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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第二章
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妖精-4

「それだと、それらの食器を私が自分の家へ持って帰れないじゃない」両手を腰に当て頬を膨らませるポエさん。


「あ、お土産にするつもりだったんだ」うにやんの乾いた声。


 うんうんと首を縦に振る妖精さん。


「それじゃポエさんは自分で買って、僕らも僕らで別々に購入するということで」意見をまとめて終わらせる僕。



 ティッシュを丸めたような雲が陽の光を反射させ白光りしている。


 我々はシャヌラの町の南西に位置する箇所へ来た。商店街より南に位置するこの場所は民家と店が入り混じっているようなところだ。


 そしてキヌモアさんから教えて頂いた住所へ行くと、二階建ての木造家屋があった。


「雑貨屋 シュププププーン」僕は水浅黄色の建物に大きく飾られている看板の文字を声に出す。


「変わった名前だね」うにやんが反応する。


「擬音みたい」ぼっさんの感想。


 使いどころが難しそうな擬音だ。


「それにしても人がいないよ」うにやんがガラス窓から店内を見ながら話す。


「休みなのかな?」僕も外から建物内を見てみるが小さなお皿やコップが点在しているのが確認できるが、人の姿はなかった。


「開いてるよ」おんちゃんがドアを開けながら教えてくれる。


 僕らはおんちゃんの後について行き、店の中へお邪魔する。


 入って目の前の机には靴、靴下、Tシャツが整然と陳列されている。もちろん小さい。それから、右側の棚には先ほど視認したお皿やコップなどの食器類が、左側の棚には椅子や机などの家具類が置かれている。


 僕は珍しそうに小さな小さな物たちを眺めていると、奥のカウンターで動くものに気づいた。


 少し近づいてみるとカウンターの上のテーブルで本を読んでいる人の存在を認めた。


 あ、目が合った。


 反射的に会釈をしてしまう僕。


 相手側も小さく頭を下げてくれた。


 その男性はポエさんのようなサイズで、アブラゼミのような茶色の羽を付けている。


「ね、いたでしょ」僕の横で浮遊しているポエさん。


 彼女が先ほど話していたように、この町、シャヌラにも妖精が住んでいることの証明だ。


 ポエさんは別の妖精がこの町にいること、店を営んでいることに対して珍しくも無い様子ですーんと店内の商品を見に行ってしまった。


「シキさん、シキさん」うにやんが手招いてくる。


 歩み寄ると小さなベッドが商品棚に飾られていた。


「おぉー。寝床まで売ってる。もうあれだね、雑貨屋というより妖精用の生活用品店って感じだね」


「仰る通りです」僕とうにやんの間に店の人が飛び入ってくる。


「と言いますと?」


「最初は我々のような体格が小さな者に対して店を開きました。この町には無かったので」表情を変えず淡々と語る店長?さん。「しかし、シャヌラには小さき者の人口が少なかった」


 店長の話をきちんと聞いていることの意図を込めて、相槌を打っておく。


「そこで、妖精用ではなく、大きな人たちに向けてアピールするよう方向転換したんです」


「それでミニチュア雑貨店としたのですね」


 店長はゆっくりと首肯する。


「名前の由来は何ですか?」うにやんの直球質問。


「…………」羽音を鳴らしながら、ふわーっと上昇していく店長さん。


 あっ。


 もしかして聞かれて嫌な事だっただろうか。


「いきなりな問いかけですみません。ユニークな名前でしたので、つい気になりまして」とうにやんも察したのか謝る。


「そんなことはありません。ただ、自慢できるような由来でも無いですので」店長さんは僕らの頭上で後ろを向いたままだ。


「…………」


 しばしの沈黙。


 後ろではぼっさん、おんちゃん、ポエさんが商品を見ながら談笑している。


「勢いです」店長さんの呟き。


「勢い……ですか?」


「雑貨屋へと転向する際、目立とう目立とうと考えておりまして、名前もひねりたかったのです」


「なるほど」


「食後の片付けをしている時、スプーンを洗っていまして」と店長さんは売られている小さなスプーンを手に持った。「スプーンという名前にしようかと最初思いましたが、それだとシンプルなのでプを増やしてスププププーンと考えました」


 淡々と過去の出来事を口にする店長さん。寡黙な印象だったが、案外しゃべることが好きなのかもしれない。


「だけどスプーン専門店を連想される可能性があると判断し、さらに名前を変えてシュププププーンにしたのです」


 スプーン専門店……。逆にそっちの方が面白そうだ。


「わかります」うにやんが共感する。


「えっ」と店長さんが振り向きうにやんの顔を見る。


「ボクもオリジナルキャラクターを作っている時、名前に迷う時がありまして、いろいろな文字を組み合わせたり、既存の名前をもじったりして考えていますので、わかります」


 店長さんは降下し、うにやんの右手人差し指を両手で持ち上下に振った。理解されて嬉しかったのだろう。


 うにやんの表情も誇らしげだ。


「これ下さい」


 僕らの会話中、他の三人は食器を選んだみたいで、商品の精算のため店長さんに話しかける。


「ありがとうございます」素早くカウンターへと舞い戻る店長さん。


 我々は小さな机に椅子、食器セットを購入し、シュププププーンっと店の外へ出た。


 擬音として無理やり使ってみたけど、どうでしょうか?


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