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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第二章
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アクアサ-5

 ぼっさんが購入したガイドブックを頼りに我々は市場へと向かうことに。海岸沿いを歩き、浜辺から北にある市場へ。


 市場は赤煉瓦で築造された直方体型の建物であり巨大な倉庫だ。海側には桟橋が作られており、そこには何隻か船が停泊している。漁師の船だろうか。倉庫の大きな鉄扉は開放されており、出入りは自由みたいだ。


 建物の中は区画ごとにお店が展開され、生魚のみ陳列されているお店、貝に特化したお店、イカだけを販売しているお店など、それぞれの魚介類を専門的に売っている。もちろん生な素材だけでなく、干物や漬物も存在する。


「シキさん、キャクタフィッシュが売ってるよ」前方にいたうにやんが僕を呼ぶ。


「こんな姿をしていたのか」僕は近づいて確認する。


 キャクタフィッシュは食堂パルリークで初めて食べた魚であるが、切り身として出てきたので、どのような姿形をしているのかが不明であった。調べればすぐに分かったとは思うが、そこまで好奇心があるわけでは無い。いつか見られたら良いなぐらいの心持ちで過ごしていた。


 肝心のキャクタフィッシュの体貌であるが、ひとことで言えば四角い。アンコウを四角い容器で型取ったような感じだ。長さは五十センチメートルほどであるが、厚みがあるので身が豊富に取れそう。海の中がどのような世界になっているかは知らないが、このような魚がよく生き残っているなと思ってしまう。


「魚を見てたらお腹が空いてきたよ」キャクタフィッシュを見つめながら呟くうにやん。


「ねっ。後から魚料理でも食べようか」僕は定石な返答をする。「ぼっさんとおんちゃんは?」昼食の話でもしようかと思い、二人に声を掛けようとしたが見当たらない。


 僕とうにやんは散策しながらお二人様を探す。人々の往来を避けながらいくつかのお店を巡っていると、ぼっさんとおんちゃんの姿が目に入る。


 二人は乾物屋の前に立っており、何かを試食しているようだった。


「何食べてるの?」僕は質問する。


「イカの干物を頂いてた」干からびたゲソを見せてくれるぼっさん。


 おんちゃんも顎を大きく上下させ、イカを食べている。


「そっちのお兄さん達も食べてみて」店のお姉さんが手渡してくれる。


 僕とうにやんは干物を食す。うん。スルメだ。



「さっきうにやんと昼食の話をしていたんだけど、どうする?」僕は購入したスルメをリュックサックに入れ込む。


 せっかくみんなで試食させて貰ったので、買ってしまった。口が暇になったときにでもくちゃくちゃしてれば良いでしょう。


「この市場の外に魚料理が食べられるお店があるから、そこでどう?」ぼっさんはガイドブックの地図を僕らに示す。


「よし。それではそこに行こう」僕は了解する。


「後少しお店回っていくね」とぼっさんの注文に対して我々は賛同した。



「ケミカルな色の魚がいる」再びお店廻りを満喫しているとうにやんが立ち止まる。


 視線の先には青地に蛍光イエローな水玉模様を施した魚が存在する。金目鯛のような体躯ではあるが、配色が酷い。氷が敷き詰められた木箱の上に横たわっており、他の魚と比べて異彩を放っている。


「絶対毒を含んでいるよね絶対」強調してくるうにやん。


「うん。見ているだけで幻覚に襲われそう」僕は答える。


 僕とうにやんが棒立ちしていると、離れていたぼっさんが手招きしてくる。


「あっちで魚の解体するって」声を張るぼっさん。


 ぼっさんとおんちゃんに合流し、人だかりができている一画へと体を滑り込ませた。


 観客たちが弧を描き取り囲んでいる中央にオノを持っている男性がいる。隆隆な筋肉を持つ男性の足元には一メートルほどの魚が置かれており、この魚がオノにより解体されるようだ。なぜ出刃包丁などではなく、オノなのか。それは、この魚が鎧のような鱗を纏っているからだ。煌く赤い鱗はRPGに出てくる伝説の防具のような格好良さがある。これは惹かれないわけがない。


「今からこのオノでウティールの鱗を剥ぎます。衝撃により鱗が飛び散りますのでご注意ください」と男性が観衆に声を掛ける。


 オノを使うせいか処刑をイメージしてしまうが、このウティールという魚はすでに息絶えているので、なんだか変な感じだ。


 僕が考え事をしていると、オノが振り落とされウティールの体に直撃する。ガギャッという音とともに魚の鱗が変形する。他の魚であれば胴体が切断され、床にも傷がつくような威力ではあったが、このウティールの鱗は少し凹んだだけだ。


 そして二回、三回とウティールの赤き鎧を陥落するため戦斧が天から地へと降り注ぐ。


 我々がパフォーマンスを楽しんでいる最中、四回目の衝撃によりウティールの壁は突破された。


 バギャッと鈍い音とともに鱗は火の粉のように飛び散り大衆に向かってくる。その一つが僕の隣人うにやんへと襲い掛かった。


 うにやんは頭上に乗せていた仮面を咄嗟に下げて、向かってきた鱗を防ぐ。その姿はまるで火花を防ぐ溶接工の如し。

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