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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第二章
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魔王-4

「危険はあります。ゾンビが出ます」顔色を変えないトナルさん。


「ゾンビ? 跨ぎ人ではなくてですか?」ぼっさんが少し首を傾げる。


「はい。ゾンビです。簡単に区別するのであれば、跨ぎ人は善良な方々が成るもの、反対にゾンビは悪事を働くような人々が成るものです。そして、ゾンビは襲ってきます」


「ひぇー」怖がるおんちゃん。


「そのゾンビが生息するエリアを通過するということです?」おんちゃんを横目に質問を続けるぼっさん。


「通過……。まぁ近いですが、キベロスさんの周りに群がっているという感じですかね。キベロスさんの跨ぎ化が確認されてから数年後、魔王の力を手に入れようとする輩が彼を捕らえようとするようになったんです。実際、捕まえたからといって魔王の力が手に入るわけではないですけど、それでもキベロスさんを手に入れることによって何かが分かると思ったのでしょう」


「そして、その人たちが返り討ちにあい、ゾンビ化しているということですか……」


「おっしゃる通り。今ではキベロスさんの周りにはゾンビが溢れており、悪人すらも近づかない場所になってしまいました」


「それじゃあ。キベロスさんの調査は遠くから行うのですか? ゾンビに襲われないように」


「以前はそうしていましたが、それではもう知り得ることが限界に達しましたので、今回はキベロスさんに近づく予定です」


「ひぃー」おんちゃんの小さな叫びが聞こえてくる。


「そこで、ゾンビに襲われることを前提に用心棒を雇おうと考えています」



 次の日の御昼。


 我々四人とトナルさんは狩処ポナモザの前で集合した。


「眠そうですね」あくびをするトナルさんを見て僕は声を掛ける。


「普段、この時間は寝ているからね。でも大丈夫少しは寝てきたから」と軽く笑う。


「では僕らが受付してきますから、トナルさんは椅子にでも座っていて下さい。必要時に呼びますから」


「悪いね。そうさせてもらうよ」


 会話を終了させ、我らは狩処へと入っていく。


 トナルさんは入り口近くのソファへ座り込み、僕らはカウンターへと進んでいく。


「ミラルエさんとお話ししたいのですが」僕は受付のお姉さんに要望を伝えた。


「お待ちくださいね」とお姉さんは振り向き、一人の女性のところへと歩いていく。


 その黒髪の女性はデスクワークをしている最中で、お姉さんが話しかけると顔を上げてカウンター越しに我々を一瞥する。


 僕達はにこにこと笑顔で手を振り、ミラルエさんにアピールする。


 が、ミラルエさんはショートボブの髪を翻し、再び書類に目を落とした。



 無視された。ひどい。



「シャヌラ一の剣術士〜」


「武器マニア〜」


「ドラゴンキラ〜」


「世界一大剣が似合う美女〜」


 我々はミラルエさんの気を引こうと彼女に罵詈雑言をくべる。


 どの言葉が効いたのかは分からないが、ミラルエさんは無言でスッと立ち上がりこちらへ向かってきた。


「最後のセリフを言った人は誰?」冷たい目で僕らを見回すミラルエさん。


「…………」


 僕とうにやん、ぼっさんはおんちゃんに指を差す。


「…………」


「世界一は言い過ぎ」と彼女はおんちゃんの肩に手を置いた。


「はい。すみません」素直に謝罪するおんちゃん。


「それで、何か用?」ミラルエさんが気を取り直したところで、ようやく本題が始まる。


 我々はトナルさんを紹介しつつ、荒野でゾンビに対抗するため一緒についてきて欲しいと伝えた。


「うーん。行きたいのは山々だけど、私いま仕事が溜まってて遠出は出来ないんだよねー。ゼーヲ荒野へ向かうと、往復で最低三日は掛かるでしょ」


「えぇ」返事をするトナルさん。


 ミラルエさんは天井を仰ぎ思案する。肌が綺麗だ。


「そうだ、代わりの人を紹介するよ」彼女は閃いたかのように目を大きくし、キョロキョロとポナモザ内を見回す。


 見ているのは職員がいるカウンターの向こう側ではなく、利用者の方だ。


「あっ」と獲物を見つけ出し、ミラルエさんは掲示板を閲覧する人々の中から一人をピックアップしてきた。「はい。代わりのボディガード」と掴んでいた女性の腕を離し、僕らの前に立たせる。


 状況が見出せず困惑する女性は氷処ケビスイのキヌモアさんだった。


「あれ、皆さん。お久しぶりです」キヌモアさんは我々の顔を見て安堵する。


「知り合いなの? それなら紹介する手間が省けるね。このキヌモアが私の代わりね」笑顔なミラルエさん。


「えっ!? えっ!?」と赤橙色の髪を揺り動かし戸惑うキヌモアさん。


 僕は依頼内容を説明し、彼女の混乱を解く。


「そういうことでしたか。それなら大丈夫ですよ。私がついていきます」とキヌモアさんは二つ返事で了承する。


「良いのですか? キヌモアさんにも氷処の仕事がありますよね。それにいつの間にこのような活動をするようになったんですか? 初めて会ったときにはしていなかったと思うのですが」僕は矢継ぎ早に疑問をぶつけてしまう。


「仕事は大丈夫です。有給取ります。この狩処での活動はみなさんの話に触発されて始めました」


「僕らの話……」


「ドロールドラゴンを討伐したことですか?」ぼっさんが答える。


「そうです。そうです。それを聞いて私も趣味の一つとして始めてみようかなと思い、ポナモザの扉をくぐった次第です」


「キヌモアはすごいよー。魔物討伐依頼を受け始めて一ヶ月ちょっとなのに、既に頭角を表しているから」


「いやいや。まだまだですよ」髪色のように頬を染めるキヌモアさん。


 ミラルエさんのお墨付きなら、キヌモアさんに同行を依頼しても問題なさそうだ。


「それでは……」


「話は聞かせてもらいましたわ」


 僕は話を進めようとしたが、後方からの声により遮られた。


 みんなで振り返り、声がした方向へと視線を向ける。


 そこには水色な髪の女性がいた。

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