魔王-8
午後四時頃。僕らはガトガの町へと到着した。
トナルさんとおんちゃんが近場の宿泊施設へ受付を済ませにいく。二人は馬車の中でほぼ寝ていたので元気なようだ。
花の町と聞いていたが、ぱっと見シャヌラと雰囲気が変わらないように感じる。だが、リオリネさんが言うには町の中央に大きな庭園があるらしい。
御者のシュウムさんは我々を降ろした後、この町の狩処へと行ってしまわれた。狩処同士で馬の世話や馬車を預けるなどをしてくれるとのこと。シュウムさんとは明日の朝ここで集合だ。
近々のお土産屋さんで時間を潰していると、トナルさんとおんちゃんが帰ってくる。無事今日の寝床を見つけたので、僕らは荷物を置きにそこへ向かう。宿で利用できる部屋数は三つであり、僕とぼっさんとうにやんで一つ。トナルさんとおんちゃんで一つ。そして、キヌモアさんとリオリネさん、ポエさんで一つに決定。
馬車の移動でほとんど座っていただけだが、疲れは溜まるものである。まだ夕食の時間には早いので、僕らはそれぞれの部屋で休むことにする。
荷物を下ろしてベッドに寝転んでみる。
「…………」
「…………」
「…………」
「シキさん、起きて」うにやんの声がする。
この世界で初めて起こされたときみたいだ。
「ごはんの時間だよ」
「!!!」僕は目覚めた。
時計を見ると、既に午後六時を過ぎている。どうやら一時間以上も眠ってしまったみたいだ。
宿屋のロビーにはみんなが集まっており、僕とうにやんは遅れて行く。
僕はすみませんっと軽く謝り、我々は外食をしに宿屋を出た。
ごはんを食べる場所もトナルさんとおんちゃんが探して予約をしてくれていたようで、スムーズにことが進んでいく。流石はトナルさんである。
おすすめはウィンナーということなので、ウィンナーを中心に僕らは適当に好きなものを注文する。
しばらくするとテーブルの中央には大量のウィンナーが盛られており、夕食が始まった。
皆疲れているのか口数は少ない。でも、移動の際に色々と話してしまったので、ネタ切れ感もある。
「明日の予定に変更はありませんか?」ぼっさんがトナルさんに聞く。
「はい。ありません。午前八時に出発して、二時間ほど掛けて現地へ向かいます。あとは先日に話した通りです」
「それに関してふと疑問が湧いたのですが」僕は意見を言う体勢に入る。
「なんでしょう」返事をするトナルさん。
「お昼前にはキベロスさんがいる、ゼーヲ荒野へ着くじゃないですか」
「はい」
「キベロスさんは昼に活動する跨ぎ人なんですか?」
「そうです」即答するトナルさん「以前、手伝って頂いたヨロラスさんは夜型でしたけど、今回は昼型ですね」
「それではゾンビはどうなんですか?」
「ゾンビも跨ぎ人と一緒で、昼夜それぞれですね。ただ、ゼーヲ荒野のゾンビは今もキベロスさんをターゲーットにしている節がありますので、跨ぎ化したキベロスさんが活動を開始すると、それに合わせてゾンビも目覚めるみたいですね」
「ゾンビとの接触は避けられないわけですか」
「おそらく」
うーん。どうにか楽に仕事を遂行したかったけど、難しそうである。僕はウィンナーにかじり付きパリッと音を鳴らす。
「美味しいね」とポエさんが食事の感想を言っており、それに合わせてキヌモアさんとリオリネさんが「ねー」と同調している。すっかり仲良しさんだ。
これで夜は安心して眠れそうだ。そう、ポエさんといえば夜中に襲来する可能性があることを忘れていない。三人が仲睦まじいのであれば、夜のおしゃべりも盛り上がるであろう。故に我々の部屋には妖精さんの訪れは無い。
なんてことはなく。ポエさんは日付変わったと同時に僕らの部屋に来訪した。
キヌモアさんとリオリネさんは明日頑張る役なので、明日頑張らない僕達と会話をしにきたとのこと。その通りではあるが、我々も明日は善処する所存ではある。
だが、ポエさんも疲労が溜まっていたのか、マシンガントークをしている際中コンセントが抜けたかのようにプツンと倒れ寝てしまった。キヌモアさんたちの部屋に運ぼうかと思ったが、勝手に入ることに対して抵抗があったのでやめておいた。結局、先に目を閉じたうにやんの枕元で寝かせておくことにする。




