いつつも、メイクをバッチリ決めた時に”アガる”のは分かるから止められない。ほんっとうに可愛いしね。
「ふふっ。もっともっと、色んな事を教えてくださいね?」
「教えられることあるかなぁ」
どう考えても私よかヴィオの方が頭良いし、私の言えることはドンドン減っている気がする。
日本のことを話し終えたら、後はご飯でサポートするくらいしかできないからなぁ。
それだって、得意なつもりではいるけれどあくまでも一般人レベルだ。コックさんどころか、飲食系のバイト経験すらない。
どうしたものか、と思案したところでバンッッッ、とすごい勢いでドアが開けられた。金属の鎧を身に着けた人たちがぞろぞろと入ってくる。
「ここに異世界から来た女が……ふん、お前か」
「だ、誰?」
「黙ってついて来い!」
「きゃっ、痛ッ! やめてよ!」
「ミア! やめて! ミアを離して!」
「うるさい! ”できそこない”に用はない!」
「ミア!」
「ちょっと! ついてくからヴィオに乱暴しないで!」
拘束されて無理矢理引きずり出される私にヴィオが手を伸ばす。それを止めるために複数の男たちが寄ってたかってヴィオを押さえつけていた。
「やめてって! ヴィオに酷いことしないで!」
「ミア! ミアッ!!」
「うるさい! 良いからさっさと来い!」
こうして、私は訳もわからないまま連れ去られることになった。
***
「明日からは楽しい楽しい拷問だ。せいぜい楽しみにしていろ」
そう宣言したのは初日に出会ったキモいおっさんの一人だった。
理由はただの逆恨み。
ヴィオが新しい発明をしたことで、ヴィオパパの立場がぐっと強くなったのが面白くないらしい。アイデアの出元である私を取り上げてこれ以上他のアイデアを出すことがないようにして、拷問で使えそうなアイデアを絞り出して殺すつもり、とのことだった。
……マジで意味わかんない。
私はもちろん無関係だし、ヴィオだってパパとの関係ははっきり悪かったはずだ。
おっさん同士の喧嘩に私たちを巻き込むの完全に意味不明だし、私を拷問って結論はもう完全に頭が沸いてるとしか思えない。
とはいえ、私にできることは何もない。
「寝るか」
申し訳程度の夕飯を掻き込んで、牢獄の端っこにあった薄っぺらいベッドに潜り込んだ。
……意味わかんないし、拷問されるのは怖かった。
涙が出てきて思わず自分の身体を抱きしめた私。その脳裏に浮かんだのは、ヴィオとの生活だ。
前向きになってくれた。
私のことを好きだと言ってくれた。
それが”そういう”意味じゃないと分かっていても、とても嬉しかった。
「……ヴィオ、泣いてないかなぁ」
ぽつりと呟いた言葉は冷たい石壁に染み込んで消えた。
***
その夜、私は夢を見た。
中学三年生の冬。私が、再びイジメに遭っていた時の夢だ。
『ねぇ、知ってる? 四組の美亜って子』
『知ってる。あのギャル気取りっぽいやつでしょ』
『そうそう。あいつ、女が好きなんだって』
『え? マジ? 女の癖に女が好きなのかよ』
『一組の子が告られたって』
『うわー、じゃあ体育の着替えとか見放題だし盗撮とかしてたりして』
『女の裸見てめっちゃ興奮してんだろ? キモ』
男が嫌いだった。
もともとの気質もあるのかも知れないし、パパがお酒を飲むとママや私を殴る人間だったからかも知れない。普段は優しかったし、パパのことになると未だに頭の中ぐっちゃぐちゃでどう考えて良いか分からなくなるけれど、とにかく私の恋愛対象は女性だ。
噂になったような盗撮なんて絶対にしてないし、誰彼構わず下心を持つようなことはない。
でも、”やってない証明”はできないし、”下心を持っているかどうか”なんて調べる方法はない。
噂は尾ひれはひれがついて私の家族の元まで届いた。ママも祖父母も私のことを信じてくれなかったし、理解もしてくれなかった。
それでも折れなかったのは、あの日、私を助けてくれたお姉さんの言葉があったからだ。
『誰かに何か言われても、どう思われてもカンケーない。我慢を強制されたりしないし、誰にも負けない。笑う奴はぶっ飛ばす』
ぶっ飛ばすほどの気合も腕っぷしもないけれど、でも負けない気持ちだけは持ち続けることができた。
私が異世界なんて意味不明な場所に放り込まれても大丈夫だったのは、その言葉のお陰だ。
いやまぁ、普通に向こうに対する未練がほとんどないから、かも知れないけど。祖父母は亡くなったけどママとの関係は未だに冷えてるし、地元に変えれば目立つギャルファッションと”噂”のせいでひそひそされるもんね。
その証拠に、死を突きつけられて真っ先に出てくるのは、
「……ヴィオ」
私を受け入れてくれた、健気で純粋な女の子。浮世離れした美しさを持ちながらしかし、ひとりの人間として悩み、苦しんでいた女の子。
……一目ぼれだった。
気持ち悪いと軽蔑されることを恐れて、ついに言えなかったけれど、それはかえって正解だったかもしれない。
少なくとも、幸せな思い出を握りしめていられる。
下が地面のままになっている掘っ立て小屋みたいなところに連れて来られた私は、地面から生えた十字型の丸太に鎖でつながれてしまった。
「ふん。娼婦みたいな服だから知識など何もないと思ったのが間違いだった。有用なアイデアを早く全部出せ。そうしたら楽に殺してやる」
醜悪な笑みを浮かべ、醜悪な言葉を発したおっさん。
その手に千枚通しみたいな極太の針が握られているのを見て、思わず身体が震えた。逃げようにも身動きが取れなかった。
「ああ、娼婦としてサービスするというならば、拷問に手心を加えてやってもいいぞ? ”おちこぼれ”がここに来るまでの繋ぎだがな」
「ヴィオがここに……?」
「ああ。余計な発明をされても面倒だからな。できそこないとはいえ身体だけはそそるからな。しっかりとしつけて、飽きるまで飼ってやる」
頭が灼けそうなほどの怒りが沸いてきた。
悔しい。
ヴィオを馬鹿にされて。
私の命を粗末に扱われて。
それでも何も抵抗できないのが悔しかった。
ああそうか。私、このまま何もできずに死ぬんだ。
そう思うと、今度は心臓をギュッと掴まれたように苦しくなって、手足の指先から寒さが沁みてきた。
死にたくない。
怖い。
ぐちゃぐちゃになった感情が溢れだす。
「まだ拷問は始まってすらいないというのに、もう泣いているのか……先にその鬱陶しい目をえぐってやろうか。片方だけなら良いだろう」
ニヤニヤと笑うおっさんが私に手を伸ばす。動けないままに身をよじってなんとか逃げようとする。
汚い手で触られたくない。
なんでこんな目に合わないといけないんだ。
歯を食い縛ったところで、ドドド、と低くけたたましい音が聞こえてきた。
耳慣れないその音に合わせるかのように、微かに悲鳴が混じっていた。
「……何だ?」
怪訝な顔をするおっさん。
音は高くなったり低くなったりしながら、どんどんこちらに近づいてくる。同時に悲鳴も鮮明なものになった。
……何が起きてるの?
まったくついていけてないまま、ついに音がすぐ近くまでやってきた。
そして、ぞぶりと壁からソレが生えた。
ジャラジャラと細かい刃がついたチェーン付きの刃を高速回転させて削り取る、本来ならば木材の伐採に使う道具。
──チェーンソーだ。
「探しましたよ、ミア」
壁を削り斬りながら無理矢理出入口を作ったのはヴィオだった。
細腕には似合わない大ぶりなチェーンソーを握り、黒とダークレッドのツートーンコーデに身を包んだヴィオが入ってくる。
「ヴィオっ!」
「ミア、今すぐ助けます。ちょっとだけ待っていてくださいね」
言いながら、おっさんに向かい合うヴィオ。その顔には、場違いな笑みが浮かんでいた。
「こ、こんなことをしてただで済むと思うなよ!? 貴様の家ごと潰してやるからな!」
「……どうぞ?」
震えながらも威嚇するおっさんに対し、ヴィオは本気で理解できないと言わんばかりに首をかしげた。
当たり前である。
ヴィオは家の中で冷遇されていた。人質になるどころか、潰れればスッキリまであるだろう。
「家なんてどうでも良いです。好きにしてください」
「ふざけるなっ!」
「ふざけてなどいません。どうぞ、本当に潰してみてくださいな」
本気のヴィオにおっさんがたじろいだ。
一歩。
ただそれだけの距離をヴィオが近づいただけで弾かれたように動いた。
私の横に、炎が燃える手のひらを突きつけたのだ。
小さな悲鳴をあげた私に、ミアの目付きが変わった。
「それ以上近づいたら、この女を」
何かを言おうとしたおっさんの首元にチェーンソーの切っ先が当たる。
「私みたいな人間でも奪う側になれるんですよ。──私からミアを奪おうとする者は、全てを奪われる覚悟をしてくださいね」
へたり込んだおっさんを蹴っ飛ばして、ヴィオは私の拘束を解いてくれた。
力が抜けてうまく立てない私をぎゅっと抱きしめてくれる。濃厚な血の匂い。服が赤黒に見えたのはびしょびしょに濡れるほどの血を吸っていたせいだった。
「ヴィオ、怪我はっ!?」
「大丈夫です。これは全部返り血ですから」
「えっ?」
返り血って誰かを斬ったり刺したりして、跳ね返ってくる血、だよね……?
ヴィオが?
誰かを斬ったの?
私のために……?
指先がじんと冷えるのを感じた。
ヴィオが。
あの、心優しいヴィオが。
私のために人を殺した。
ごめん、と声を掛ける前にヴィオが私の顔を覗き込んだ。
そこに浮かんでいる感情は私が想像していたものとはまったく違っていた。
──すなわち、”悦び”。
「私、虐げられるだけの人間じゃなかったんです。奪う側に回れるんです。……”おちこぼれ”だと詰っていたその口で、私に命乞いをするんですよ」
さも可笑しそうに笑った彼女。
「ヤギさんがどれだけ鳴こうが、〆るのをやめる人はいませんのにね」
あまりにも残酷な発言だけれど、不思議と嫌悪感はなかった。それどころか香り立つほどの凄艶な美しさに思わず見惚れてしまった。
その瞬間、だ。
「し、死ねイカレ女ッ!!!」
へたりこんでいたおっさんが手のひらから炎を噴き上げた。槍のように伸びたそれが私とヴィオを串刺しにしようと迫る。
強張った身体を動かすことすらできなかった私にしかし、炎が突き刺さることはなかった。
ヴィオが付き飛ばしてくれたからだ。
即座にチェーンソーのスロットルを開けたヴィオが、それを振り下ろす。
「ミアに魔法を撃ちましたねミアを傷つけようとましたねミアを殺そうとましたね……そのせいで! 私が! ミアを突き飛ばさなくちゃ行けなくなりましたっ! ミアに嫌われたらどう責任を取るつもりですか! この! ヤギさん! 如きが!」
言葉ととともにチェーンソーを振るうミア。すでにおっさんは血まみれで、どう考えても答えられる状態にはみえない。それどころか、生きてすらいないだろう。
あまりにも現実離れした光景は出来の悪い映画のようで、人が目の前で殺された実感なんて全然わかなかった。
やがて血だまりと肉塊に変わったところで、ミアがチェーンソーを地面に突き刺した。浴びたばかりの返り血が磁器のような肌を染めていた。
「はしたないところを見せちゃいましたね」
いや、あの、はしたないっていうか、ね……?
「私のこと、嫌いになりましたか……?」
潤んだ瞳。
それは、出会ったころの独りぼっちで寂しそうなヴィオと何も変わっていなかった。
「嫌いになんて、ならないよ。ヴィオは私を助けるためにやってくれたんだもん。ヴィオが罰を受けるなら、私も一緒に受ける。地獄に落ちるなら、私も一緒に落ちるよ」
笑顔でチェーンソーを振り回す姿は怖かったけれども、少なくとも私を助けるためだって言うのは間違いない。
それに、この世界はおそらく──ほぼ確実に日本よりも命が軽い。
だったら、助けてもらった私が、ヴィオが命を奪ったことを責めるのは筋違いだろう。
「ありがとう、ヴィオ」
気が抜けた反動で碌に力の入らないままそう言えば、ヴィオは私に駆け寄って抱きしめてくれた。
その身体は、極寒に身を置いたかのように小さく震えていた。
「……良かった」
涙を目に溜めてまっすぐに見つめる姿は、先ほどまでチェーンソーを振り回していた人間とは思えなかった。ヴィオは泣き笑いの表情で囁くように告げた。
「ミア、大好きです」
同時に身を寄せ、唇を奪われる。
……──初めてのキスは、罪の味がした。
***
「女性同士ってドキドキですね?」
「いや、あの、その……なんかキャラ違くない? ゴーインじゃん」
それから数日後。
私たちは公爵家の主寝室にいた。
ヴィオのやったことは正当防衛ということもあり、当然のように不問。いや、本当は色々まずかったのかもしれないけれど、誰かに捕まったり処刑とかって話も出てないのできっとそういうものなんだろう。
この世界のことを知らないのに、私が色々言うのは違うし、心に棚を作ってしまっておくことにする。
握りしめた私の手を絶対に離そうとしないヴィオは、血まみれのままで公爵家に戻り、そしてそのままヴィオパパのところに突撃した。
真っ青な顔をして今までのことを謝罪したヴィオパパだけれど、当の本人は今までの扱いなんてどうでも良かったらしくチェーンソーをドドド、と回しながら一言。
「当主の座、下さい」
もちろんそんな要求が認められるはずもないけれど、まぁ結果だけ言えばヴィオ自身が女公爵になった。
ミアと死ぬまで一緒にいるためには権力も必要なので、と言ってくれたのは嬉しかったけれども、ヴィオパパにチェーンソー突きつけて、
「ヤギさんですか? ヤギさんなら交渉は無駄なので〆ます」
って言った時は瞳孔が完全に開いていたと思う。
「せっかく公爵になったんだし、料理はプロに作ってもらった方がよくない?」
「駄目です。私はミアの料理がないと生きていけないんです。それとも……ミアは私に料理作るの、嫌ですか?」
ズルい質問をされて、私は毎日料理を作ることになった。
使用人は全員解雇。ヴィオパパも追い出して、今は広い屋敷に二人だけだった。
「ミアの可愛いところを他の人間に見られたら、その人の目をくり抜きたくなっちゃうので」
はにかみながら言うけれど、可愛いか怖いかどっちかにしてくれない……?
常識がぶっこわされ続けたせいか、どういう感情が沸くのが正解かすらわからなくなってしまったけれども、とにかく私はヴィオにベッドへと連れ込まれることとなった。
「優しくしますから、優しくしてくださいね?」
最高に可愛くて最狂に怖いヴィオが、チェーンソーもなしに私の理性を削り取る。
経験ゼロはお互いさまだけど知識的には私にアドがあるはず。
そう思っていたら、イケイケで押せ押せなヴィオに好き勝手蹂躙されました……気だるい身体でぼんやりとヴィオを見つめる。
「どんなに間違っても、誰に笑われても、ミアと一緒だったら最高の笑顔で生きてけます」
はにかむ少女を見て、この子と一緒なら地獄に落ちるのも悪くないと思えた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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