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序章 漆黒の勇者

 前世の最後の記憶は、巨大な岩が目の前まで迫ってきた光景だった。


 空がキラリと光ったと思ったら、軽自動車くらいの大きさの岩の塊が目の前にあった。今思い返してみると隕石だったと思う。

 道を歩いていて隕石と衝突するなんてあり得るのかと思うが、実際にそれで死んだんだからしょうがない。


 俺は島原真一。享年25歳。都内の市役所で働いていた。

 彼女とかはいなかったが、それでも不幸ではない程度に普通の、悪く言えば地味な人生だったと思う。学生時代に剣道で有段者だったくらいが数少ない長所で、それ以外は……無いな。特に言うべきことはない。

 休みの日にふらっとコンビニに行ったら隕石にぶつかって死んでしまったらしい。以上。

 走馬灯も一瞬で終わった。


 で、気が付いたら赤ちゃんになってベビーベッドに寝かされている。短い手足、動かせない頭、言葉を話そうにもうまく声が出てこない。違和感しかない。ぼやけて見える自分の手が小さい。

 これは、まさか転生したのか?そうだな。したな、転生。

 上から青い目のおばさんが覗き込んでいる。恰幅がよく、自分の基準で言うと50歳ほどに見える。年齢からして母親ではなさそうだ。目が青く、外国人のように見える。

 俺を持ち上げると、黒い髪の女性に受け渡す。

 綺麗な人だ。ぎこちなく俺を受け取ると、不安そうに俺に顔を近づけた。表情が和らいで、涙が一粒流れた。

 この人が俺の母親か。不思議な気持ちになる。

 何やら知らない言葉で語りかけてくる。日本語が通じるなんていう、都合の良いことないようだ。

 一から言葉を覚えていくのか。まぁ時間はたっぷりとあるだろうし。ゆっくり覚えていこう。


 それから年月を経て、少しずつこの世界のことを理解していった。

 ここはアルフェクト大陸というところの東部にある、パルミコ王国という国らしい。

 アルフェクト大陸には4つの大国と、その他小さな国がいくつかあるが、パルミコはその大国のうちの一つだ。


 電気や蒸気機関は無いが、魔法はある。

 それと、魔物と呼ばれる凶暴な生き物が人間にとって脅威となっているとのことだ。昔は魔族という奴もいて、人間との間で大きな戦争があったらしい。

 そして最も重要なことは、4つの大国にはそれぞれ『勇者』の称号を与えられた家があり、俺が転生したルフリン家が、まさにその勇者の家系ということだ。


『漆黒の勇者』


 それが我が家に与えられた称号だ。

 勇者とは人類の守護者であり、魔物に対抗する強力な力だ。

 勇者は王族でも貴族でもない立場なので、自分の領地や軍隊を持ってはいない。人間同士の争いには関わらず、魔物の脅威から人々を守ることが使命だ。


 漆黒の勇者というだけあって、一族に生まれた子どもはみな黒髪だ。もちろん俺も。

 周りの人たちは西洋人のような見た目をしているが、俺の顔は日本人っぽく見えなくもない。初代の漆黒の勇者は海の向こうのから来た人らしく、その血筋を引いているからかもしれない。地球で言う東洋に当たる地域なのだろう。

 当代の漆黒の勇者である俺の父親は寡黙な人で、たまに数日間出かけては魔物を討伐して帰ってくる。

 訓練しているところを見させてもらったが、前世の常識では考えられないくらいに強い。拳で岩を砕く人間が存在するとは思わなかった。

 俺は長男なので、将来的には父親の後を継いで人々を守る勇者となる。

 前世で役所勤めをしていた俺が勇者というのも実感が湧かないが、もしかすると、その為にこの世界に生まれ変わったのかもしれない。


 前から思っていたことがある。もし自分に特別な力があったら何をするか。ただの平凡な日本人である島原真一には成しえなかった、偉大な功績…。


 そして大陸歴208年。俺、アシュリー・アル・ルフリンは14歳になっていた。

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