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ヘイ、シスター  作者: 釜鍋小加湯
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書いても長続きしない、残念な作家です。今回こそ、最後まで頑張ります。


 布団を蹴飛ばし、私はベッドから飛び跳ねるように起きた。

 ハッとした状態で、側にある目覚まし時計に目を向ける。恐ろしいことに、八時半を過ぎていた。

 会社が既に始まっているではないか。

 カーテンの隙間からは、透き通った朝の日差しが漏れてきていた。

 電話をしなければ。放置すれば無断欠勤となってしまう。明日以降のためにも、しずらいなんて言ってられない。

 寝坊をしたのと、その理由を言うのが億劫で、朝からタメ息が出てしまう。

 薄明かるい部屋。ベッドを離れテーブルに置いてある携帯を手に取る。

 生憎、会社からも同僚からも連絡は来ていなかった。携帯を操作して、会社に連絡を入れようとしたところで突然尿意を催した。

 トイレで用を済ませて、パジャマ姿のまま椅子に座る。再び携帯を握り、会社に連絡しようと指を動かそうとしたとき、ふと思った。

 あれ、今日ってもしかして。

 指を動かして、パッと光った連絡先の画面から待ち受け画面に戻す。私はまじまじと、ある一点を見入る。日付の隣がSatとなっていた。土曜日ってことは、今日会社休みじゃん。

 なーんだ。安堵のタメ息をついて、一人クスクスと六畳の部屋で笑う。私ってやっぱりバカだわ。でも何だか得した気分。こんな時、こんな気分になるのって私だけかしら。

 携帯をテーブルに置いて、荒れた方に目を移した。ベッドから掛け布団が落ちそうになっていた。慌てすぎだろ私。笑いそうな口を何故か開くまいとして、鼻の下を伸ばした表情で布団を直していく。半分に捲ってから、パタパタとスリッパの音を上げて台所へと向かった。

 今日会社が休みだったなんて、最高すぎる。嬉しさが込み上げてきて気分はたまらない。まさに欣喜雀躍。いつもの休日予定無し。二十六の暇女万歳。

 歯を磨いてから、インスタントコーヒーを作った。粉を入れてポットのお湯を入れて、椅子に座り一口飲んだ。程好い苦味が口に広がる。

 これだけでは物足りないな。折角の休みだ、何か食べよう。

 椅子を離れ冷蔵庫を漁り、適当に食材を取りドアを閉めた。ハムエッグとレタスを作ることにした。食パンをトースターで焼いているうちにそれは出来た。チンと鳴ってから、二分くらい経っていた。

 椅子に座り、狐色がかったパンにバターを塗る。レタスを皮切りに、摘まんでは食べていく。さて今日は何をしようか。パンを片手に部屋を歩いて、カーテンを勢いよく開けてみた。

 二階の窓ガラスから、水色の空に白い雲の塊が幾つか見えた。

 外出日和だ。ロックを外して、少しだけ窓を開けてみた。食パンを口に頬張りながら、外に顔だけ出してみる。暑すぎず寒すぎず、肌にあたる空気も心地良い。

 再来週からGWに突入する。そうなれば店は人で混み合う。春の服、今年は何も買ってなかったな。今日買いに行こうか。窓を閉めて、部屋にある掛け時計に視線を上げた。九時十五分前か、悪くない時間。

 改めて椅子に座り、箸で卵をつついた。トロッとした黄色いものが、黄緑色のレタスを濡らした。

 そのレタスを口に入れてこう思う。今日行くのは止めよう。今から化粧をして髪をセットしてアパートを出て階段降りて駅まで歩いて電車に乗って出入り口の角に立って……。あー息苦しい。想像するだけで疲れてくる。

 最後の一口。パンの角を、黄色くなった皿に擦り付けた。パクリと口に入れて、朝食を終えた。

 テーブルに肘をつき、窓の向こうの景色を眺める。カーテンを開けて陽射しが入るようになってから、外部からの誘惑に刈られる。やっぱり行こうかな。ついまた掛け時計を見てしまう。九時二十八分、心が右往左往している。

 席を立ち、台所で食べ終えた食器を洗った。その最中、私は行くか行かないか悩みに悩み、漸く決めた。もう揺るがない。本日外出はしない。

 部屋に戻り、押し入れを開けた。行かない代わりに何をしようかと、食器を洗った後のトイレで考えて決めた。午前中かけて、ここの整理をするのだ。

 腕を組んで、堆く積み上げられた箱や袋に頷く私。

ポンポンポンポン置いていくうち、今にも崩れそうなビルみたいになってしまった。取った瞬間、雪崩が起きなければ良いけど。

 押し入れの中は、三年前に引っ越してきて以来、一度も片付けていなかった場所。要るか要らないか迷ったら、取り敢えずここにぶちこんでいくうちに、このような有り様となってしまった。

 午前中でケリをつけて、お昼はインスタントラーメンを食べよう。午後はずっとぐーたらしてやる。ぐーたらこそ私の王道。

 待ってろ午後。

 私は腕を組んだまま大きく頷いて、気合いを入れた。

ありがとうございました。

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