オードトワレ
ふと街なかですれちがったにおい
昔のボクの匂いだった
そしてきみのことを思い出した
「昔のボクの匂い」は抽斗の奥に仕舞ってあった、ひっぱり出して目の前のつくえに、コトリ……スマホのラインにまだきみの連絡先残ってた……
おめかししようか考えながら、会えない? ってめちゃくちゃ久し振りにメッセージ送信……するも、数時間、数日待てどいっこう既読つかず……未読無視……あきらめて換気扇の下で煙をふかした
むかし君にいわれたことがずっと頭の中に残っている
あれから時は過ぎ、ボクはきみの次にであった人とも別れて、その次のひと、またそのつぎの人とも、うまくいってなかったりする
悪し様に言えば、とっかえひっかえか
……「ビッチ」か。くちも性格も悪いきみなら、言い出しかねない
それでも、だ。以前に比べれば、いくぶんかは世渡りの仕方をおぼえた。自分の身の守りかた。立ち回る方法を身につけた。あのころより少しはましな人生に向かっているはずなんだ。
ボクは君と再会してその「途中経過」を確認したかった。きみとボクの人生を対比させ、ボクの方がよりよい人生を送っている、よりしあわせに生きている、と言うのを暗に君に見せ付けたかった。
あの時ボクのこころに決定的な「傷」をあたえたきみに、ボクは復讎したかった。