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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第二章
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妖精-8

 朝食を待つため、テーブル席でまったりもったりしていると再び眠気が襲ってくる。この状態で胃に食べ物を与えると、スリープモードになってしまう気がする。


「できましたっ」ケリップさんが運んできた料理プレートが置かれ、テーブルの木目が隠れる。


 プレート上には目玉焼き、ハッシュドポテト、ソーセージ、ベーコン、焼きミニトマト、焼きキノコが盛り付けられている。それと小皿には豆のトマト煮、さらに別皿にトーストが置かれた。


 皆、わぁっとか、美味しそうっと声をあげる。


「こんな豪華な朝食、こっちに来てから初めてだよ」うにやんの感想。


「そうなのかい? いつもこんな感じだけど、でも今日はみなさんが空腹な様子でしたので量は増やしてみたかな」ケリップさんがフォークとスプーンを設置し、準備を終える。


 そして、ケリップさんも含めて朝食を開始した。


「そういえば、前回皆さんが来てから、ポツポツと他のお客さんも来店するようになったんですよ」目玉焼きを切るケリップさん。


「え、そうなんですか! 俺らは宣伝とかしてないですけど」ぼっさんがソーセージを口に入れる。


「どうやら氷処の方々がお客さんに話しているみたいでして」


「良いことじゃないですか」


「そうなんだけどね。今は良いけど、さらに人が増えて忙しくなるのは……」ケリップさんが遠くを見る。


「大丈夫ですよ。ここ不便ですから。人はそんなに来ませんよ」ズバッと言い切るぼっさん。


「あっ。それもそうだね。杞憂だったね」


 ははははははっと食卓が笑いで満ち満ちた。


 僕はベーコンの厚さが何センチであるか気にしていた。



「三センチぐらいか」僕はベーコンの厚みと自分の手の指の長さを比べて大体の長さを測る。


「そういえば、今日も氷を見ていかれるのですか?」店長がトーストをちぎりながら質問する。


「あぁー。ここのことばかり考えていて、ポエさんに氷を見せることは失念していましたねー」ぼっさんが答える。「見たい?」ポエさんの意思を確認。


 ソーセージを食べて、美味しさのあまり目が☆になっているポエさん。


「何か言いまして?」正気に戻った。


「ここのさらに下に行くと、氷に囲まれた空間があるけど、見に行きたい?」


「行きたいっ!」ポエさんはフォークを持った左手を勢いよく上げる。


「私たち、今日は防寒具持ってきてないじゃん」おんちゃんがトーストをトマト煮に浸けている。


 そう、氷の場所へ行くことは予定していなかったので、その装備を持っていきていない僕たちであった。今着ている上着は長袖のシャツである。


「私のコートが余ってますので、ポエさんともう一人は行けそうです」ケリップさんの提言。


「僕は残るよ」食後は眠くなるから寝ておきたい。


「じゃあ俺が行ってもいい?」申し出るぼっさん。


 うにやん、おんちゃんからは異論出ず。


 氷溢れる空間へ行くことが楽しみなのか、食べる速度が上がるポエさん。頬を食べ物で膨らまし漫画やアニメで見かける大食いキャラのようになる。


「シキさん」僕がポエさんを眺めていると、おんちゃんが話しかけてくる。


「ん?」


「私のミニトマトとシキさんのベーコンを交換しない?」


「考えられない」



 食事を終えケリップ氏とポエ氏、ぼっさんは氷穴見学へと行ってしまった。


「ケリップさん、観光客に氷の場所まで案内する仕事をすれば良いのにね」うにやんの言葉が聞こえる。


「うん」僕は生返事をする。


「あれ、シキさんおねむ?」僕が通常運転していないことに気づくおんちゃん。


「うん」僕はいいかげんな返事をする。


「みんなが帰ってくるまで寝てなよ」おんちゃんが数少ない気遣いをしてくれる。


 そして僕はテーブルに突っ伏した。



 シャッシャッシャッシャッ……。


 箒で庭を掃くような音が耳に流れてくる。


 頭を上げると包丁で氷を削っているケリップさんの姿が映り込んできた。また、彼の周りにはその行為を見つめる面々が存在する。朦朧としているがこれくらいの状況把握はできる。


「あ、シキさん起きた」ポエさんの高い声が僕の鼓膜を揺らす。


「見てわかるようにかき氷作って貰ってるよ」うにやんが説明してくれる。


「氷を採ってきたんだね」僕はあくびを殺しながら反応した。


 目頭に若干の涙が溜まる。


「眠気覚ましにどうぞ」ケリップさんが僕の前にかき氷を提供。


 平皿には削られた氷の山が鎮座する。スプーンで山を崩し、口に運ぶ。


 うん。

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