表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/39

漆黒 初めてのクエスト2

 パルミコ王国は大陸東部のほとんどを占める大国だ。その東の端に大きな港町があって、そこからちょっと内陸へいったところに王都がある。その王都から西に大きく広がっているのがパルミコ平原だ。

 かなり広大で、端から端まで馬車で移動するのには2~3日かかると言われていて、領地は数人の貴族が分割して統治している。

 小麦や茶葉の生産と牛や豚の畜産が盛んで、高級素材としてよく知られている。


 レッドウルフは平原に広く生息しているが、森や林の近くが1番見つかりやすい。

 王都から北西に馬車で半日ほど行ったところに、リムデという人口50人ほどの村がある。

 そこは広い森に接していて、レッドウルフを狩るにはちょうどいい。


 俺たち2人は馬車を用意し、リムデの村まで移動して宿も手配できた。

 村に到着した時には日も暮れかけていたのでそこで一泊し、翌朝に森へと入っていった。

 ここまでの行程はかなり順調だ。


 まずは森へ30分ほど入ったところまで進む。


「じゃあ使うわよ」


 そういうとクレイアは固有スキル【索敵】を使用した。

 この世界の人間には一人にひとつ、スキルを持って生まれてくる。戦闘向きのものや、裁縫向き、料理向きなど様々なスキルが存在するが、クレイアはかなり希少な【索敵】スキルを持っている。

 索敵できる距離や、何を索敵できるかは練度によって変わってくるが、今のクレイアなら半径2kmほどの生物を探ることができる。

 この2kmという範囲、世界的に見てもかなり広い。名門エングラム家でも天才と言われているだけある。

 この【索敵】を利用して、見通しの悪い森の中でもレッドウルフを見つけることが可能だ。


「いたわ。西北西に700m。5匹」

「いきなりか。幸先がいい」


 索敵した情報を頼りに暫く進むと、レッドウルフの方から俺たちへ向かってきた。匂いを感じて狩りに来たのだろう。木の間から走ってくる赤い狼の姿が見えた。


「来たわ。先頭に2匹。残りは後ろに控えてるわ」

「了解。まかせろ」


 森の中ではクレイアが得意の炎の魔法は使いづらい。自分で出した炎なので、きちんとコントロールができれば消すことはできる。ただ敵を倒す過程で燃えてしまった森は戻すことができない。

 一応ほかの魔法で対処はできるが、まずは俺の出番だ。


 レッドウルフは名前だけ聞くとただの狼のように聞こえるが、実際は狼より一回り大きい。しかも名前の通り赤い毛をしている。

 通常は10匹前後の群れで狩りを行う。各個体はそこまで強くはないが、連携に優れるのが厄介である。

 俺は愛用の剣を抜くと、両手で構えた。まずは1匹、俺に飛びかかってくる。

 これを受けるのではなく、逆に踏み込んですれ違いざまに一閃。胴体を切られたレッドウルフは倒れて動かなくなった。

 もう1匹はその様子をみて標的をクレイアへと変えた。

 俺はその背中を一瞬で詰めて切りつける。レッドウルフはクレイアへ届くことなく地面に崩れ落ちた。


「やるじゃん」


 俺の実力を知るクレイアは、涼しい顔で戦いを眺めていた。

 残りの3匹は戦いの間に周りを囲んでいた。周囲から一気に距離を詰めて同時に俺に向かって襲い掛かる。

 タイミング完璧な連携。群れで狩りをするレッドウルフならではだ。


「さすがにスキル無しでこれを凌ぎきれないか」


 今までの2匹はスキル未使用での戦い。ここからが本当の俺の実力だ。

 一人につきひとつの固有スキル。それはあくまで常人の話だ。勇者は3つのスキルが使える。ずいぶんなチートだと思う。


 まずひとつは勇者の力自体が持っている【瘴気特攻】。

 魔物や魔族は瘴気によって能力が強化されているが、その瘴気に対して大幅なダメージ加算が発生する。これがあるから魔族との戦いに勝利することができた。


 そして、各勇者の家系に伝わるスキル。これは俗に勇者スキルと呼ばれる。内容は家ごとに違うが、漆黒の勇者の場合は【特級身体強化】になる。

 自身の力や素早さ、物理防御を大幅に上げるもので、他の冒険者などが使う身体強化と比べて強化倍率が高い。

 もちろん他の勇者の家にはそれぞれ違う勇者スキルが存在する。


 そして最後に、みんなが持っている固有スキルだ。ただ、今はそこまで使わなくても問題ない。


 そんなわけで3体のレッドウルフに同時に飛び掛かられた俺だが、噛みつかれる直前に剣を振り、3体すべてをほぼ同時に切り倒す。


「おぉ~。今のは全然見えなかったわ」


 クレイアは小さく拍手して褒める。

 倒されたレッドウルフは砂のように崩れ落ち、最後には小さな石だけが残った。

これが魔石。魔障が固まったものだと言われているが、これが討伐の証になる。


「これで5匹。4分の1達成だな」

「次は私にもやらせなさいね。炎以外でも倒せるんだから」


 そう意気込むクレイアだったが、そこから2時間はレッドウルフと出会うことはなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ