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第3話 イカれた マイフレンド

 やはりパンツはボクサーに限る。

 珍ポジションでスーパーセーブしてくれた彼は、いきなり戦力外になり箪笥から追放された。

 防御力0の布だっけ? こんなヤツに守れるわけがない! ――くっ、ころせ。



 今日も学校か――憂鬱な1日が始まる。


 今日は特に憂鬱だ。



 背負ってたネイビーカラーのスクールバッグを床に置くと自分の席に着いた。


 静まり返る教室。集まる視線に当然の如く空気が痛い。

 それもつかの間に静寂が喧騒へと変わる。


 そう、話題は俺です。


 自然に振る舞った。

 いつものように、ごく自然にスルーしろ。


「ええと、伊佐坂。遅刻と」


 1時間目は現国だ。お爺ちゃん先生は強度の老眼で後ろの席は――ほぼ見えていない。


 聞きなれたチャイムが鳴り、1時間目は終了した。



 伊佐坂いささか悠葵ひまり。14歳、中学2年。

 商品名 愛玩用人工生命体ペットドール。

 製造型式(タイプ) サキュバスと吸血鬼のハーフ。

 身長145センチ。体重38キロ。

 月の光を反射したような美しい銀髪に、オプションで変更されている。

 虹採はノーマルの赤紫。

 肌の色はアルビノタイプの白。

 フェイスタイプは童顔の黄金比。犬歯は短かめにオプション変更されている。

 ボディタイプはスレンダー。

 サイズは72のA、58、78。

 所謂、モデル体型。


 だだしっ! 12歳くらいのなっ!


 これが俺の新しいスペックだ。

 同梱されてたカタログに『おすすめ!』と記載されてた仕様と、ほぼ同じになる。



 年頃にスケベな男共を中心に囲まれた。「ホントに伊佐坂かよ?」「胸触らせろ」「いや揉ませろ」テンプレが並ぶ。

 女子は「悠葵くんかわいい」「女子の制服似合いすぎ」コイツら好き勝手言いやがって。


 確かに女子の制服は、りぼんが可愛いと特に評判だ。さすがに売り物(ドール)なだけはある。

 鏡のなかに銀髪ギャルがいた。



 昨日まで、俺とマトモに会話すらしなかったヤツラがウザ過ぎる。

 チラ――うんうん。リア充女子の目がキツイ、話題の中心になれず敵意剥き出し。

 良いね。



「――おい、おい。ほら、どけ。――おお? ホントに悠葵かよ? マジで女になってんじゃん。ははっ――別人の外人みてえ」



 モーゼが海を割る様に、群衆をふつうに割って来やがった。

 小学校で友達となった『鈴木脩人(しゅうと)』爽やかなスポーツ系イケメンだ。

 コイツとは漫画の貸し借りが切っ掛けだ。



「おい、リア充が何のようだよ?」

「俺のクラスまでウワサなってんぞ、まあ確認みたいな? じゃ昼に何時ものとこで。ハナシ聞かせろ」


 それだけ言って脩人は戻っていった。


 ヒイッ!――リア充女子の目がこえええ。

 さすがに脩人を狙ってる女子が多いだけに睨まれた。



「おい、お前らもいい加減にしないか! そろそろ次の授業が始まる時間だぞ。席に戻れ。他のクラスの者は教室に戻れ! ……全く――ずっと前から好きでした。僕と付き合って下さい」

「ごめんなさい。2次に嫁がいるので……」


 さすが松永。盲腸を散らすように皆をひかせた。うっかり俺も大怪我だ。


 変態紳士を崩さないクラス委員長。

 身長、顔、知力を兼ね備え将来有望と目され女子からも人気は高い。変態メガネ男子『松永久秀』たしかコイツとは性癖フェチで論争して仲良くなった。パンストの魅力について徹底討論した仲だ。


 ヒイッ!――リア充女子の恨みの目が。



 昼休みグランド横の用具入れ『通称ヤリ部屋』と不名誉に名付けられた倉庫のなかで、ダベリながら昼めしを食う。

 これが3人での習慣になっている。


 なにも考えずに定位置のマットの上に座ったけど。

 コイツらに、いきなり押し倒されたりしないよな?。



「なんだと! 人工生体だと? IPS研究の究極じゃないか!」

「嘘クセーハナシだけどよ、オマエがそんななってんだから、ホントなんだよな? 眉唾もんだけど」


 俺が見た空間や異世界のことも、全て話した。やはり親友と呼べるコイツらだから話せることは全てだ。

 松永は俺がダッチワイフだと知ったら襲いかねん。気をつけねば。


「光交差か? 相対性理論の応用。量子力学の世界だぞ」

「あくまで仮定のハナシじゃなかったっけ? ソレ」

「確かに粒子の速度で、光を可視化できたらの話だ」

「じゃ、モンハナシャコでも飛ばしてみるか?」

「確かにモンハナシャコは可視化出切る。だが、赤外線や紫外線、X線等は進行速度が違うぞ――」


 こいつらの話についてけ無いんですけど。

 せめてサイエンス番組みたいに、優しく説明してくれ。


 だが、松永が『1つの可能性として量子化され再構築されたときに、起動前のドールに精神が入った? もしくは俺の精神を中心にドールが再構築された』と結論付けた。


 じゃあ俺の身体はどこへいった?。


 これも、松永が『再構築されずに何処かを漂っているか? 再構築されて何処かでコロがっている』と結論付けた。


 その何処かとは多次元世界やパラレルワールド含め全てを指すらしい。

 漂っているとは、いわば『消滅』コロがっているとは『死んでいる』と言っていい。



「んじゃ、とりあえずガッコ終わり悠葵の家に直行な。異世界も気になるし」

「僕が直接このメガネで視認しよう」


 え、うそ。勝手に決めるな。

 松永は知識の欲求。

 脩人は俺が以前貸した異世界マンガの影響で気になるみたいだ



 マジで家に来やがった。


「ほう、このクローゼットか? 壁に埋まったクローゼットがか? ただの白い壁しかみえないんだが? 僕のメガネが悪いのかね?」

「おい! 松永、勝手に人の家に押し掛けといて、壁しかみえねえのか? 良くみろ! ボロボロの部屋が見えんだろ! なあ脩人?」


 異世界と繋がったクローゼットの話をコイツら2人にした。そしたら押し掛けといてこれかよ。


 そもそも俺は昨日まで男だったんだ。


「まあ、悠葵が嘘をついてるってのは考えにくいだろ? 現実にコイツ、性別変わってんだぜ」


 さすが鈴木脩人。ただのイケメンスポーツマンじゃあない!。


「そうだ、そうだ! もっと言ってやれ」

「なるほど。だとしたらその身体に秘密が隠されていると――?」


 ヤバい! 変態紳士の松永のメガネが光った。身の危険を感じた俺は、すかさず脩人の後ろに隠れた。


「まあ、詳しく聞こうぜ。どう見えてるか説明して――あ、あれ」


 そう良いながら脩人は然り気無く肩を抱いて来やがった。『パチッ』静電気か? 気づいたら脩人が口を、パクパクさせながらフリーズしてた。


「なんだ、あれ?」


 脩人がクローゼットを指差し。

 松永のメガネが光った。


「どうした? 取り乱すなどお前らしくもない」

「――クローゼットの中に渦が見えるんだが……レーザ光線のような」


 松永のメガネが『スチャ』と音を鳴らし中を覗き込んだ。


「どれどれ? ――何も見えないが、ね!」

「いやいや、あんだろ!」


 さすがに肩を抱かれたままは、イラッときたので脩人の『パシッ』と手を払い除けた。


「あ、消えた」

「もしかして、こうするのか」


 何かに気づいた松永のメガネが押し上げられ、恥ずかしそうに肩を抱かれた『パチッ』コイツも静電気体質かよ。


「なるほど――確かに、渦が見えた。と言うことは、このまま飛び込め。と言うことだな」


 一瞬、俺は耳を疑った。


「え? なに言って、おま、おまえ怖く無いのかよ! 帰れる保証もないのに」


 ガシッ――脩人も肩を組んできた。


「なに言ってんの、前例はあるっしょ」


 なに? 前例だと――くっ!。

 俺のことかああああああああああっっ!!


 コイツらイカれてる。

 2人のイケメンに挟まれ強引に飛び込むかたちになってしまった。「いくぜ」「とう」

 途中下車されないように、気を付けなければ。



 よっと――スタッ!。

 昨日、何回も行き来した分、着地も慣れたものだ。しかし、ボロ小屋には俺しかいなかった。


 おいおい、まさか? アイツら本当に途中下車したんじゃないだろな。

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