魔王-6
僕とトナルさんで改めて状況を説明し、ポエさんにも同伴願う。
「私は聞き耳を立てていた時点で、そのつもりだったよ」快諾してくれるポエさん。
トナルさんも喜んでいる。
「それで、そのキベロスっていう人を助けるために私が必要ってことね」
「そう」返答する僕。
「私が重要ってことね」
「みんな重要だよ」
「いや、私たち四人はもう不要だ」おんちゃんが僕の肩に手を置いてくる「キベロスさんを助けるための手段はもう解決され、私たちはゾンビと戦うこともできない。馬車内を圧迫するただのお荷物四人組なんだ」
「そっか……」我々四人は落ち込むフリをする。
「いやいやいや。みなさんにはまだまだ助けてもらうことがありますので一緒に行きましょう」トナルさんが慌ててフォローしてくれる。
「例えば?」おんちゃんが攻める。
「…………」止まってしまうトナルさん。
「やっぱり私たちは役立たずなんだー」おんちゃんがしゃがみ込み、僕ら三人も追従してしゃがみ合わせる。
「みんなといると楽しいよ」ポエさんが僕らの視線まで降りてきて、声を掛けてくる「長い旅行になるのだから、楽しい方が良いよ。それがおんちゃんたちの役割だよ」
冗談で自分たち不要論を演じてきたけど、ポエさんの優しみ溢れる言葉が聞けて、涙腺が緩みそうになってしまった。
「よし。それでは私たちも帯同します」素早く立ち上がるおんちゃん。
一件落着?
「あ、馬車の手配しなきゃ」先ほどのおんちゃんの言葉で色々とやるべきことが浮かんできたので、僕はカウンターへ赴き依頼手続きを開始した。
翌週の早朝。我々はシャヌラ西口にて集合していた。馬車はすでに待機しており、僕は御者のシュウムさんに挨拶する。ドロールドラゴン討伐時同様、彼が僕らを運んでくれる。
今回は目的地途中のガトガという町で一泊する。そのため寝袋などの野外宿泊セットは持ってきていない。身軽だ。そもそも荒野へと向かうのだから、山と違って気温も下がらないので、寝袋は不要だが。いや、暑くても外で寝るときは必要なのか? 分からない。
だが、二泊三日の小旅行ではあるので、替えの衣服などで少し荷物多めだ。僕以外のうにやん、ぼっさん。おんちゃんも今回のためにリュックサックを購入した。
我々四人、トナルさん、キヌモアさん、リオリネさん、そしてポエさんの八人パーティは馬車へと乗り込みシャヌラの町を出発する。馬車を引く二頭の馬とシュウムさんを合わせれば大所帯である。
「ガトガってどんな町なの?」左隣に座っているポエさんが聞いてくる。
「僕も行ったことがないから分からないなー。どんな町なの?」僕はポエさんを挟んでさらに左にいるぼっさんに顔を向ける。
「俺も知らないよ」っと首を横に振るぼっさん。少し眠そうだ。
さらに隣、出入り口側ににいるトナルさんはすでに寝ている。夜行性だから、朝昼は眠たいのだろう。
「ガトガはお花で有名な町ですわよ」僕の対面席、御者側に座っているリオリネさんが教えてくれる。
リオリネさんは今日もシャツとロングスカートを履いており、戦うための格好とは思えないオシャレさを感じる。靴だけはゴム付きの革靴を履いており歩きを重視しているみたいだ。
「ありがとうございます」僕はポエさんの代わりにお礼を伝える。
「二人はいつから仲良しなの?」ポエさんがリオリネさんとその隣に座っているキヌモアさんへと無邪気に質問した。
少し聞きにくいことをスススッと突撃できるところが彼女の良いところ? だ。僕としては助かる。
「仲良しに見えますっ?」リオリネさんは体を揺らし喜びを表現している。
「別に仲良しっていう訳ではないですよ」キヌモアさんはあっさりと否定した「同業者という関係です」
だが、そのような言葉に対してもリオリネさんの表情は曇らない。
「そう。わたくしたちは氷処で働く者同士。そして、いかに素晴らしい氷を人々に提供できるかの同志でもありますわ」
「ただの氷売りですから。そんな仰々しいものではありませんよ」リオリネさんの言葉にコメントするキヌモアさん。
「わたくしたちの出会いは、シャヌラの商工会の集まりでした」回想シーンに突入するリオリネさん。
「この話のお供にお菓子でもどうぞ」キヌモアさんはバッグから小袋を取り出した。
お菓子を置く場所はないので、馬車内の中央に適当な木箱を置いて即席のテーブルを用意する。その上にキヌモアさんが小袋を広げ、みなでクッキーを摘めるようにした。この間、リオリネさんは黙っており、話すのを待ってくれていた。
「では改めまして、わたくしたちの奇跡的な邂逅はシャヌラ優良販売店限定の会議の場でした」今にも立ち上がりそうな勢いのリオリネさん。
「お金を出せば誰でも入れる事業者の集まりですからね」キヌモアさんは相変わらず補足をしてくれるみたいだ。
「同じ氷処の未来のエースとしてわたくしたちはその場に出席したのです。わ」
「新しく入った人は挨拶周りや業界の雰囲気を知るために、ただ上司に連れて行かれるだけです」
「そこで、わたくしは氷処ケビスイにも同じ時期に所属した人がいると聞いて、挨拶に行きました」ここでリオリネさんは水筒の蓋に飲み物を注ぎ、口に含んだ。「それがわたくしの隣にいるキヌモアさんだったのです。わ。ね?」彼女は右隣に顔を向けた。
キヌモアさんは小さく頷く。
「その時はお互いに緊張していて、挨拶も不慣れで初々しい感じでしたわ。でも今ではこうやってお仕事がない日は隣にいるほど仲良しなのです。ね?」
首を横に振るキヌモアさん。
「わたくしたちのお話はこんなところでしょうか」締めるリオリネさん。
ポエさんが拍手をしたので、僕らもつられて手を叩いた。馬車内は二人を祝福するムードに包まれたかのようになり、リオリネさんは「ありがとうござます。ありがとうございます」と我々に対して丁寧に返してくれる。
キヌモアさんは無反応で「いつの間にか置かれていましたけど、ピーナッツ頂きますね」と即席テーブルに置いてある落花生を手に取った
「それは、俺が置いたやつです。この前みんなでアクアサに行った時に買ったものなんですよ」ぼっさんが軽く手を上げる。
「アクアサに行ってこられたのですね。それじゃ今度はみなさんの土産話でも聞かせて下さい」
ぼっさんは了承し、僕たちは港町で起こった出来事や体験を話していった。
落花生の殻を割る音を響かせながら。




